この病気・症状の初診に向いている科
乳腺外科
進行性乳がんとは、名前の通り病状が進行する乳がんのことを言います。では、進行性乳がんはどのようなステージをたどっていくのでしょうか。ここでは、進行性がんについてドクター監修の記事で解説します。
※医師監修による一般的な情報提供となります。記事内の情報だけで自己判断せず、医療機関での受診の参考としてください。
進行性乳がんと診断された場合、どのようなステージがあり、どういった症状があらわれるのかといったことを詳しく解説します。
進行性乳がんとは
進行性乳がんという言葉を耳にすると、「もう治療が困難な状態であり、いわゆる手遅れだ」と感じるかもしれません。実際のところ、これまで早期に発見された乳がんを「早期乳がん」、そしてすでに治療が難しい状態である乳がんを「進行性乳がん」と呼んでいました。しかし、現在の医療においては、早期に発見された乳がんを除いですべての乳がんを進行性乳がんと呼ぶ傾向があります。乳がんであると確定した場合、医師はさまざまな検査を行ない以下のようなことを調べて、乳がんのステージを決定します。
乳がんの大きさの確定
触診や超音波検査、そしてマンモグラフィーなどの検査を行ない、乳がんの大きさや広がりを調べます。また、乳がんの症状に応じてCTスキャンやMRIなどによる検査が追加されることもあります。
腋窩リンパ節転移の診断
わきの下にある腋窩リンパ節(えきかりんぱせつ)に転移がないかどうかを調べます。主に触診によって診断されますが、超音波検査やCTスキャン、MRIによる検査が行なわれることもあります。
遠隔転移の診断
乳がんは、首のリンパ節をはじめ、脳、骨などに遠隔転移しやすい病気です。そのため、触診や血液検査による腫瘍マーカーの値、脳のMRIによる画像診断などの結果を踏まえ、遠隔転移があるかどうかを診断します。近年では、手術前に行なう検査にPETが導入されていることもあります。
手術に耐えることができるかどうか
血液検査によって貧血があるか、腎機能や肝機能、感染症の有無などを調べます。また、心電図や呼吸機能の検査も用いて、全身麻酔に耐えることができるかどうかを判断します。なお、乳がんの診断を受けた時点で、すでに遠隔転移が認められる乳がんIV期に分類されることとなり、治療が不可能となるため末期がんと呼ばれます。ただ、乳がんは遠隔転移が認められた後でも経過が長いことが多く、終末期を連想させるような「末期」という呼び方はふさわしくないという考え方もあります。
進行性乳がんの初期症状
進行性乳がんの初期には、以下のような症状がみられることがあります。
乳房のしこり
乳房に痛みのないしこりができます。しこりは5㎜~1cmほどであれば、乳房を注意深く触ることで見つけることが可能です。
乳房のくぼみ
乳がんが乳房の皮膚のあたりにまで達した場合、乳房がくぼむといった症状がみられます。
進行性乳がんのステージ(病期)
進行性乳がんは、腋窩リンパ節への転移や遠隔転移の有無により、次のような4つの病気に分類されます。
0期
非浸潤がんとも呼ばれます。がんというよりも、前がん状態とされるような病状であり、しこりも形成されていません。がんは乳管の上皮内にあり、周りの組織に浸潤することはないため転移も認められず、命に関わるような病状ではありません。
I期
早期乳がんと呼ばれるステージです。しこりはまだ2cm以下と小さく、腋窩リンパ節への転移の可能性も低いとされています。5年相対生存率は99.9%となります。
II期
このステージの乳がんも早期乳がんと呼ばれることが多いです。しこりが小さいものの腋窩リンパ節への転移の可能性が考えられるもの、または、しこりが2~5cmと大きいものの腋窩リンパ節への転移の可能性は低いとされています。5年相対生存率は95.4%となります。
III期
進行性乳がんと呼ばれます。しこりが5cm以上と大きく、腋窩リンパ節への転移の可能性が高い、または腋窩リンパ節への多くの転移が認められます。5年相対生存率は80.3%となります。
IV期
遠隔転移乳がん、もしくは、末期がんと呼ばれます。乳がんが脳や骨、肺といった他の臓器にまで広がっている可能性が高いとされています。5年相対生存率は33%となります。
進行性乳がんの治療法
進行性乳がんの主な治療法としては、手術のほか、放射線治療、ホルモン療法などがあり、適切な順序と組み合わせで行なわれます。治療法の選択には進行性乳がんのステージのほか、閉経の有無や腋窩リンパ節への転移の有無などの症状をもとに判断されることとなります。
進行性がんのステージはあくまでも乳がんの進行度の目安として定められるものであり、ステージや5年相対生存率によって、治療法や予後がすべて決定されるというものではありません。そのため、近年では乳がんの状態から「がんの性格」を判断し、それに合わせて治療を進めることが重要だとされています。乳がんは他のがんと比べて治療期間が長期にわたる場合が多くなりがちです。不安なことやわからないことは、医師に相談し、納得のいく治療方法を選び、乳がんとうまく付き合っていくようにしましょう。