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バノン率いる保守メディア「ブライトバート」の本社に初潜入した! トランプてこに世界進出へ

From Los Angeles Times (USA) ロサンゼルス・タイムズ(米国)
Text by David Ng

スティーブン・バノンと「ブライトバート」
PHOTO: BILL O’LEARY / THE WASHINGTON POST / GETTY IMAGES

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大統領主席戦略官のスティーブン・バノンが率いてきた保守系ニュースサイト「ブライトバート」の名前を知らない人はいないだろう。ブライトバートを「極右メディア」だと批判するのはたやすい。が、彼らの戦略はしたたかだ。米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、謎に包まれた同社オフィスを訪れ、現編集長ら幹部の肉声を入手した。いったい、連中は何を目的にしているのか?

キュレーション・メディアから数年で……


10年ほど前、ロサンゼルス・ウエストウッドの地下室ですべては始まった。ノートパソコンを持ち寄った、Tシャツ姿の数人の若者たちが、世界を一新する保守系メディアのニュースサイトを立ち上げようとしていたのだ。

アンドリュー・ブライトバートが創設した初期のサイトは、シンプルなニュースのキュレーション・サービスだった。しかし、わずか数年で、独自記事を掲載する一方、扇動的なコメントを書いたり、明らかな荒らし行為を始めたりする特異なニュースサイトへと変貌した。

創業者のアンドリュー・ブライトバート
PHOTO: GETTYIMAGES


2012年にブライトバートは亡くなったが、創業者の乱暴で騒々しい精神は受け継がれている。

サイトの人気が高まるにつれて、ブライトバートは「過激で、外国人を嫌い、性差別主義に基づいた文章が並ぶヘイトスピーチのプラットフォームだ」と、多くの非難を受けるようになった。

一方で、オルト・ライト(オルタナ右翼)として知られる極右勢力へのニーズはあるものの、これではとてもジャーナリズムとはいえないと嘲笑の種になることもあった。

だが今では、このサイトを笑い飛ばす者はいない。ドナルド・トランプが大統領就任の準備を始めると、ブライトバート・ニュース・ネットワークは米国でもっとも影響力のある保守系メディア企業の1つになるべく態勢を整えた。

物議を醸す同サイトの会長、スティーブン・バノンは、トランプ陣営の黒幕のひとりとして、首席戦略官に指名されたのだ。

前例のない政権とメディアの一体化


これにより、ブライトバートは、ホワイトハウス中枢と直接のつながりができた。専門家によると、このレベルでメディアが関わることは前例がないという。

同サイトがトランプ政権の外堀の一部になると考えられているし、ブライトバートの幹部らは、FOXニュースなどの保守系ライバルメディアと肩を並べ、メディア界全体と同等に戦えるようになるチャンスだと考えている。

彼らは、メディアが左傾化しているのは不当であるとしている。

ブライトバートは、社内事情や資金面について公に説明しない方針をとっている。同社は有料購読制はとっておらず、収益の大半は広告収入だ。いまや誰でも知っているメディアとなり、大統領選につながるトランプ支持の報道をしたことで政治的に矢面に立っている。

そこで、「ブライトバートはどうやって収益をあげているのか?」「そのメディア戦略とは?」「バノンに対する批判は、今後の事業展開の妨げとなるのだろうか?」など、この「問題児メディア」がいったい何者なのかという点に、大きな注目が集まっている。

トランプ大統領の執務室でのスティーブン・バノン(右端)
PHOTO: DREW ANGERER/GETTY IMAGES


テレビ業界進出も視野


本紙の取材を通じて、ブライトバートの幹部らは実に挑戦的に、そしてあけすけに意見を述べた。

彼らは、会社としては世界進出を目指している。社長兼CEOのラリー・ソロフは、「世界的なニュースネットワークにするのが目標だ」と語った。

ブライトバートの本拠地・ロサンゼルスは、かなりリベラル寄りな町であることを考えると、これほど歯に衣着せぬ保守系媒体には似つかわしくない場所もしれない。

だが、ブライトバートの創業者もCEOもロサンゼルスのブレントウッド出身だ。ソロフは、ブライトバートと一緒にでかけたイスラエル旅行中に、共同創業の話を持ちかけられたという。

ソロフによると、ブライトバートはテレビ業界進出も視野に入れているが、それは自社のケーブル・ネットワークである必要はないという。また、現在約100人で構成され、広く事業をてがけている編集部をさらに成長させたいと考えている。

「バイアスのないメディアはない」


新政権について報道することにとくに力を入れるつもりだ。

「トランプ氏の報道にもっとも適した場所でありたいと考えているよ」とソロフは語った。ソロフはUCLAの法学部出身である。

(白人至上主義ではない)国家主義、移民対策強化、就労といったトランプ大統領の政策と同社の中核信念は合致している。両者があまりにも一体化しているという批判に対し、同社は反論している。

また、報道に関してバイアスをかけていることについて、隠すつもりはないという。ソロフはこう語る。

「バイアスのかかっていないメディアソースなど存在しない。当社の情報を目にする人は、ブライトバートがどういう視点から書いているのか知っているはずだし、それを考えれば、当社の価値も適切に判断されるだろう。

かならずしもブライトバートの考え方を気に入る必要もないし、その意見に同意する必要なんてないんだ」

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