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斜面に向かっておにぎりを放る喪服姿の老若男女。淡路島では当たり前の光景も、島外の人が見たら…?=4月2日、洲本市上内膳、千光寺(撮影・大山伸一郎)
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斜面に向かっておにぎりを放る喪服姿の老若男女。淡路島では当たり前の光景も、島外の人が見たら…?=4月2日、洲本市上内膳、千光寺(撮影・大山伸一郎)

 葬送儀礼の節目といえば、納骨のタイミングでもある忌明けの「四十九日」を挙げる人が多いだろう。だが、兵庫県の淡路島では「三十五日」も大切な区切りだ。親族がそろって山に登り、おにぎりを投げる風習が残っている。

 通称「だんご転がし」。その昔、米が貴重だった時代にだんごを投げていたのが由来とされる。儀礼といっても、人里離れた山中の寺院で斜面に向かっておにぎりを放る。それだけだ。

 おにぎりの形は三角ではなく丸、ノリを巻いたり具を入れたりしない、斜面に背を向けて投げる-。緩やかな決まりはあるが、仏事につきものの堅苦しさはなく、和やかな雰囲気が漂う。

 起源は定かでない。一説には、死者の霊の行く手を邪魔する悪霊の気を引くため、山で食べ物を投げる民間信仰が発展。仏教で閻魔(えんま)大王の審判を受けるとされる三十五日目の法要に取り込まれ、餓鬼への施しで功徳を積む行為になった、という。

 都市部に比べて地域の結び付きが強い淡路島でも、少子高齢化や生活環境の変化で、さまざまな伝承や言い伝えが廃れつつある。それでも、島内の各地で取材するたびに、「だんご転がしだけは」という声が返ってきた。

 山に入らず、近所の寺院で済ませる家族もいるが、代表的なスポットの先山・千光寺(洲本市)には、今も多い日で10組近くがおにぎりを放りに訪れる。儀礼を終えた人に、話を聞いてみた。

 「何の効果があるんか、よう分からんけど、昔からのことやから」「やらんかったらやらんかったで、義理を欠く気がするしな」

 子孫に伝えよう、引き継ごうと意識しているわけではない。どんな意味が込められているのかも分からない。それでも、肉親が亡くなると、当たり前のように山に登り、おにぎりを投げて下りてくる。

 「根付く」という表現は、このような風習にこそふさわしい。(小川 晶)

   ◇   ◇   ◇

 この記事は、神戸新聞創刊120年連載「新五国風土記」によるものです。これまでの記事はこちらでお読みいただけます。

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