同居介護をしている場合、世帯分離をすることで介護費用が安くなる場合があります。
介護保険を利用すると介護費用の1割は自己負担となります。
この自己負担額は実は同じ介護度、同じサービスを利用していても人によって違うんです。
同居介護をしている人が介護費用を下げるためにポイントとなってくるのが「世帯分離」です。
今日はこの世帯分離について知識を深め、介護保険の自己負担額を少なくしましょう。
そもそも介護費用ってどうやって決まるの?
そもそも介護保険の自己負担額はどのようにして決まっているのかから説明していきます。
介護保険制度の説明も合わせて解説しますね!
介護保険制度とは、介護が必要になった際に介護サービスを受けるための保険制度です。
介護保険制度は40歳以上の国民全員が加入者となり保険料を支払います。
そして65歳以上で介護が必要になった際に、入浴介助やリハビリ、介護施設の利用などのサービスが受けられる制度です。
(40~64歳の人でも国が定める特定疾患の場合はこれらのサービスを利用することは可能です。)
介護保険を利用する際は「介護認定調査」という審査を受け、支援や介護が必要であると認められる必要があります。
介護認定調査により支援、介護が必要と認められた場合は要支援1・2、要介護1~5という7段階に分けられます。
要支援1が一番介護度が低く、要介護5が一番介護を必要をする状態です。
この介護度により1か月間に利用できるサービス料金が変わります。
そして利用したサービスの1割が自己負担となります。
1か月の利用限度額と自己負担額
介護度 |
利用限度額 |
自己負担額 |
要支援1 |
500300 |
5003 |
要支援2 |
104730 |
10473 |
要介護1 |
166920 |
16693 |
要介護2 |
196160 |
19616 |
要介護3 |
269310 |
26931 |
要介護4 |
306060 |
30606 |
要介護5 |
360650 |
36065 |
上記の表のように利用限度額、自己負担額が決まっています。
しかし同じ介護度、同じサービスを利用していても自己負担額が人によって異なってくる場合があります。
それは高額介護サービス費・高額居宅支援サービス費といい、その世帯の収入に応じた金額より自己負担額がかかる場合は、その差額が還元されるからです。
*施設利用する際に発生する食事負担額、福祉用具代、住宅改造費は除きます。
|
|
自己負担限度額 |
第一段階 |
・世帯全員が住民税非課税で、老齢福祉年金を受給している ・生活保護を受給している |
15000円 |
第二段階 |
世帯全員が住民税非課税で、公的年金の収入額とその他の収入の合計が年間80万円以下 |
15000円 |
第三段階 |
世帯全員が住民税非課税で、第2段階以外の人 |
2万4600円 |
第四段階 |
第1~3段階以外の人 |
3万7200円 |
もし双方とも要介護5で、同じサービスを利用したとしても第一段階の人の場合は自己負担額が15000円、第4段階の人は自己負担額が3万7200円という差が発生します。
しかもこの介護保険料は一人あたりの所得ではなく、世帯ごとの所得での計算になるので、介護サービスを受ける本人同士の年金受給額が一緒であっても、世帯構成によってこのような差がうまれる場合があるのです。
年金額は少ないのに、自己負担額は一番高い限度額になっているという場合もあります。
*注意)これらの利用限度額や自己負担限度額などは今後も介護保険制度の見直しにより変更される可能性があります。
この表に書いてある金額は29年5月時点の金額です。
世帯分離とは?同居していても可能なの?
世帯分離とは1つの住民票に記載されている世帯を2つ以上に分けることで、これは同居している家族でも行うことが可能です。
世帯分離をすると1つの家に2人世帯主がいることになります。
同居していても家計を全く別にしている場合などは、世帯分離をしていても不自然なことではありません。
私も旦那の母と同居していますが世帯は分かれています。
世帯分離のメリット
介護保険を利用している世帯の場合、世帯分離をすることで介護保険の自己負担額を減らすことができるというメリットがあります。
同居世帯で先ほどの説明の第4段階にあたる場合、介護保険を利用している本人だけを世帯分離することで第1,2段階になることが出来れば、月々の介護保険料を大幅に減らすことができるということです。
世帯分離のデメリット
同居人の住民票をとる際に委任状が必要
世帯が一緒の場合は住民票などを取得する際に委任状は必要ありませんが、世帯が別になると住民票などの書類をとりに行く際に委任状が必要になります。
世帯を分けることで介護費用が割高になることも
1つの世帯に2人以上介護保険を利用している人がいる場合、世帯分離することでかえって介護費用が割高になる場合があります。
もし世帯内に2人介護保険利用者がいた場合、高額介護サービス費は世帯内の介護保険料を合算して考えるため、たとえ第4段階であっても2人合わせた額が3万7200円ということになります。
世帯分離をすることで2人とも第1,2段階になれば上限15000円ずつの計3万円と安くなりますが、どちらかが第3、4段階になる場合は、それぞれ個別で上限額が設定されるので3万7200円より高額になる場合がでてきます。
そのため世帯内に2人以上介護保険を利用している人がいる場合は、世帯分離することでかえって自己負担額が増える場合があるのです。
国民健康保険料が割高になる場合がある
世帯分離をすることで国民健康保険が割高になる場合があります。
国民健康保険の保険料は世帯所得によって決まります。
またこの保険料は上限が決まっています。
そのため親世帯、子世帯ともに国民健康保険に加入している場合で収入が多い場合は、世帯を一緒にして所得を合算させた方が保険料を割安にすることができます。
逆に世帯分離をすると、それぞれの世帯収入に応じて保険料が計算されるようになるため、所得によっては国民健康保険料が高くなる可能性があります。
具体的な保険料や上限については、市町村によって異なりますので役所で確認しましょう。
扶養から外れる
世帯分離をすると扶養から外れるので、今まで受けていた扶養控除がなくなります。
自分の親の収入が年金のみで年間158万円以下の収入の場合は、親を自分の扶養にいれることが可能です。
そのため現時点で親を扶養しているという世帯もあるかもしれません。
そのような場合、世帯分離をすると扶養を外すことになるので、今まで扶養控除によって安くなっていた所得税や住民税が高くなります。
世帯分離は世帯収入によっては負担が増える可能性があります。
そのため事前にあなたの家庭ならどうなのか確認する必要性があります。
世帯分離する方法
世帯分離をする方法は役所で住民異動届を出すだけですので、手続き自体は難しいものではありません。
ただし国民健康保険の方はそちらの手続きも必要となります。
そのため住民異動届を提出した際に、国民健康保険の手続きも行うことを忘れないようにしましょう。
手続きの際には
・本人確認ができる身分証明書
・印鑑
・国民健康保険の保険証
・今後保険料を支払うための通帳またはキャッシュカード
を持っていきましょう。
世帯分離の手続きをする際の注意点
世帯分離の手続きをする際に役所に「負担額を減らしたいから」という理由をいうと、世帯分離を断られる場合があります。
役所によっては担当者から「世帯分離した方が介護費用が安くなりますよ」と勧めてくれる場合がある一方で、また別の役所では介護費用を抑えたいという理由で世帯分離を申し出たところ断られたというケースもあるようです。
そのため世帯分離の理由などは聞かれない以上は何も話さないことが無難です。
もし理由を聞かれたら「家計を別々にしているので」とサラッと答えるようにしましょう。
世帯分離は決して悪いことではないのですが、担当の人によって対応が異なるようです。
なのであまり細かい話はしない方が無難です。
さいごに
世帯分離にはメリットデメリットがあり、その世帯の収入や介護度によっても変わってきます。
世帯分離後の税金や国民健康保険料と介護自己負担額を天秤にかけ、負担額が少なくなることを確認できてから行うようにしましょう。
☟介護と仕事を両立する上で役立つ情報をまとめています。
☟介護の負担を家族だけで抱えないための情報をまとめています。