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 世界を覆うあまたの課題に、主要国は歩調をそろえて取り組んでいけるのか。そんな危惧を抱かざるを得ない。

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が、トランプ大統領の「米国第一主義」に振り回されて、閉幕した。

 自由貿易に懐疑的なトランプ氏は、「反保護主義」が首脳宣言に明記されることに難色を示した。最終的に「保護主義と闘う」との文言を盛り込むことで合意したが、過去のサミットと比べて表現は弱まった。

 地球温暖化対策では、国際的な枠組み「パリ協定」に米国がとどまるよう各国首脳がトランプ氏を説得したが、折り合わなかった。立場の不一致が宣言に盛り込まれるのは異例だ。

 難民問題でも、難民の受け入れに消極的な米英への配慮から「国境を管理する権利」が宣言に盛られた。

 先進国全体が「内向き」志向に引きずられ、開かれた世界を実現する意欲が衰えているとすれば、憂慮すべき事態だ。

 サミットの意義を思い起こしたい。世界全体の平和と繁栄の実現が、主要国の利益になる。その大局的な理念を共有する先進国の首脳が集い、国を超えた課題を議論してきた。

 自由貿易についても、世界の交易の結びつきの強化が国際秩序の安定に資する、との共通理解が根底にあったはずだ。

 トランプ氏の胸中には、自国産業の保護や環境規制の緩和、難民・移民対策の強化といった昨年の選挙戦での公約を果たす意図があったのだろう。

 だとしても、主要国が近視眼的な「国益」政策に走れば、世界が共通利益を広げる機運はしぼむ。グローバル化の現代においては、どの国の未来も例外なく世界と共にあるという現実を見失ってはなるまい。

 新興国の台頭でG7の意義が問われて久しい。だが近年は、民主主義、人権、法の支配など普遍的価値の担い手としての役割に期待が寄せられている。

 その価値を軽んじるような主要国の自国優先主義や足並みの乱れが深まれば、世界の羅針盤としてのG7は意味を失う。

 今回の収穫をあえて見いだすならば、トランプ氏を他の首脳たちがひざ詰めの協議で諭し、保護貿易主義への反対などの原則を守って、一定の妥協の枠内におさめたことだ。

 G7の多国間対話には、世界の安定役として今後も果たすべき責任がある。日本を含む参加各国は、自由と民主主義の点検を絶えず怠ることなく、「国際益」を追求してもらいたい。

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