ライトノベルの歴史を本気でまとめてみた!70年代から2014まで【オススメ・決定版】
ライトノベルの歴史をその年出版された代表作とともにまとめてみました。私見に基づくまとめではありますが、ライトノベルや書籍文化が好きな方に楽しんで頂ければと思います。掲載作品・画像等の著作権は、各作家並びに各出版社に帰属致します。※データはすべて14年8月末時点のものです。※10/12、1/18追記。
更新日: 2015年01月19日
ライトノベルの歴史をその年出版された代表作とともにまとめてみました。私見に基づくまとめではありますが、ライトノベルや書籍文化が好きな方に楽しんで頂ければと思います。掲載作品・画像等の著作権は、各作家並びに各出版社に帰属致します。※データはすべて14年8月末時点のものです。※10/12、1/18追記。
更新日: 2015年01月19日
ライトノベルの歴史をたどってみる
大型書店はもちろん、小さな書店でも、いまやライトノベル(ラノベ)コーナーがあるのは当たり前になってきました。
でも『ライトノベル』という言葉が生まれ、そのジャンルが根付いてきたのは実はまだ最近のこと。
書籍市場で大きなシェアを持ち、さらに多様化してきた現在、その歴史をまとめてみたいと思います。
ライトノベルの定義
そもそも何をもって『ラノベ』とするのか?
内容がファンタジー?表紙がイラスト?出版レーベル?メディアミックスしやすい?…など、さまざまな理由が考えられます。
「どこからラノベか!?」「あの作家はラノベ作家か!?」という議論を始めてしまうと、はっきり言って終わりません。百年戦争です。
細かすぎて読めないと思いますが、このコラ画像で言っているラノベの定義を一言でまとめると、
『ラノベレーベルから出てればラノベ!!(ただし、ハヤカワ、ソノラマ、講談社BOX、徳間デュアルは認めません!)』
乱暴なようですが、割と納得のいく答えです。
この[まとめ]では、
『ライトノベル』とは、
①ラノベレーベルから出版されている作品。
②講談社BOX、メディアワークス文庫など、意見の割れがちなレーベルもそこに含める。
③一般レーベル文庫やハードカバー作品などに関しては、①に該当するラノベ読者層をはっきり意識した作品かどうか(例えば装丁がイラストか、作者の出自や経歴など)で判断する。
という定義で考えていこうと思います。
あくまでこのまとめ内でのルールです。異論は山ほどあると思いますが、「ラノベの歴史」を考える上でできる限り多くの作品を掬い上げられるよう、広めに設定しました。
1970年代以前 ライトノベル前史
児童文学でもなく一般文芸でもない、十代の少年少女向きの文学は『ジュブナイル』と呼ばれてきました。
内容は青春物やミステリ、SF、ファンタジーなどが多く、いわゆる純文学に比べ「子供向き」と揶揄されることも多かったようです。
いわば、ラノベのお母さんです。
画像:「時をかける少女」著・筒井康隆
ジュブナイルの金字塔と言える屈指の青春SF。細田守監督によるアニメ映画も記憶に新しいですね。
筒井御大自体はジュブナイル作家というより不条理SF作家ですが……。
御大は近年「ビアンカ・オーバースタディ」というメタラノベも執筆。ラノベにとってはご先祖様が枕元に立って叱りに来たようなもんです。
伝奇小説というのは、歴史上の出来事や人物をモチーフにしつつも、そこに空想上のアイデアを持ち込んだ、壮大なエンタメ作品のこと。
こう言うと「時代小説じゃん」と思うかもしれませんが、それより妖怪や魑魅魍魎、神話や伝説、バトル、エログロなどを強調した漫画っぽい作風が多くなります。
こちらはラノベのお父さんです。
画像:「柳生忍法帖」著・山田風太郎
伝奇小説の代名詞と言える作品、作家でしょう。ヤンマガの「バジリスク」から入ってもええんやで。
山風が「ニンジャスレイヤー」を読んだら何て言うか聞きたかったですね。
この源流をもっとさかのぼっていくと、江戸時代の「南総里見八犬伝」にたどり着きます。
1970年代後半~80年代中頃 黎明期・ライトノベルの胎動
ジュブナイルと伝奇小説、この他にも海外ファンタジーやSFなど、多くのジャンルの影響を受け、ライトノベルの原型とも言える作品が産まれはじめます。
時代は1970年代後半~80年代中頃。
出版社もそうした流れを意識したレーベルを作り始めます。ハヤカワSF文庫、ソノラマ文庫、アニメージュ文庫などがそれに当たります。
画像:「妖精作戦」著・笹本祐一(ソノラマ文庫)
まだ表紙がラノベ風ではなく古き良きSF風ですね。
これが今では……↓
画像:「妖精作戦」著・笹本祐一(創元SF文庫・新装版)
もちろん内容は上のものと同じです。
「妖精作戦」は個性的なキャラや詳細なメカニック描写が特徴的なジュブナイルSFで、元祖ラノベと言える作品の一つ。元々は1984年に刊行され、時代ごとに、様々な装丁で出版され直されてきました。
笹本先生は現在も「ミニスカ宇宙海賊」シリーズ(2012年「モーレツ宇宙海賊」のタイトルでアニメ化)など、第一線で活躍されています。
「現役最古のライトノベル作家」と自称されているだけのことはあります。さすが!
「妖精作戦」だけでなく、「グイン・サーガ」(栗本薫)、「ダーティ・ペア」(高千穂遥)、「幻魔大戦」(平井和正)、「銀河英雄伝説」(田中芳樹)、「吸血鬼ハンターD」(菊池秀行)、などの作品が次々と刊行され大ヒットします。
他には新井素子、氷室冴子、神林長平らもデビュー。
これらはSFやファンタジーでありながら、これまでのジュブナイルや伝奇小説とは一線を画する作品ばかりで、娯楽小説の新しい扉を開きました。世代が変った大きなポイントです。
画像:「グイン・サーガ」著・栗本薫(ハヤカワ文庫)
130巻まで刊行されるも、2009年栗本先生逝去のため、未完の大作となりました。
前述の作家たちの出現により、ファンタジーブームが高まっていましたが、それを決定付ける出来事が、小説とは違う角度から1986年に起こります。
ゲーム「ドラゴンクエスト」の発売と大ヒットです。
ドラクエの大ヒットを受け、小説の世界でもファンタジー物がさらに増加。ゲームとの相乗効果もあり、若者向けの小説ジャンルを席巻します。
まだ『ライトノベル』という言葉自体はないものの、この時代にその土壌は作られたと言えるでしょう。
ここから数年の間に、レーベル創設やアニメ的なイラストを表紙や挿絵にする手法も整っていき、ラノベの歴史は本格的に幕を開けます。
画像:「アルスラーン戦記」著・田中芳樹
ドラクエと同年、1986年に始まった大河ファンタジーの名作。もはや古典と言ってもいいでしょう。まだ完結していませんが……。
最近「鋼の錬金術師」の荒川弘先生によるコミックも始まりました。
でもやっぱ田中芳樹と言えば天野喜孝!しかしこの天野絵が美麗な角川版は絶版。現在は光文社文庫版で読むことができます。
1987-1997 形成期・ライトノベルの誕生と第一次ブーム
このまとめでは、1987年を『ラノベ元年』としたいと思います。
「いつをラノベ元年とするか」も議論が尽きません。千年戦争です。ですから、これはあくまで私見でしかないことをご了承ください。
1987年を元年と考える理由は、2大老舗レーベル、角川スニーカー文庫(87年10月創刊)と富士見ファンタジア文庫(88年創刊)の創設です。作家や出版社が意識的にライトノベルという新しいジャンルの開拓に乗り出したこの時期を、元年に設定したいと思います。
では、ここから歴史を追いながら各年代の代表的なラノベ作品を紹介していきたいと思います。
最後まで読んでいただくと、オールタイムでのお薦めラノベ50選(くらい?)にもなります。
興味を持たれた作品はぜひ書店などで手に取ってみてください。
(※ 多くの作家を取り上げられるよう、基本的に一作家一作品で紹介していきます。)
では、ラノベ風に言うと『第一シリーズ・ライトノベル形成期編』、いってみましょう!
1987、1988年 ラノベ二大レーベルによる『元年』
著・水野良/原案・安田均/イラスト・出渕裕
スニーカー文庫(1988年・全7巻、他外伝)
剣と魔法、エルフにドワーフ、帰らずの森……。正にキングオブファンタジー。
この作品が特徴的なのは、元々TRPGのリプレイ小説であること。
TRPGとは、能力値をダイスで設定した自作キャラになりきり、みんなで冒険するゲームのことで、ドラクエなどRPGの元祖です。現在ではネットオンラインで楽しむのが主流ですね。
リプレイ小説は、そのゲーム内での展開や発言を小説化したもので、今も「ソード・ワールド」など人気作が多数あります。
「ディードリットは俺の嫁!」と思ったあなた、年がバレますよ。
著・竹河聖/イラスト・いのまたむつみ
富士見ファンタジア文庫(1988年・全28巻、他外伝)
スニーカーの初期代表作がロードス島なら、富士見はやはり風の大陸でしょう。
古代アトランティス大陸を巡る壮大な大河ファンタジー。いのまたむつみ先生の美麗イラストも人気が高い作品です。
ただ、全28巻、完結までに20年弱かかり、途中で脱落した読者も多いのではないでしょうか。
こうした「終わらない(終わりどころを見失った)作品」が多いのも、一般文芸よりも漫画などに性質の近いラノベならではの特徴かもしれません。
1989年
著・深沢美潮/イラスト・迎夏生
角川スニーカー文庫~電撃文庫
(1989年・全8巻、新シリーズ全20巻、その他シリーズ、外伝など多数。現在も続刊中)
ファンタジーとはシリアスで、主人公は強くなくてはならない。
そんな固定観念を打ち破った最初のラノベではないでしょうか。今や当たり前の「ほのぼのファンタジー」のパイオニアです。
スニーカーで始まりましたが、新シリーズから電撃文庫に移籍しています。
低年齢層にも読みやすく、近年ポプラポケット文庫からも刊行。実際、童話的な話も多く、ジュブナイルを正統に受け継ぐ名作です。
特に「忘れられた村の忘れられたスープ」はラノベ史に残る名エピソード!
著・吉岡平/イラスト・都築和彦
富士見ファンタジア文庫
(1989年・全9巻、外伝6巻、その他続編など)
「無責任艦長タイラー」というタイトルで覚えている方や、アニメ版のイケメンタイラーの印象が強い方も多いと思います。
アニメ版と原作の設定の相違から、アニメ寄りにリライトされたシリーズも。
今ではラノベが最初からアニメ化を意識するのは当たり前ですが、まだそうした文化も確立していなかった時代背景を感じさせるエピソードですね。
内容は「スーダラ節×スペースオペラ」。そう言っても分からない若い世代には、「部長・島耕作×スペース・ダンディ」と教えてあげましょう。
アニメ版イケメンタイラー。
小説も後半の表紙は、アニメのキャラクターデザインを手がけた平田智浩氏に変更されています。
ちなみにアニメ「タイラー」は、TVアニメにおける制作委員会(スタッフロールのエンドに出るアレです)表記の元祖でもあります。
1990年 スレイヤーズ!の衝撃
著・神坂一/イラスト・あらいずみるい
富士見ファンタジア文庫
(1990年・全15巻、すぺしゃる全30巻、現在もその他シリーズが続刊中)
キャラ、世界観、イラスト、台詞回し、シリアスとギャグのバランス、あらゆる点で『ライトノベル』の方向性を確立した金字塔的作品。シリーズ累計2000万部のメガヒット作です。
練られたファンタジー世界観と魔法の設定、そして何より豪快な主人公リナ=インバースのキャラクターが魅力の作品です。
ラノベの認知度を押し上げた意味でも、後の作品やキャラクター造形に与えた影響という意味でも、ラノベ史において避けては通れません。
「ライトノベル」の命名は、1990年初めにパソコン通信ニフティサーブの「SFファンタジー・フォーラム」において、それまでのSFやファンタジーから独立した会議室を、会議室のシスオペであった“神北恵太”が「ライトノベル」と名付けたことが始まりであるとされる
引用の通り、『ライトノベル』という言葉の誕生は1990年と言われています。しかし、この言葉が一般的に定着するのは10年以上先、2000年頃です。
それでも、1990年を『ラノベ元年』と考える人は多いです。その理由は、言葉の誕生によるものではなく「スレイヤーズ!」の存在に他ならないでしょう。
神坂先生だけでなく、イラストのあらいずみるい先生も、「90年代アニメ絵」の画風を確立したイラストレーターの一人として非常に重要。
そうした意味でも、スレイヤーズの後々への影響は計り知れません。
画像:「スレイヤーズすまっしゅ」5巻(富士見ファンタジア文庫・2011年)
現在も何年かに一度、短編集や番外編が刊行され継続しています。
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