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94.二種類の弾幕
アウルムダンジョン、地下二階。
細くて長い一本道、その向こうから弾幕が飛んで来た。
光る弾が雨あられの如く飛んでくる。
その細い道の入り口の横、おれとアリスが壁を掩体にしていた。
当たらなかった光の玉はダンジョンの壁に当たって小さい爆発を連続で起こしている。
「この先にあるのか、地下三階に続く道」
「うん、まちがいないよ。ここを抜けたらすぐ」
肩に仲間のモンスターを乗せたアリスがはっきりと頷く。
その顔はさえない、おれ達の姿を確認した途端始まった弾幕に眉をしかめている。
「これよけていくの無理だね」
「無理って程じゃないけど、だいぶ骨が折れるな。それよりも突っ切った方が早い」
「突っ切るの?」
「ああ、見てろ」
初めて地下二階に降りてきた時の事を見てないアリスにそれを見せるために、スライムの涙を装備している事を確認して、掩体代わりの壁から細道に入った。
早速光る弾が体に降り注ぐ、絶え間ない連射は放水を喰らっているかのようになかなか前に進めない。
むりやり進もうとしなかった。
定期的に回復弾で回復しつつ進める時に進む。
一分くらい光る弾に打たれていたらポーチになにかが入る感触がした。
最初はまばらだったが、頻度が徐々に上がった。
それに伴い、弾幕が徐々に薄くなっていく。
捻挫でまともに歩けない様なのが普通に歩けるようになり、次第に走る事も出来るほど弾幕が減った。
細道を抜けた頃になると弾幕が完全に途絶えて、モンスターの姿も見えなくなった。
代わりに、ポーチが最初の頃より若干ずっしりした。
手に持って重量を確認、50メートルほどの細道を進んだだけで約15万ピロ程度の稼ぎか。
ちなみに使った回復弾は二発。
回復しながら前進、そうしただけで15万も儲かった。
アウルム地下二階、おれと相性がいいのかもな。
「すごーい、こんな風にすればいいんだここは」
「HPと体力が両方ともS、かつスライムの涙を装備してたらな」
「……なんだリョータしかできないじゃん?」
「アリスも可能性あると思うぞ。ガッツスライムを仲間にすればさ」
「一発で死なないあの子でしょ。あの子は仲間になってくれそうじゃないんだよね」
「なりそうとならなさそうのって分かるのか」
「なんとなくだけどさ」
そう言いながらもはっきりと頷いたアリス。
ダンジョンの中に限って言えばアリスの「何となく」はバカに出来ない。
「何となく」で道を判明する確率は百パーセントだし、モンスターがいるかいないかも9割以上の精度だ。
多分、仲間になるかどうかも同じ事がいえるのだろう。
そんなアリスの「なんとなく」の道案内で進んでいくと地下三階に続く道が見えた。
「先に行く」
「ねえ、リョータが下の階に行った時って、残ったこっちの構造は変わらなかったんだよね」
「へえ、そうなのか」
あごを摘まんで考える、つまりダンジョンに入るたびに構造が変わるというより、もっと正しく言えば新しい階層に誰かが入るたびに構造が変わるって事か。
ダンジョンに入るたびって思ってのか、外から地下一階に入るたびに、ということでもあった。
「だからさ、ホネホネとプルプルに働いてもらおうよ」
「……ああ」
手をポンとうった。
「村人を最初に助けた時のあれか」
「うん!」
「おまえ頭いいな」
「えへへ……じゃあそういうことで」
「ああ」
おれは先に地下三階にはいった。
踏みいれた瞬間まわりの景色が変化して、降りてきた道がもう見えなくなった。
その場で待った、しばらくするとまわりの景色が変わった。
初めての階層だからポーチを外しつつ待った、景色はつぎつぎと変わっていく。
上でアリスが仲間モンスターを使って降りたり戻ったりして、ダンジョンの構造をかえてるんだ。
それが十数回繰り返されて、上に続く道のところに戻ってきた。
「お待たせ」
「ああ」
アリスは上から降りてきた。
瞬間、地下三階の構造がまた変わって、二人と飛ばされた。
モンスターが現われた。
「うわっ! なんかいっぱいだ!」
「またモンスターハウスか」
そこは体育館の様な広い空間だ、そして中には上の二つの階と同じフォルムをした小悪魔がうじゃうじゃしている。
小悪魔の一体が手を振り下ろして弾を撃ってきた。
地下二階の光る弾とは違って、今度はびっくりするくらい黒い玉。
前にネットで見た「あらゆる光を反射しない黒」みたいな黒い玉だ。
「また遠距離攻撃か、都合がいい。アリス、おれの後ろに隠れてろ」
「うん!」
ちゃんとスライムの涙を装備している事を確認して、彼女をかばう態勢で黒い玉を受けた。
「――がはっ!」
瞬間、脳天に衝撃が貫いていった。
一瞬目の前が真っ白になるほどの衝撃、何が起きたのか分からない。
「リョータ!」
「――はっ!」
「大丈夫リョータ!」
「問題無い!」
口角が濡れていることに気づく、手の甲で拭くと真っ赤な血がべっとりついていた。
「ダメージ? しかもでかい」
「そうなの?」
「ああ……今のダメージは久しぶりだぞ……ダンジョンマスター以上か? いやそんな馬鹿な」
まわりを見る、モンスターハウスは小悪魔がうじゃうじゃしている。
ざっと見て五十以上はある。
モンスターの火力は多少の差はあるけどほとんど同じと言っていい。
ってことはこいつら全員がダンジョンマスター以上の火力を?
「そんな馬鹿な」
同じセリフがもう一度口をついて出た。
黒い玉が更に飛んできた、今度は三つだ。
アリスをかばうように二つをよけつつ、一つにわざと当ててやった。
――!
またも衝撃が脳天を貫く、今度は歯を食いしばってたからすぐに元にもどった。
「リョータ!」
「大丈夫だ……」
回復弾を自分にうって体力を回復した。
「間違いない、こいつらの火力はダンジョンマスター以上だ」
「そんな……え? 違う?」
「違うってどういう事だ」
アリスに聞き返すと、彼女が肩に乗ってるモンスター、SDサイズのスケルトンとスライムと話している姿がみえた。
「魔法攻撃なの?」
「どういうことだ」
「えと、物理攻撃は体力だけど、魔法攻撃は精神、だって」
「……そういうことか!」
一瞬で理解した。
今までFのままだったから後回しにしてきたが、体力は物理防御で、精神の方が魔法防御って事か。
そしておれの体力はSまであげたけど、精神はFのままだ。
つまり……アウルム地下三階において、おれは元のレベル1同然紙装甲ってことだ。
まずい、それはちょっとまずいぞ。
「まずいよね」
「ああ、ここを出よう――」
といった途端、四方八方から黒い玉が飛んで来た。
地下二階の時と同じ、全方位からの弾幕だ。
これを全部受けたら――HPがSでも死ぬ!
「――っ!」
「ひゃん!」
歯を食いしばって、アリスの腰に腕を回して抱き寄せる。
そして――よけた。
飛んで来た黒い玉を、魔法の玉の弾幕をよけた。
よけた玉が壁に当たって小さい爆発を起こす。その爆発の規模は光の玉と同レベルだ。
火力は同等、おれの体力と精神の違いってだけだ。
当たったらただじゃすまない、むしろ死にかねない。
だが。
精神はFでも、速さはSだ。
「リョータ」
「しっかりつかまってろ!」
アリスを抱いて弾幕の中を泳いだ。
うってくる弾幕を次々とよける、密集する雨の様な弾幕を全速力でよける。
「すごい……」
アリスは唖然となった、弾幕を紙一重でよけるおれの動きに舌を巻いた。
もちろんよけるだけじゃない、よけ続けるおれは隙を見つけて片手の銃で反撃した。
全力でよける最中で高まった集中力で、黒い玉をうってくる小悪魔をヘッドショット。
頭が吹っ飛ばされて消えて、黄金色の砂金がドロップされる。
次第に集中力が限界まで高まり、ゾーンに入る。
見えているもの、聞こえているもの、感じているもの全てが敵、モンスターになった。
よけつづけて、撃つ。
よけつづけて、撃つ。
それをひたすら繰り返す。
「すごい……ダンスみたい」
よけはじめたおれは弾幕の中をノーダメージでモンスターを全滅させたが、そのかわりかつてない程疲労がたまって――つまりはくたくたになったのだった。
この日の稼ぎは少なく、昨日の三分の一、30万ピロだった。
おかげさまで6万ポイント突破しました、皆様のおかげです!
面白かったらブクマ、評価もらえると嬉しいです。
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