Photo by Véronique Debord-Lazaro from Flickr
世間はまだ「LGBTって、聞いたことあるけどよく分かんない」の段階だというのに、また新しい言葉が生まれてしまいました――
こんにちは、ライターのマサキチトセです。YouTubeでLGBTフレンドリーな英会話レッスン動画をアップしてますが、鳴かず飛ばずの毎日に心が折れそうです。
さて今回皆さんに紹介したいのは、「SOGI」という言葉。
実は今「LGBTに代わる言葉」として当事者やその周りの人たちの間に広まりつつあります。
以下では、SOGIってどういう意味? なんの略? もうLGBTって言っちゃいけないの? SOGIが正しくてLGBTは正しくないの? などの疑問にお答えしたいと思います。
そもそもLGBTって何?
LGBTとは「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の略です。1990年代のアメリカで急速に広まり、ここ数年は日本でも積極的にテレビなどで使われるようになったことから、「聞いたことはある」という人も多いことでしょう。
日常生活でも近所の知り合いの口から「LGBT」って言葉が出てきたりと、日本での認知度が高まっていることを感じます。
LGBTという言葉の問題その1:ビジネス用語として広まってしまった
でも一方で、認知度=理解度とも限らないのが悲しいところ。
日本でLGBTという言葉が急速に広まったのは、ビジネス用語としてでした。LGBT当事者は「未開拓の市場」とか言われて、あたかも商品の付加価値、消費者、労働者、企業のブランディングの道具でしかないようなイメージで語られることが多くなりました。
また、その流行に乗っかって商売をする団体や企業も増えています。中には当事者によるものもあります。LGBTに対する理解を広めるという大義名分を掲げておきながら、実際は「LGBTに理解のある人間になりたい」という人々の心理を作り出しつつそのニーズに応えることでビジネスを成立させるというモデルが確立しつつあります。
つい最近も、LGBTコミュニティの中で有名な活動家兼起業家の杉山文野さんがインタビューで「マーケットになって、はじめて人権が得られるという側面はある」と発言したことが話題になり、ツイッターなどで違和感や反論を表明する当事者も少なくありませんでした。
こうして日本で主にビジネス用語として広まってしまったという不幸な運命に加えて、LGBTという言葉はさらに一つ大きな問題を初めから抱えていました。
LGBTという言葉の問題その2:LGBTからこぼれ落ちるアイデンティティ
それは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー以外の多様な性のあり方を除外しているということです。
人間の性のあり方は究極言ってしまえば人それぞれですから、「レズビアンっちゃあレズビアンなんだけど、でもなんかしっくりこないんだよなあ」と思う人なんかがいるのは不思議なことではありません。
「普通の人」と思われている異性愛の人々やシスジェンダー(トランスジェンダーではないという意味)の人々は多数派だし、「普通」と思われているくらいだから、別に社会的に良いイメージも悪いイメージもありません。一方で「普通じゃない人」と思われている人々は、社会的にあてがわれたイメージをテレビや周囲の偏見の目などから受け取って、それと自分との微妙な違いに悩むことが少なくないんです。
そんな訳で、LGBTという言葉が広まってからも(主に)アメリカでは新しい言葉が次々に生まれました。
パンセクシュアル、デミセクシュアル、オムニセクシュアル、アセクシュアル、クィア、ジェンダークィア、クェスチョニング、ジェンダーフルイッド、ジェンダーヴァリアント、ノンバイナリー、etc…。
こうした、LGBTという言葉では表しきれない性のあり方がある、という認識は、当事者コミュニティの中では長年常にあったんです。それは日本でも同じことでした。
そして今、SOGIを「LGBTに代わる言葉」として理解している人たちの中には、「LGBTからこぼれ落ちるアイデンティティ」を含む、より包括的な概念としてSOGIを捉えている人が少なくありません。