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 中東でイスラエルが建国を宣言してから来年で70年。パレスチナとの和平問題は今も、解決への希望の兆しが見えない。

 そんな中、トランプ米大統領が最初の外遊先として中東を訪れ、この積年の問題に関与する姿勢を示した。

 「米国第一主義」を掲げるトランプ氏が内向き思考に閉じこもらず、中東和平に力を注ぐ意思を示したのなら歓迎したい。陰りが見えるとはいえ、最大の影響力をもつ米国の前向きな努力がこの地域には必要だ。

 紛争の当事者の間には、争いの要因が複雑に絡んでいる。その不信をほどく仲介者の必須条件は、誠実で公平な姿勢だ。

 その点で残念ながら中東でのトランプ氏の言動には、不安を抱かせる問題が多々あった。そもそも今回の外遊には、混乱が続く米内政の関心をそらす狙いがあったとの批判もある。

 そうした疑念を残したままでは、トランプ政権の対外政策は信頼を築けまい。まずは今回の訪問を反省し、今後めざす真剣な中東政策を示すべきだ。

 和平の主な焦点は、戦争でイスラエルが占領した土地をどう返還するか▽イスラエルの安全を確保しつつパレスチナ国家を樹立できるか――にある。

 その中でトランプ氏の問題点はまず、イスラエル寄りの姿勢が明白なことだ。

 ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を米大統領として初訪問した。イスラエルが占領し、パレスチナが将来の首都と位置づける東エルサレムにあるため、歴代の米政権が避けてきた行いだ。

 第二の問題は、地域大国イランへの敵視をあおった点だ。

 イスラエルとサウジアラビアなど湾岸アラブ諸国を近づけるために、「共通の敵」としてイランを位置づけたとされる。

 だがイランの影響力は、パレスチナのイスラム組織ハマスのほか、シリア、イラクの各政権など中東の広範に及ぶ。

 イランの排除を前提に中東問題に取りくめば、イランとアラブ諸国の溝を広げ、地域全体の緊張を高める恐れが強い。

 もとより、トランプ氏の言動には一貫性がない。就任直後、イスラム教徒が多い国からの入国を禁じる大統領令を出したが、今回は一転、「イスラムは偉大な宗教だ」とたたえた。

 トランプ氏が訪ねたパレスチナ自治区では、住民による抗議デモも起きた。アラブ世界の人々はいまも米国の新大統領に、複雑な視線を送っている。

 和平の仲介に乗り出すには、まず当事者たちから信頼を得る努力を重ねるほかあるまい。

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