「これは体験なんです」
ガジェット好きの皆さまならご存知の方も多いでしょう、こちらはビデオブロガー/レビュアーのジェットダイスケさん。今ではよく見かけるようになった「レビュー系YouTuber」の第一人者であり、2016年4月にはチャンネルを開設して10年を迎えたと発表しました。
そんなジェットさんは2014年末に、写真家宣言動画を公開。それから約2年。ビデオブロガーではなく写真家ジェットダイスケとしての初の写真展が銀座でスタートしました。
写真展のタイトルは『空蝉』(うつせみ)。名前にもあるように「セミ」の写真の展示ですが、セミはセミでも羽化する瞬間・羽化した直後のセミ。この写真展を見るまで私も知らなかったのですが、羽化したセミってスゴく美しいんです。
エメラルドにサラッと輝く金色。透き通った羽。しっかり見ると美しいですよね。
そして注目なのはその展示方法。この写真の周りの黒い縁、実は額縁じゃなくてモニターの縁なんです。写真が表示されているのは、EIZO(エイゾー)の4Kモニター「ColorEdge CG318-4K」。ずばり1台50万円です。
それが今回、5台体制で展示です。この高品質&高精細モニターに展示するになると、カメラも高画質のものが必要になるわけで、今回の写真はすべて4240万画素のソニー「α7R2」で撮影されています。
だから近づいてみると、こんな細部の毛まではっきりと見ることができるのです。レンズはソニーの「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」でマクロ撮影しているとのこと。ちなみに、「表現力もすごく良くできたレンズなんですけど、レンズに三脚座がないのが不便!」だそうです。
他にも印刷版の写真が6枚展示。これらはモニターで表示されているものの中から選ばれた写真で、印刷サイズはA全判。しかも、加工なしのJPEG撮って出しで印刷しているとのこと。
モニターでも印刷でも感じたのは、本当に細かいところまで写真が描きこまれていて、体を引いて見ると作品の感動、ギリギリまで顔を近づけて見ると発見の感動があるのです。
とくにモニターで表示した高精細な写真は、いままでに体験したことのない見え方です。なんとも例えがたいですが、顕微鏡を通してセミを光学的に見たようなイメージ。ピクセルという最小単位を越し、その先にあるものを見てしまいました。
ジェットダイスケさん本人も在廊しており、写真を見ながら写真展についてお話しました。
ーー今回、なぜ写真をモニターを出力する展示方法にしたのでしょうか?
ジェットダイスケ:フィルムカメラとデジタルカメラって、元が違くて、デジタルカメラってモニターの技術(=ピクセルという概念)から生まれていますよね。高画質に見せるならモニターで見せたほうが、印刷するより媒介するものが少ないので、劣化せずよりストレートに出力できるんです。
ーーインクとか紙とかを気にする必要がないと。
そうですね。
α7R IIの解像度、おそるべし
ーー今回の写真はどのソフトを使って、どのように加工したんですか?
えーっと、Lightroomモバイル?いやウソウソ(笑)加工はほとんどしてないですよ。
実は最初、JPEG画像を少し加工したもので写真は完成していたんです。加工って言っても、Photoshopでハイライトとか簡単なパラメーターをいじるくらいのレベルで。でも4Kモニターに出力するとなると、やっぱり展示する写真すべての色温度は統一しておいたほうが良いと思って、そこで初めてRAW画像を引っ張り出してきたんですよ。
ジェットダイスケ:やはりこの写真展は、写真というより体験ですよね。ただ写真を見せたいんだったら、今ならInstagramに上げればいいじゃないですか。
たとえば、この3枚の写真は20cm高く展示しているんです。前のベンチに座って、実際の木を見上げているように見てもらう。そういう体験も含めて写真展です。
ーー4Kモニターで写真を見るのもひとつの体験ですよね。家だとこんな体験できないので。
そうそう。
セミ撮影でブレイクスルーとなったiPhone
最後に、ジェットさん直伝のセミ撮影のテクニックを公開。
ジェットさんいわく、今回の写真は露光のジレンマがあったそう。というのもセミは夜中のうちに羽化するので、感度ノイズとの戦い。少しのノイズでも7Rで撮影&4Kモニターで表示するとより目立つそうで、センサー感度を低くする必要があります。
そうなると三脚を立てて、長時間露光をするのがセオリー。しかし、羽化中のセミってピクピク動くのです。今回の写真は、1〜4秒のシャッタースピードで撮影したようですが、この秒数以上となるとピクっと動いてブレた写真になるだそう。
夜間の撮影なのに、ISO感度を低くして、シャッター時間も短かくしなければならない。そうなると今度は照明の出番。でも羽化中のセミに強い光をあてると、羽化に失敗してしまうのです。
なんでしょうか、この八方塞がり感。しかし、そこでブレイクスルーになったのがiPhoneのフラッシュ機能なんです。
ブツ撮りのライティング方法と同じように、セミの周りをぐるっと動かしてライティングを当てるテクニックを使います。そうすると金色の産毛や、目の輪郭がパッと浮き上がってくるのです。
そのあと、iPhoneからマンフロットの小型ビデオライト「LUMI」に替えたそうですが、結果、この方法で今回のセミ写真を撮影することができたのです。
最後に! ジェットさんが撮影したセミの写真の露出値を公開です。
シャッター速度:1秒〜4秒
絞り:F8〜F16
(開放で撮影すると、背景がボケて解像感が失なわれる)
ISO感度:100
都会でも撮影できる美しい生き物、セミ。自分で撮影してみようと思った方はぜひこのテクニックも参考にしてみてください。
そして、まずは『空蝉』でその美しさを体験してみてください。
『空蝉』写真展情報
場所:EIZOガレリア銀座
期間:2017年5月24日(水)〜6月3日(土)
時間:10:00~18:30
定休日:日曜日、月曜日
image: 山本勇磨
source: UUUM
(山本勇磨)