7回連続で死刑延期、8回目でついに執行 米アラバマ州の死刑囚
2017年05月26日 18:38 発信地:ワシントンD.C./米国
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【5月26日 AFP】米アラバマ(Alabama)州で25日夜、これまで7回にわたって執行が延期されていたトミー・アーサー(Tommy Arthur)死刑囚(75)に対し、薬物注射による死刑が執行された。アーサー死刑囚は1983年に殺人罪で死刑判決を受けたが、一貫して犯行を否認していた。
アーサー死刑囚が死刑判決を受けてから30年余の間に、アラバマ州では58人の死刑が執行された。しかし、アーサー死刑囚は直前での執行延期が繰り返され、昨年11月に7回目の延期が決定。「脱出王」と呼ばれた伝説の奇術師ハリー・フーディーニ(Harry Houdini)になぞらえて「死刑のフーディーニ」の異名を取っていた。
8回目の執行が予定された25日も、ストレッチャーに拘束されて死刑執行室まで搬送されたところで、弁護士を通じてアーサー死刑囚が行った執行停止の申し立てにより、最高裁判所が一時的に執行を差し止めていた。
アーサー死刑囚は当初、執行予定日が決まると家族や親戚を呼んで面会していた。だが、6回連続で延期され、そのたびに別れを告げるのがあまりにつらかったため、7回目からは会うのをやめていた。
こうしたアーサー死刑囚の状況をめぐっては、死刑制度の反対派、賛成派の双方から怒りの声が出ていた。反対派は、終わりの見えない刑の執行延期は精神的な拷問だと批判。一方、賛成派はアーサー死刑囚と弁護士団が死刑制度をもてあそび司法を欺いていると非難していた。
アーサー死刑囚は、当時愛人だった女から1万ドル(約110万円)を受け取り、共謀して愛人の夫を殺害した保険金殺人の罪で有罪判決を受けた。事件が起きた当時は、親類1人を殺害した罪で5年間服役した後で、日中は刑務所外で働くことが認められる通勤刑を受けていた。同死刑囚は親類の殺害は飲酒時の事故と主張しつつも認めていたが、愛人の夫殺しについては一貫して犯行を否認していた。
アーサー死刑囚の弁護団は、事件現場で見つかった当時の証拠品を現代の科学捜査技術を用いて再鑑定するよう要求。また、昨年12月にアラバマ州で薬物注射による死刑を執行された死刑囚が息を引き取るまで13分も要したことを指摘し、同じ薬物を使う刑の執行に異議を申し立てていた。
しかし、最高裁は25日夜、執行差し止め請求を却下。アラバマ州のスティーブ・マーシャル(Steve Marshall)州司法長官は、「処罰を逃れようとするアーサー死刑囚の延々と続いた試みは、ついに終わった」との声明を発表した。(c)AFP/Sébastien BLANC