【ニューヨーク=大塚節雄】トランプ米大統領は1日、米大手金融の分割に言及し、「まさに今、検討しているところだ」と語った。商業銀行と投資銀行(証券)の分離を定めていた過去の法律の復活を念頭に置き、議論を進める意向を表明した。解体論が金融規制見直しの焦点に浮上する可能性が出てきた。
同日の米ブルームバーグ通信のインタビューで明らかにした。
トランプ氏が言及したのは、大恐慌下の1930年代に成立し、規制緩和の流れで99年に廃止された「グラス・スティーガル法」。同法の廃止でいわゆる「銀・証」の垣根がなくなり、現在の米大手金融は両業務を事実上、一体で運営しているところが多い。再分離が義務づけられた場合、分割につながる可能性がある。
2008年の金融危機後、危機の再発防止の観点などから再分離論が浮上。米議会の超党派で同法の復活を求める声が出ている。与党・共和党も大統領選の際に決めた政策綱領で復活を盛り込んだ。就任後のトランプ氏には目立った発言はなかったが、今回、「旧制度に戻りたいという人たちもいる。だから我々はそれを検討する」と語った。
トランプ氏は大統領選で金融規制の緩和を訴え、当選後に金融株が急騰。米株高の原動力となった。1日の米市場ではインタビューの配信を受け、金融株は一時売りが優勢となった。業務の厳格な分離は規制緩和の方向性と逆行する面もあり、金融行政や規制を巡る議論は複雑になりそうだ。
一方、トランプ氏はガソリン税を増税し、インフラ投資の財源に充てることを選択肢として排除しない意向も示唆した。
1~3月期の米実質経済成長率が前期比年率で0.7%にとどまったことには「本当に悪い」と指摘した。「私はまだ就任したばかり」としたうえで「1%かそれ未満しか成長していない。だから刺激が必要だ」と述べ、減税などの景気刺激策を進める考えを示した。
同法の復活論の詳細はまだ議論されておらず、実現性を疑問視する見方も多い。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長も「これまでのところ、反応できる具体的な案が出てきていない」と語り、言及を避けている。
日本のメガバンクは米国に中間持ち株会社をつくり、銀行子会社や証券子会社などを傘下に置いて米国で事業を展開している。仮に邦銀にも銀・証分離が厳格に適用されることになれば、米国事業の見直しを求められる可能性もあるが、現時点で影響を測るのは難しい。