経産省が発表したペーパー「不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」( http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf )において
「Aというのはもう現実的には無理で、Bとして社会を再構築するしか無い」という視点が提示されて、それに対して「まあそうやね」「やっとその視点が一般化したか」というようなコメントが多くつけられた。たぶんこの「Aはもう無理でBにいくしかない」ってことそのものは、大きな合意が得られたのだろうと思う……んだが、じゃあ「Aは無理ってどういうことか?」ってのが、実はちっともイメージされてないのだと感じる。
解雇規制緩和は正しいのか
「Aは無理」ってのはどういうことかというと、端的に言えば「正社員制度もう無理」って話だ。正社員制度ってのはいろんな側面があるんだけど、すくなくとも能力とは無関係な昇給制度とか終身雇用とかはもう無理。諦めて別の道探そうね、ということだ。にも関わらず、正社員になりたいってのは時代に逆行している。
時代からして、もう、労働者は全員経営者になるしか無いのだ。この経営者っていうのは、よくブラック企業が言うような「経営者視点を持て(そして経営者の苦悩を理解して唯々諾々と従え)」という意味のそれではなくて、労働者全員が「自らの労働(時間)」という自分自身の商品を手にもって、それを企業に売るなり自分で運用するなり、とにかく、自分自身の主として主体的に労働市場と関わっていかなければならないという意味だ。
何だそれ当たり前だろ。いままででもそうだっただろ? と言える人は幸いで、その種の人はもうすでにそのルールのゲームに移住しているのでショックは少ない。しかし、そうではないルールで生きてきたひともいる。そういう人も新しいルールに移行すべきだ。そのために解雇規制緩和が必要なのだ。
考えてみると、派遣社員というシステムは「Aはもう無理でBにいくしかない」という過渡期である現在に生まれた、おそらく一時的なシステムだ。
派遣社員というシステムは「主体的に動きたくはないが職を求めたい個人」と「解雇規制にはばまれて正規雇用を増やしたくない企業」の合作として現在活躍している。
Bの社会において、離職して職を求める個人がすべきなのは自分のスキルや時間を新しい企業に売り込むことであって(そして契約を結び一定期間、あるいはプロジェクト単位で仕事をすることであって)、「通うべき職場を指示してくれるご主人様を探す」ことではない。
Bの社会において、スキルをもった労働者を雇用したい企業がすべきなのは、適正な人材を見極めて(もしその能力に欠けるならエージェントを雇用してでも見極めて)適切な契約を結び労働してもらうことであって、「あたりが出るまで派遣ガチャで人材をとっかえひっかえする」ことではない。
もちろんこの話と、福祉は別にあってそれはそれで必要だ。この話は自己責任の話とかマッチョの話ではなくて、どちらかというと「誰もあなたの人生をあなたの代わりに生きることはできない」という話に近い。日本の終身雇用は、長い間、人生の丸投げに近かった。その黄昏が来ただけの話だと思う。
少し昔話をする、IT業界に関してクリエイティブな印象しかなかっった学生の頃に専門を卒業して客先常駐メインの特定派遣会社(当時は100人規模)に就職した。 そこは足りない知識は...
経産省が発表したペーパー「不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」( http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf )において A.産業構造の...
なんでそんなクソな派遣会社がのさばってるかというと、派遣先の企業が業務の量に応じて社員を雇用できないからという理由もあるわけで。