>  > fhánaが“再生”を経て目指す新たな表現

11thシングル『ムーンリバー』リリースインタビュー

fhánaが“再生の物語”を経て目指す、新たな表現 「色んな並行世界を包み込んでいきたい」

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 キャリア初の京都アニメーションとのタイアップとなった『小林さんちのメイドラゴン』のOP「青空のラプソディ」では、フィリーソウルやディスコを取り入れた音楽性やMVでのダンスが話題になり、より幅広いファンを獲得したfhána。彼らの新曲「ムーンリバー」は、4年前のデビュー曲「ケセラセラ」が起用されたTVアニメ『有頂天家族』の続編『有頂天家族2』(TOKYO MXほか)のエンディング曲だ。京都を舞台に狸の一家の再生を描いた一期の雰囲気を引き継ぎつつも、本作では主人公の憧れの女性・弁天の心の機微に焦点を当てるため、yuxuki wagaが初めてリード曲の作曲を担当。デビュー曲から一周回って辿り着いた今ならではの魅力を楽曲に落とし込んでいる。『Looking for the World Atlas Tour 2017』が終わったばかりの彼らに、このシングルに込めた思いやfhánaの現在地、そしてツアーファイナルで制作決定が発表された3rdアルバム『World Atlas』の行方について訊いた。(杉山 仁)

「青空のラプソディ」から「ムーンリバー」、ドリス・デイからオードリー・ヘプバーンへ

ーー今回の「ムーンリバー」はfhánaのデビュー曲「ケセラセラ」でエンディングテーマを担当した『有頂天家族』の二期エンディングに描き下ろしたものですよね。あの作品のエンディングテーマを再び担当することができるというのは、やはり感慨深いものがあったんじゃないですか?

kevin:とても感慨深かったです。『有頂天家族2』は一期から約4年空いたこともあって、「もうないのかな」「あればいいな」と思っていたんですよ。

towana:実は私たちも二期の制作決定をみなさんと同じタイミングで知ったので、「また担当させてもえたらいいな」と思っていて。決まったときは「嬉しい!」の一言でした。

fhána / ムーンリバー – MUSIC VIDEO

ーー「ケセラセラ」のMVでは作品の舞台になった京都を訪れていましたが、今回の「ムーンリバー」のMVも、再び京都で撮影されていますね。『有頂天家族』はP.A.WORKSさんが京都の街並みを忠実に再現していることもあって、作品の主人公・矢三郎たちが暮らす下鴨神社や鴨川周辺の雰囲気が、今回も見事にMVに収められていました。

kevin:fhánaは京都にも縁あっていくことが多かったので、4年ぶりに向かったわけではなかったですけど、実際に行くと、やっぱり「作品そのままだな」と思いますね。

yuxuki:でも、今回は前回と違って、僕と佐藤さんとkevin君はあまり移動していないんですよね。前回はMVの中でみんなでtowanaを探しましたけど、今回はホテルでのシーンが多くて。実は演奏シーンも別々に撮りました。作品の内容にあわせて作りを変えたんですよ。『有頂天家族』の一期は家族の再生の物語でしたけど、二期は少し話が違ってきていて。狸一家が天狗のケンカに……なかば巻き込まれ事故のようになっていきますよね。それに、主人公は引き続き矢三郎ですけど、今回のストーリー上の主役は弁天だったりすると思うんですよ。『有頂天家族2』は、弁天が切ない部分を見せるところが肝だと思うんで。

fhána「ケセラセラ」(TVアニメ「有頂天家族」ED主題歌)Music Video

ーー一期では万能感があって飄々とクールな印象だった弁天が、二期では挫折を味わうという。その雰囲気を表現するために、MVの内容も変えたということですか。思えば「ムーンリバー」自体も、矢三郎から見た弁天の歌になっています。

yuxuki:そうですね。もともと、最初に「弁天を表わすような曲を作ってほしい」というオーダーがあったんですよ。「二期の弁天の弱さを表現してほしい」と。そこから曲調を考えていきました。歌詞は「ケセラセラ」と同じで、矢三郎から見た弁天なので、弁天を二方向から見ているような感じになっているというか。でも、ただ弁天が弱っているだけではなくて、そこから立ち上がるような強さや熱さを曲で表現しようと思っていたんです。

佐藤:プロデューサーの佐藤純之介さんにも「サビはギャーン! とギターを鳴らすような曲にしてくれ」と言われたんですよ。それもあって初期の頃から、イントロとAメロ/Bメロはクールにして、「コントラストをつけたいね」という話をyuxukiくんとしていました。

ーーそれで今回の「ムーンリバー」は、テクノっぽいイントロやAメロではじまって、サビのところで出てくるギターが、これまで以上にラウドになっているんですね。

佐藤:曲自体が似ているわけじゃないですけど、構成としてはNew Orderの「Krafty」方式です(笑)。ちなみに、「ケセラセラ」のMVは画面が分割されて人や街が映っていましたけど、それも当時「New Orderの『Regret』のMVを再現したい」と話したからなんですよ。そうして「ケセラセラ」のMVが生まれ、そこから「ムーンリバー」のMVが生まれてーー。そう考えると、結構New Orderづいているのかもしれないですね(笑)。

ーー(笑)。今回はtowanaさんのボーカルも一曲の中で色々な表情があって、とても難しかったんじゃないかと想像しました。

towana:そうですね。メロディー自体も難しい曲ですし、ニュアンスのつけ方もAメロ/Bメロ/サビで(曲の雰囲気に合わせて)それぞれ違った雰囲気にしていて。私自身は、「自分が喉の手術をしてそこから回復したことと、弁天さまが挫折を経験することが重なるな」と思ったり、「ケセラセラ」以来3~4年ぶりにまた矢三郎の気持ちになって歌うのも「懐かしいな」「嬉しいな」と思ったりしていましたね。

yuxuki:あと、今回は作曲と編曲をするメンバーが違ったんですよね。自分が作曲で、佐藤さんが主導でアレンジを担当していて。これも新しい試みでした。

佐藤:『有頂天家族2』の内容的に、より情熱的なラウドさが必要だったんで「ここはyuxukiくんかな」と思ったんですよ。

kevin:佐藤さんが最初にアレンジを加えたものが、yuxukiさんから送られてきたものよりもだいぶテクノサウンドになっていて、「作曲した本人以外のところでアレンジが進むと、こういう化学反応が起こるんだ」と驚きましたね。僕はその佐藤さんのアレンジに音を足していきました。

yuxuki:今回、自分では思いつかないような方向に曲が変わっていったのは面白かったですね。テクノサウンドと言っても、佐藤さんと自分では思っていたものが若干違ったりもして。自分は今っぽいバキバキのエレクトロを想像していたんですよ。最初のイメージではAメロもビートしかないようなものにしようと思っていたんですけど、佐藤さんから80sっぽいシンセが入ったものが上がってきて「ああ、面白いな」って。「じゃあこうしよう」と2番目以降のアレンジを変えたりもしました。

佐藤:編曲だけだと、ひとつひとつの音にこだわる時間が長くなるんで、それも新鮮でした。fhánaの場合、僕もyuxukiくんもkevinくんも基本的にひとりで完パケられるんで、これまでは作曲した時点で全体のイメージも込みで作っていたので。

ーー「ムーンリバー」というタイトルはどんな風に出てきたんですか?

yuxuki:最初は確か、歌詞にも出てくる「彼方の人」というタイトルでした。でも「何か違うな」と話をして。「ケセラセラ」は昔の名曲の名前(ドリス・デイの楽曲)だったんで、今回も同じく「ムーンリバー」(オードリー・ヘプバーンの『ティファニーで朝食を』の主題歌)にしよう、と。

佐藤:ドリス・デイからオードリー・ヘプバーンへ(笑)。「リバー」には鴨川という意味もかかっているし、歌詞の中にも「月」が出てくるんで、これだと綺麗だな、と。それにfhánaが同じ作品の一期と二期を続けて担当するのは、今回が初めてだったんですよね。『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』のときは、前の期は別の方が担当されていたので。「ひとつの作品を引き継ぐ」というのは初めてで。それもあって、MVも曲のタイトルも知っている人はニヤリとできる要素を入れました。なので、もし『有頂天家族』の三期も担当できたら……また過去の名曲の曲名を引っ張ってこなきゃいけない(笑)。

ーー(笑)。「鴨川」や「月」は、みなさんの中でどんなイメージなんでしょうね?

towana:二期で象徴的に描かれているのは、やっぱり「月」ですよね。今回は(弁天の弱さが見えるという意味でも)夜が重要な要素だと思うので。

yuxuki:それに、曲のテーマとして弁天に限らず「女性の弱さ/強さ」を表現したいというのもあって。「男っぽいものではない強さ」という意味でもハマったのかもしれないです。

「fhánaが“再生の物語”を経て目指す、新たな表現 「色んな並行世界を包み込んでいきたい」」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版