移住して始めた趣味。
それは、ベリーダンスと絵を描くこと。
月2回の絵画教室に、かれこれ3年、通っています。
メンバーは、その8割が、60代と70代。
総勢12~13人。先生も、リタイア後の60代女性。
教室は、毎回、シニアパワー全開です。
ある日のお題は「自画像」
「皆さん、今日は、この鏡で自分をよーく見て、自画像を描いてもらいます」と先生。
「えー、自分を描くのん?そんな小汚いもん、描けますかいな」とAさん。
笑いが渦巻くなか、
「ホンマや、どうせ描くならもっと美しいもんがいいわ」とBさん。
すかさず、
「なんでぇ、人生の山と谷、ずっと連れ添ってきた自分の顔やないの、今日は、感謝の気持ちをこめて、よーく見たってよー!」と先生。
結局、「いや・・、どないしましょ・・・」と言いつつも、鉛筆を走らせ始める生徒たち。
「まいったなぁ、よう見たら、おでこと髪の毛の境目、あらしませんがな・・」と呟きがもれ、笑いが広がります。
本題に入る前には、必ず、ひと笑いもふた笑いもある、そんな楽しい教室です。
シニアが描く自画像それぞれ
60代後半のCさんは、実年齢よりも10歳は若く見えるオシャレな女性。
彼女の可愛らしいネールに、いつも目を引かれます。
そんなCさんの肩越しから、先生が声をかけました。
「まぁ、Cさん!なんぼなんでも、若すぎちゃう?こりゃ、30代の顔やなぁ。30代の顔やのうて、今の顔を描いてよ~。今の、鏡に映った顔を描くねんでぇ」
そんな先生の声に、隣にいたDさんがCさんの自画像を覗きこみ、
「ホンマや!こりゃ、若い!。Cさん、ウソ描いたらあきませんよ~、ウソはドロボーの始まりでっせ~」と。
大笑いしながら、「あれ?いつもの私とちゃいますか?これ、どう見ても、今の私でしょう。私のなかではこうなってんけどなぁ、おかしいなぁ。目の錯覚かなぁ」とCさん。
いつもお茶目なCさんです。
同じく60代後半のEさん。
10年前に夫を亡くし、この4年間に両親、義父母の4人を次々に看取り、やっと手に入れた自由な時間を、以前から好きだった絵を描くことに使いたいと教室にやってきました。
現実をクールに見つめるしっかり者です。
そんなEさんが自画像を描く肩越しから先生が声をかけました。
「あらぁ~、ちょっとなんぼなんでもやりすぎちゃう?そこまで皺の1本1本描かんでもええねんで。これは、80代のお婆さんの顔やなぁ。もうちょっと自分に優しゅうしたってよ~」
「やり過ぎかいなぁ。ほんでも、もう私、見れば見るほどお婆さんやからなぁ。」とEさん。
そこへ、お隣の生徒さん。
「ホンマよ~、Eさん、ちょっとこれはかわいそうやで。Eさんは、こんなんちゃうで-。もっと若いで-。そないに自分に厳しゅうせんでも、いいんちゃう?」とすかさずフォロー。
そんなこんなで出来上がった自画像を並べてみると、同じ60代の生徒が描いたというのに、30代から80代までの顔がずらっと並びました。
忠実に自分の顔を描いたというよりも、自分のなかにある「自己イメージ」が描かれているといった方が近いのかも知れません。
闘病中の方あり、介護中の方あり。
人生のあれこれを乗り越え、そして今も、そのあれやこれやは進行形。
そんなシニアの描く自画像は、格別に味わい深いものでした。
目を通していただきありがとうございました。
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