安倍首相、対北朝鮮で一定の成果
【タオルミーナ(イタリア南部)高山祐】安倍晋三首相は「普遍的価値観で結ばれた主要7カ国(G7)の強い結束」を示すことを目指して首脳会議(サミット)に臨んだ。北朝鮮の核・ミサイル開発問題では、トランプ米大統領とともに議論を主導。北朝鮮の脅威が「新たな段階」に達したとの認識をG7で共有し一定の成果を上げた。だが、貿易と地球温暖化では米国と日欧との溝が鮮明になり、実際にはG7結束の揺らぎを印象づけた。G7を重視する安倍首相の外交戦略にも影を落としている。
「北朝鮮は東アジアにとどまらない世界全体の脅威だ。そうした認識をG7のリーダーと共有できた」。首相はサミット終了後の記者会見で、北朝鮮の核・ミサイル問題が国際社会全体の最優先事項だとG7首脳らと一致したことを成果に挙げた。
メルケル独首相(12回目)に続く古株であることに加え、昨年の伊勢志摩サミットの議長を務めたことから、議論の先べんをつけるよう求められる場面が目立ち、北朝鮮問題では、北朝鮮が非核化を約束しながら、核やミサイル開発を進めた経緯を説明した。日本人拉致問題についても言及。G7首脳らは首相の主張に全面的に賛同した。
一方、G7の意義について首相は会見で「経済においても、安全保障においてもG7が築いてきた国際秩序に対する挑戦があるからこそ、普遍的価値観を共有するG7が結束を強化することが重要との認識で一致できた」と強調した。
経済では中国やインドなどの役割が拡大し、近年は主要20カ国・地域(G20)が注目を集めるなか首相はG7を重視してきた。G7が自由や民主主義、法の支配といった普遍的な価値観を共有する枠組みであるためだ。
この点について首相は会見で、普遍的価値観に挑戦しているのは北朝鮮だとして批判した。だが、実際にはトランプ氏がこうした普遍的価値観をどこまで共有しているか各国が疑念をいだき、G7が足元から揺らいでいるというのが実態だ。
開催前から調整が難航するとみられていた地球温暖化を巡る議論では、トランプ氏は強硬姿勢を崩さず、亀裂が鮮明になった。G7結束を首相が強調せざるをえないのも、基本的な姿勢で米と日欧との間に深い溝があることの証左とも言える。