東京都は築地市場の土壌から、有害物質であるベンゼンが検出されたと発表した。今後、本格的なボーリング調査が行われるが、'17年2月の時点でささやかれていた「築地も土壌汚染がある」は現実味を帯びてきている。この調査を受け、業界団体からは「即刻豊洲移転」するべきだとの意見が強まっている。
筆者は本コラムで度々指摘している通り、老朽化した築地市場よりも、新しい豊洲市場へ「即刻移転」させるべきだと考えている。なかなか移転に踏み切れない東京都だが、今後の焦点はどこにあるのか。
まず、豊洲市場の土壌汚染問題だが、その調査基準について考えなおす必要がある。いま東京都やマスコミの報道が安全性の基準にしているのは「環境基準」とよばれるものである。
環境基本法によって定められているこの環境基準は、「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」と条文にある。具体的に言えば、豊洲市場の地下水が「飲料水として使用できる」ほどきれいであるかどうか、というのが環境基準なのだ。
もちろんこれを満たすに越したことはない。だが実際のところ、東京23区内でも環境基準をクリアしていない場所はほかにもある。
日本では50年ほど前までは、井戸水を飲用として使えるところが多かった。だが有害物質の存在が指摘されるようになると、都は井戸水から水道水に変更するように指導。いま23区内で井戸水を使うのはきわめて珍しい光景となった。
東京都全体として、地下の土壌汚染はある程度あるといわれている。土壌汚染対策法では、土壌の汚染状態が指定基準に適合しない土地については、指定区域化する必要があるが、その指定区域は都内至るところにある。
豊洲市場の地下水は、飲用や生活用水として使用されるわけではない。だから、適切に対策を行えば問題ないとするのが専門家の見立てだ。