ザッカーバーグ氏は、スピーチの中でベーシックインカムの導入を提唱した。
Harvard University/YouTube
5月25日(現地時間)、ハーバード大学の卒業生に対してスピーチを贈ったFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は、その中で、生きていくのに必要なお金をすべての人が無条件で受け取れる、ユニバーサル・ベーシックインカムの導入を提唱した。
ベーシックインカムは、ここ数年、議論が盛り上がっているテーマだ。ケニア、オランダ、フィンランド、カナダ、アメリカ(サンフランシスコ、カリフォルニア)などで導入実験が行われている。
ベーシックインカムの支持者は、仕事がAIやロボットに置き換わることで、仕事のあり方が変わり、それによって貧富の差が拡大するため、富の分配システムの見直しが必要だと主張している。
「GDPのような経済指標だけでなく、どれくらいの人が有意義だと感じられる役割に就いているのかといった観点からも発展の度合いを測る社会にすべきだ」とザッカーバーグ氏は述べた。
「誰もが新しいことにチャレンジできるよう、何らかのクッションを作る必要がある。そのためにもユニバーサル・ベーシックインカムのようなシステムを検討すべきだ」
ザッカーバーグ氏がベーシックインカムの支持を公言するのは今回が初めて。シリコンバレーでは、やや遅れての支持表明だ。すでにさまざまなIT企業の大物たちがベーシックインカムを支持している。例えば、テスラのCEOイーロン・マスク氏、Yコンビネーターの社長サム・アルトマン氏、Facebook共同創業者のクリス・ヒューズ氏などだ。ヒューズ氏は「Economic Security Project」というベーシックインカムのためのファンドを運営している。
今後数十年で人間の仕事の多くがロボットに置き換えられるという予測が数多く出ている。例えば、2013年のオックスフォード大学の論文によると、10〜20年以内に約50%の仕事がロボットに置き換えられる可能性がある。また、2015年にマッキンゼーが発表したレポートも同様の予測をしており、現在の技術をもってすれば、現時点でも仕事の45%は置き換え可能だと述べている。
「テクノロジーは進化し続けている。だからこそ生涯を通した継続的な教育の提供をより重視する社会を目指すべきだ。もちろん、やりたいことを追い求める自由をすべての人が享受するには、コストがかかる。そのためのコストは、私のような人間が払うべきだし、君たちの多くが成功を収めたなら、その時は君たちも払うべきだ」とザッカーバーグ氏は述べた。
以下、ザッカーバーグ氏による祝賀スピーチは、1:38:12から。
[原文:Mark Zuckerberg calls for exploring basic income in Harvard commencement speech]
(翻訳:Yuta Machida)