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生徒会!? の日々 作者:夜神

2学期

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第43話 ~異性意識の差~

 いま俺が居る場所は、我が家の隣にある白石家。そこの2階にある明日香の部屋の前だ。
 なんで白石家にいるかというと、引越しの片付けが終わってないから手伝ってくれと頼まれたからだ。前日に体調が悪かったことを理由に手料理を回避したため、文句を言えるはずもなかったのは言うまでもないだろう。
 明日香の部屋の前にいる理由は、明日香の弟である勇に明日香のほうの片付けを手伝ってほしいと頼まれたからだ。家族以外の女の部屋に入るのに抵抗がある(明日香の場合、男だと思っていたため別の抵抗もある)ので亜衣たちに頼めよと言ったのだが、重たいものが多いからと返されてしまった。
 明日香なら問題ないだろ、と言おうすれば亜衣につべこべ言わずに行けと言われた。由理香が止めてくれないだろうかと期待したが、明日香に対して恐怖があるのか無言。亜衣に催促される形で勇と片付けを始めてしまう始末。
 俺って両親に代わって家を守ってきたはずなのに、年々扱いが悪くなっているような気がしてならない。……まぁ亜衣がそれだけ家事をこなせるようになったからなんだろうけど。

「……いや、それだけじゃないな」

 それだけ兄離れが進んだってことか。昔は由理香と一緒で俺に甘えてばかりだったのに……活発な子供だっただけに由理香より大変だったような気もする。
 しかも今のケンカと違って口よりも先に手が出てたから……止めるの大変だったなぁ。力いっぱい殴ったり、引っ叩いてるところに止めに入るから痛いし。俺はどっちの味方なんだって責められるし……。

「……おにぃおにぃって言ってたあいつも、ふと思えば大人になったよなぁ。下着も年々」
「おい兄貴!」

 亜衣は昔の話(主に俺に甘えてた時期のこと)をされるのを嫌がる。それに下着姿を見られるのは構わないが、俺が成長したなぁという親が抱きそうな心境で下着を見ていると恥ずかしがる。
 おにぃやら下着という言葉を発してしまった直後に亜衣の大声。まさか聞こえたのかと不安になった俺は、急いで階段を降りて行った。

「な、なんでしょう!」
「……何でそんなに慌ててんだ? つうか何で敬語?」
「き、気にするな」
「……まぁいいけど。片付けはどれくらいで終わりそうだよ?」
「まだ部屋に入ってないから分からん」
「はぁ? 明日香が何か片付けてんの?」
「さあ? ノックしようとしたらお前が呼んだし」
「あっそ」

 ……あっそって何か冷たくないですか。お兄ちゃんはお前に何かした覚えはないんですけど。
 いや待てよ。昨日の俺はかなりおかしかった。生徒会のメンツや不破先生から心配のメールとか来てたくらいに。俺が覚えていないだけで、亜衣の気に触るようなことを言った可能性は充分に考えられる。

「なぁ」
「んだよ?」
「俺、お前に何かしたか?」
「……何かしたのかよ?」
「いやした覚えはないんだが……お気に入りの服を色落ちさせた、ってのはないか。家では基本的にノーブラタンクトップにパンツ姿だから服を洗った覚えはないし……由理香の下着を間違って」
「ばっ、ここは家じゃねぇんだぞ!」

 亜衣が勢い良く口を押さえてきたため、俺は考え込んでいたこともあって支えきれず転倒し始める。倒れる中で考えたことは、今年に入ってから俺は何度も背中を打ち付けてばかりだなぁ、ということだった。

「いつつ……」
「あいたた……」

 痛みに耐えながら下ろしていた瞼を上げると、そこには痛みで歪んでいる亜衣の顔があった。こちらと同様に目を開け、俺と至近距離で見詰め合う形になる。
 ……亜衣の顔を久々に間近で見た気がするが、なんで兄妹なのにこんなに顔立ちが違うんだろう。まあ俺が父親似で亜衣が母親似なだけ、ということなのかもしれないが。
 最近あまり親の顔を見ていないけど、亜衣は年々母さんに似てきているような気がする。顔立ちとか特に。身体のほうも由理香と違ってすくすくと成長してるみだいだしな。乗っかられている状態だから、それなりの弾力があるのを感じることができるし。
 その一方でやっぱ体重も増えてるみたいだな。まあ背も伸びて発育も進んでるわけだから重たくならないほうがおかしいんだが。ダイエットをしているようにも見えないし……そもそも桐谷家で最も規則正しい生活してるから必要ないか。
 そもそも亜衣がダイエットなんてし始めたら止める、とまで行かなくても絶対理由は聞くだろうな。男絡みなら過度にしなければ好きにさせるけど。でも男って痩せてるって印象よりは少し肉付きがいいほうが好みの奴が多いだろうしな。痩せてると健康面に不安を覚えるだろうし。
 そう考えるとダイエットする前に言っておいたほうがいいよな……始めようという気配が微塵もないのに俺は何でこんなこと考えてるんだろう。

「お、お兄ちゃん……」
「ん、由理香か……なんでお前はそんなに絶望したような顔をしてるんだ?」
「真央くん、大好きなお兄ちゃんがお姉ちゃんに押し倒されてるところを見たらそうなると思うよ」

 勇は涼しげな笑みを浮かべて荷物を運びながら言った。確かに俺は亜衣に押し倒されたと言えるので否定はできない。だが血の繋がりがある兄と姉を見て如何わしいことを考えるほうが一般的におかしいのではないだろうか。こう思う俺は間違っていないはず。

「なっ!? 別に押し倒したわけじゃねぇ!」
「亜衣ちゃん、僕は由理香ちゃんの心情を言っただけだから睨まないでくれないかな?」
「別にてめぇを睨んじゃいねぇよ!」

 いや睨んでるように見えるから。お前は由理香と違ってつり目なわけだし、口調も荒いわけだし。雰囲気だけなら、いつ勇に殴りかかってもおかしくないよ。
 なんでこういう風に育っちゃったんだろう……考えるまでもなく、美咲や明日香という存在が身近にあったからだよなぁ。まあ俺にとっても身近だったから、亜衣の口調とか直そうとしなかったわけだけど。だから俺も悪いよなぁ……

「なぁ亜衣」
「んだよ!」
「お前、いつになったら退くの?」

 目の前に整った顔と発育途中だけど充分に大きくなってる胸があるというのは、すっごく緊張や興奮……しない。長年一緒に生活を送ってきた実の妹相手にしてたら人間として終わってるし。
 性的に興奮していないけど、俺が亜衣を退かそうとすると亜衣の身体に触ってしまう。そうすると現状が面倒な方向にこじれるのは必須。具体的に言えば、亜衣から「何やってんだてめぇ!」とか言われながら殴られ、由理香からは「何やってるのお兄ちゃん!」という言葉を合図に罵倒が始まるだろう。

「今すぐ退くっつうか元は兄貴のせいだろうが! 人の顔やら胸ジロジロと見やがって。この変態兄貴が。さっさと明日香のとこに行っちまえ!」
「うぐ……!」

 ……俺が変な発言をしたことは事実だし、成長してるなぁと思って顔とかを見てたのも事実だ。だからそれについて文句は言わない。
 だけど……何でさっさと明日香のほうに行けって言いながら俺の両肩を掴んで力いっぱい押したの? 思いっきり後頭部打ち付けたんだけど。
 暴力はしたくないってことだったのかもしれないけど……まだ胸やら腹を殴ったり、平手打ちされるほうが痛くなかったというか、こちらにも準備できることがあったんだけど。

「お兄ちゃん!? お姉ちゃん、お兄ちゃんに乱暴しないで!」
「デリカシーのない奴にはあれくらいでちょうどいいんだよ!」
「デリカシーって……デリカシーがないのはお姉ちゃんのほうでしょ! 家ではだらしない格好ばかりで、人の家に来てるっていうのに露出の多いというか、家とあんまり変わらない格好なんだから!」
「家でどういう格好しようが私の勝手だろ。そもそも何で家にいるのにきっちりとした服装しなくちゃいけねぇんだよ。家はくつろぐところだろうが! それとここは明日香ん家だろ。別に普段の格好でいいだろ!」

 ヒートアップしていく姉妹たちの口論を聞きながら、俺は頭をさすりながら上体を起こす。
 まったく……このふたりはどこでだろうときっかけさえあればケンカするなぁ。まあ明日香も勇もふたりを知ってるから気にしないだろうけど。

「……こそっと俺のところに来たのは、あいつらのケンカを止めろと言いたいのか?」
「いや別にケンカは止めなくていいよ。しばらくしてからじゃないと余計に騒がしくなるでしょ」
「さすが何度も見たことがあるだけに分かってるな」
「まあね」
「……で、俺に何を言いたいんだ?」
「いやね、ふたりの会話を聞いてたら亜衣ちゃんは異性を意識してるのか不安になってね。僕や真央くんを意識しないのは分かるんだけど」

 まあ俺は亜衣の兄だし、勇はお隣さんだったわけだしな。しかも女の子のようにしか見えない感じの。俺らを異性として意識するのは無理ってものだろう。

「俺もあいつらの交流関係を把握してるわけじゃないしな。でも外出するときはちゃんとしてるし、あんな姿をするのはうちとここくらいだろう。異性をどう思ってるかは……」

 彼氏いるのか? と聞いてもいつもいないと答える。そのときの顔は男に興味がないといった風にも見えた。
 世間一般的に男子よりも女子のほうが早熟だと言われている。両親が共働きの家庭は自分でやらなければならないことも多いだろうから、より早熟になるだろう。
 亜衣は中学3年生にして主婦と言えるほど家事に精通している。俺も同年代より精通している自負はあるが、亜衣と比べれば一歩劣るだろう。亜衣のように手の込んだ料理とかあまり作らないから。
 おそらく亜衣の精神年齢は同年代よりも上だろう。だから中学生は恋愛対象としてないのかもしれない。

「俺もよく分からん」
「仲良いのに?」
「お互いの異性の好みやらを話すほど仲良くねぇよ。話す内容は家事のことだったり、ゲームのことだったり……生徒会のことだったり」
「最後だけすごく嫌そうに言うんだね。きちんと見たのは秋本さんと誠さんだけだけど、生徒会の人たちって全員可愛かったり綺麗だったりするんでしょ?」
「外見が良いのは否定しない……が、まともな人間が少ないんだよ。なのに亜衣は目をキラキラさせて色々と質問してくる……」
「それは仕方がないんじゃないかな」
「なんで?」
「妹としてはお兄ちゃんの恋愛は気になるだろうし。将来お義姉さんになるかもしれないんだしさ」

 ……は? お義姉さん?
 それはつまり……俺が生徒会の誰かと結婚するってことだよな。……生徒会のメンツ全員に多少なりとも好意は持ってたりするが、結婚なんてのは全く想像できない。そもそも恋人ですら想像できない人物が多いのだから結婚なんてできるわけがない。

「俺……あの人らと深い仲になるなんて考えてないんだけど」
「本当に?」
「何で確認するんだよ…………現状では考えてない」
「そっか。じゃあ姉さんとは?」
「は?」

 何言ってるのお前、と言わんばかりの声が反射的に出ていた。でもこれは仕方がないだろう。昨日まで俺は明日香のことを男だと思っていたのだ。まだきちんと女だと認識できていないのに、恋愛に関することを考えられるはずがない。

「真央くん、そのリアクションはないんじゃないかな」
「いやなくはないだろ。性別が女だって認めるところから始めないといけないんだぞ」
「あぁそういえばそうだったね。……ならちょうどいいかな。おそらくまだ寝てるだろうし」
「おい、何ぼそぼそ言ってんだよ」
「いい加減片付けを再開しないとって言ったんだよ。ほら、真央くんは姉さんの手伝いに行って」

 爽やかな笑顔で言った勇は俺の返事を待たずに歩いて行ってしまった。そんな勇に向かって「お前が話しかけてきたんだろ」とポツリと呟く。
 妹たちを確認すると、言い争いをしつつも片付けを始めようとしているようだ。さっさと手伝いに行かないと暴君明日香に何を言われるか分からない。そう思った俺は急ぎ明日香の部屋へと向かった。
 ノックをしながら「明日香入るぞ」と言い、扉を開ける。目の前にダンボールの山が現れた。予想以上に荷物が多い。

「……明日香はどこにいるんだ?」

 隅でひっそりと作業しているのか、人の動く気配はない。下のほうから亜衣と由理香の言い争いが聞こえてくるが、気にせずにダンボールの山を崩さないように進んでいく。

「かぁ……くぅ……」

 明日香を発見した俺はその場に立ち尽くした。何故ならば、明日香が寝ていたからだ。寝ている服装はタンクトップに短パン。短パンを履いているあたり亜衣よりマシだと言えるが――

「――ひどい寝相だな……」

 狼のぬいぐるみを抱いた右腕以外は豪快に広げている。もし亜衣のように短パンを履かないスタイルだったならば、下着にもよるだろうが大事な部分が見えてしまっていたかもしれない。
 また寝返りの回数が多かったのかタンクトップが捲り上がっており、ブラを付けていないがために下乳が丸見えになっている。

「……やばいな」

 常識的に考えてエロい光景のはずなのに、全くといっていいほど明日香に対して性的興奮を覚えない。長い間認識している性別を間違っていたため、明日香を異性として認識していないのならいい。だが俺が男として正常ではない可能性も……これは考えたくない。

「つうか……何でこいつは寝てんだ?」

 俺はあとから聞いたわけだけど、今日荷物の片付けを手伝えって言ったの明日香のはずだよな。なのに何でこいつは寝てるんだ? 勇はすでに起きて片付け始めてんのに。
 そういえば……こいつって普段はきちんと起きれるのに、遠足とか運動会とかイベントの日に限って起きれない奴だったっけ。見た目は大人っぽくなったってのに、そのへんは昔から変わってないんだな。

「明日香」
「くぅ……かぁ……」

 近くで名前を呼んでみたものの起きる様子はない。
 はぁ……呼んだくらいじゃ起きないのも相変わらずか。呼んで起きないとなると、揺するなり軽く叩くなりするしかないよな。布団を剥ぎ取る、なんてのは布団が床に落ちてる時点でできないし。亜衣のように踏みつける……なんてのは俺と亜衣の間柄だからできる話であって、明日香にしようものなら俺が瀕死になるだろう。
 ガキの頃ならまだしも、今は明日香の身体に触れたくない。
 触れることに対する抵抗は亜衣たちに触れるときくらいなので問題ないが……明日香は女だ。俺の認識では男のほうに近いが、明日香自身は紛れも無く女なのだ。目の前に映っている女性らしい身体が何よりの証拠。迂闊に触って起こせば……「何触ってんだこの変態!」などと共に鉄拳が飛んできても何ら不思議じゃない。
 しかも、明日香の服装は肌の露出が極めて多い。加えて下手に身体を動かすと胸がポロリ……。大声を出すという選択肢もあるが、下で亜衣たちが騒いでいるのに起きない時点で意味がないだろう。
 よって起こすには明日香に直接刺激を与えるしかないわけだが……揺するという選択はできないから、頬を叩くしかないよな。

「おーい、起きろ」
「うぅん…………なんだ真央かぁ……」
「こら寝んな。起きろ」
「るっせぇな……休みなんだから好きなようにさせ……」

 1秒ほどの沈黙の後に明日香の目が完全に開いた。明日香はギギギと聞こえてきそうな動きでこちらに視線を向けて再び沈黙する。
 視線が重なるのと同時に明日香の頬の赤みは急激に増し、寝起きとは思えない機敏な動きで床に落ちている布団を手に取って身体を隠した。

「……ななな何でてめぇがここにいんだよ!?」
「何でって、お前が片付け手伝えって言ったんだろ」
「た、確かに言った。けどてめぇがこの部屋にいる理由にはなんねぇだろ!」
「何で?」
「何でって……ここはオレの部屋だぞ!」

 確かにここは明日香の部屋だ。今のに関して何も言うことはないな。

「人の許可なしに入ってるくせに、何でそんなに無関心そうな顔ができんだよ!」
「許可なしにって、勇がここに行けって言ったんだが?」
「はぁ? ……勇の野郎……ここに寄越すにしたってオレを起こしてからにしろよ」

 おぉ……すっげぇ怒気を感じる。漫画ならゴゴゴ! って入ってるくらいに。そんな感想を抱いていると、明日香は睨みの利いた目をこちらに向けた。

「てめぇもいつまでも突っ立ってないで出てけよ!」
「は? 片付けすんだろ?」
「するけど、その前にやることがあるだろうが!」
「……なくね?」

 小首を傾げながら返事を返した瞬間、明日香は俺に向かって枕を投げつけてきた。反射的にそれをかわす。

「避けんな!」
「いや避けるだろ」
「うぅぅぅ……とにかく出てけよ!」
「だから何で?」
「お前どんだけ鈍いんだよ! オレは起きたばかりなんだから色々とすることあんだろうが!」

 色々? ……寝起きなのにもう腹が減ってるのだろうか。それとも鉄拳維持のために筋トレか?

「食事はまだないし、筋トレはあとで良くないか?」
「ちげぇよ! つうか食事はまだしも筋トレってなんだよ。オレは寝起きに筋トレなんてやったことねぇよ!」
「じゃあ片付け始めようぜ」
「うがぁぁぁ!」

 獣のような声を発しながら頭を掻き毟り始める明日香。そんな明日香に対して俺は朝から元気な奴だなと思うのだった。

「どういう思考回路してんだよお前! 寝起きにやることなんて着替えたり顔洗ったりだろうが!」
「ああ……やるの?」
「やるに決まってんだろ! 何でそんな返しが来んだよ!」
「いや、お前の服装とか気にする奴なんて今この家にいないだろうし」
「オレが気にすんだよ!」

 え……あの明日香が気にするだって? …………何かの冗談だよな。

「何でそんなに驚くんだよ!」
「いや、だって……」
「……どんだけ鈍いんだよ。いや、オレの気持ちが分からないにしても、寝てるとことかだらしない格好見せたくないってのは分かるはずだろ。……げ、胸半分近く見えてんじゃねぇか。絶対見られたよな……あぁもう恥ずかし過ぎて死ぬ。……って待てよ、何でこいつは見てるはずなのにケロっとしてやがんだ? オレの身体なんか興味ないってことか……」

 何か驚いたり赤面したりしながらブツブツ呟いてたと思ったら、すっげぇこっち睨み始めたんだけど。確かに俺も悪かったけどさ、ガキの頃の付き合いがあるわけだろ。そこまで怒ることはないと思うんだが。

「わ、悪かったって。まさかお前がそこまで常識人になってると思わなかったっていうか……」
「いいからさっさと帰れ!」
「お、おう――」

 って帰れ? それはつまり自分の家に帰れってことだよな。着替えたりするのを待つだけなのに、わざわざ家まで帰らないといけないわけ?

「出てけじゃねぇの?」
「どっちでもいいから、とにかくオレの前から消えろ!」

 そのへんにあるものを手当たり次第投げつけてきそうな勢いだったので、俺はできるだけ早く明日香の部屋から出た。
 まだ片付けをやっていないというのに、何故かどっと疲れた気分だ。こんなんで無事に片付けが終わるのだろうか……明日香の手伝いは亜衣たちにやらせたほうがいい気がしてならない。そんな気持ちで一杯になった俺は、階段近くの廊下に座りこんでため息を吐くしかなかった。

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