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 千葉県で登校中の小学3年生の女の子が行方不明になり、殺害された事件で、学校の保護者会の元会長が起訴された。調べに対し黙秘しているという。

 日ごろ率先して通学路の見守りに立っていた人物だ。

 12年前に広島県と栃木県で、下校中の小学生が同じく命を落とす事件が続いたのを機に、大人たちの目で子どもを守る活動が広がった。しかし、見守る側が事件を起こすことは、もちろん想定してこなかった。

 起訴内容のとおりなら、どうやって子どもの安全を確保すればいいのか。とまどう保護者の声が地元に限らず聞かれる。

 子どもが一人でいる時間、見ている大人がいない時間をなるべく減らす。そうやって危ない状況を最小化する――。この基本線に変わりはないはずだ。

 万全の対策はない。考えられる方法を組み合わせ、それぞれの地域の実態にあうやり方を見つけてほしい。

 子どもを一人にさせないためには、グループを作ったり、友達どうし誘い合ったりしての登下校が考えられる。地域を循環するバスを通学に活用する手もあるだろう。

 昼間は現役世代が地元を離れがちだ。お年寄りが出歩きたくなる街をつくることも、見守る目を増やす効果につながる。たとえば公園に健康遊具を置く、空き地や空き店舗を憩いの場として活用する、などだ。

 多くの人に広く薄くかかわってもらえれば、見守り活動の中心メンバーの「活動疲れ」をやわらげる効果も期待できる。

 今回の事件をうけて、わが子に人を疑うことを教えないといけないのかと悩む親もいるようだ。だが、子どもの安全に詳しい千葉大学の中村攻(おさむ)名誉教授は「いちばん安全で安心なのは、人と信頼し合い、何かあれば助け合う社会」だと訴える。その芽を摘んでしまうようなことには慎重でありたい。

 危ない人を見きわめようと言っても、とりわけ低学年の子には難しい。「人」より「場所」に着目した対策を、地域全体で考えてはどうだろう。

 子どもがいつ、どこで怖い目に遭っているかは、子どもたち自身が知っている。プライバシーに配慮しつつアンケートなどで聞き取り、現場を訪ねる。生い茂った植え込みが視界をさえぎっていれば刈り込み、暗い高架下には街灯をつける。

 そんなふうに、子どもたちが安心して学び、遊べる環境を、行政とも協議しながら整える。

 地道な取り組みを、一歩ずつ進めていくことが大切だ。

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