【購入者インタビュー】スクラム・ベンチャーズ 外村仁(ほかむら・ひとし)氏
元・エバーノート日本法人会長にして、シリコンバレーのスタートアップや、サンフランシスコの気鋭のベンチャーキャピタル「SCRUM VENTURES」等のアドバイザーをつとめる外村仁(ほかむら・ひとし)氏。
シリコンバレーの日本人起業家を支援するNPOであるSVJENの初代代表でもあった外村氏が、いまもっとも注目しているIoT製品、それが日本発の全自動衣類折り畳み機「ランドロイド」。
予約開始前から「アメリカ初号機ユーザー」に名乗りを上げた外村氏が、ランドロイドを購入する理由とは何か。東京・表参道の「ランドロイド・カフェ」で話を伺った。
ランドロイドの購入第1号になりたい
編集:
外村さんがランドロイドを知ったきっかけは何だったんですか?
外村仁氏(以下:外村):
たしか、ラスベガスのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)か、日本のCEATEC(シーテック)のニュース記事だったと思います。
日本発の製品で、なんだか変なモノがあるらしい(笑)って思った記憶があります。アメリカにも似たような発想の製品はあるんですけど、全自動ではなくて、自分で衣類を機械にセッティングしなければならないんですね。ところが、ランドロイドは全部機械がやってくれるという。それも日本のロボティクス技術、そして最近とみに話題の画像認識、そしてAIのセット。これは凄いなと。
その後、たまたま知り合いの紹介から阪根さん(阪根信一:セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長)とつながって、会社まで押しかけて行ったんだけど、その時はまだ開発中で、実物を目の前で見ることはできなかったんです。
それから、改めて阪根さんとお会いしたときに意気投合して、盛り上がった勢いで「アメリカ1号機買う!」って宣言して、手元にあった紙に二人でサインして、「これが契約書だ」って(笑)。それを即Facebookに投稿しちゃいました。
編集:
よくその場で購入の決断ができましたね。
外村:
いまアドバイザーをしているスクラム・ベンチャーズでは、サンフランシスコを拠点にAIやロボティクス、IoT関連のアーリーステージのスタートアップに数々の投資をしていて、そちら方面に興味があるというのもあるんですが、それに加えて私個人は、この15年間日本人がアメリカで新しいことに挑戦するのをずっと応援してきたんですよ。
ランドロイドは内容も見た目もインパクトあるし、サンフランシスコやシリコンバレーの小金持ちの連中なら「まあ買うか」みたいな感じで売れるんじゃないかと思ったんですよね。なのでその第1号に名乗りを上げることで、アメリカでのビジネスを応援したいなと。
サンフランシスコで感じる、チャレンジを「応援する人」の大切さ
編集:
外村さんはそういう感じで実物を見る前に何かを購入することって多いんですか? プライベートでテスラ・モーターズのクルマを購入されたのが有名ですよね。(参考記事:外村仁氏は、なぜ愛車のテスラを新しいモデルに買い換えたのか )
外村:
テスラはね、最初のモデルSのときはモックアップや色見本を見てから買えたんですけど、モデルXの時は細かなスペックも実際の色も何もわからない状態でしたね。テスラの人に聞いても、「スペックはイーロン(・マスク)がツイートするんじゃないの」くらいの対応で。でも「いま買わないと納品がその分遅れるよ」って半分脅かされて。もう買うしかないじゃないですか(笑)。
いまでこそ安心してテスラ車を買えるけど、最初にSを買った当時は「つぶれるんじゃないか」って言われていた時期ですから。
編集:
そうなるとスペックとかコストパフォーマンス以前の話ですよね。
外村:
やっぱり応援したい気持ちですかね。もちろん新しいものを試してみるのが好きというのもあるけど。
編集:
その「応援したい気持ち」ってどこから来るんでしょうね?
外村:
アメリカってアントレプレナーシップ(起業家精神)が強い国だと言われていて、実際、起業する人がたくさんいます。でも、それと同じくらい重要なのは、「起業家を応援する人」の割合も高いってことなんですよね。だから起業の成功確率が上がるんです。
自分も20年前に日本で働いていた頃を振り返ってみると、チャレンジする人に「そんなの無理だよ」「ダメに決まってる」とネガティブに捉える側の人間だったと思います。そういう言い方をしたほうが思慮深い人に聞こえるんですよね。でもシリコンバレーに来て、自分自身が起業を通じていろんな経験をした後は、自分もチャレンジする人を応援したいなって思うようになったんです。自分ではできなくても、彼がそれをやるって言うなら応援しよう、そしてそれを買ってあげようと。
編集:
では、そのテスラの車を買うときのような気持ちでランドロイドも購入宣言したわけですね?
外村:
まあ、まったく同じではないですよ。自動車はシリコンバレーでは必須のものですが、ランドロイドはまだ「それがないと困る」というものではないですからね。でも、イーロンの夢を応援しようというのと同じように、阪根さんが世界をいい方に変えるための提案を応援したいと思ってます。技術も大切ですが、この人を応援したいという気持ち、そういうのも私の中では大事ですね。
「たたむ」は家事労働における最後のフロンティアだ
編集:
購入する際、どなたかに相談はされたんですか?
外村:
自分で即決ですね。Facebookに買うことを投稿したら、妻の友人の間で話題になって、彼女もFacebookで知ったのかな。
編集:
奥様から何か反応は?
外村:
どこに置くの?とは言われていて、それはまだ決着していないです(笑)
編集:
けっこう大きな買い物ですよね?
外村:
そうですね、家と・・・テスラの車2台と、その次ぐらいに大きな買い物かも知れません。
編集:
そんなランドロイドに、どんなことを期待していますか?
外村:
AI(人工知能)が僕らの明日に不可欠・不可避なことがだんだんわかって来るにつれ、じゃあ「人間の活動の本当の付加価値って何だ」ということがこれまで以上に問われる時代になってきたと思うんです。
労働の価値基準ってもはや「すごくがんばった」とか「長い時間働いた」ではないですよね。労働時間で計れるような仕事は機械がやるようになって、機械ではどうしてもできないことだけを人間がやるように変わっていく。
家事でも同様です。時給の高い人間でも、家事はそこそこ自分たちでやるわけですが、いろんな機械が出てきて、人間の作業を減らしてくれるようになってきた。食器洗いは食洗機がやってくれるし、掃除は掃除ロボットがやってくれる。日本ではまだ手で食器を洗う家が多いと思いますけど、私が初めてアメリカに来た1980年ころから、食器洗い機のない家はないくらい普及してました。
洗濯も徐々に進化して、洗うところ、絞るところ、乾燥させるところは機械がやってくれるようになりました。そう考えると、最後に残されたフロンティアが「たたむ」ことなのではないでしょうか。
この最後の家事労働を機械がやってくれるようになるなら、そこは任せて、自分は、さらに人間だけができるより付加価値の高いことに集中するのが正しいこと、やるべきことだと思いませんか?
編集:
なるほど。
外村:
服は世界中の人が着ているから、服をたたむ機械は万人の役に立つはずなんです。万人の役に立つ機械なんて、歴史の中でそうそう出てくるものじゃないですよ。
そういう視点で言えば、世界中で家事に時間を取られている(主に)女性の能力が、ランドロイドによって解放されていくことを期待してます。世の中に広くあまねくそれだけのインパクトを持つ発明ではないかと考えています。
ランドロイドについて
ランドロイドは2017年5月末に詳細が公開される予定です。現時点での最新情報や、購入に関するご質問は、ランドロイド公式サイトをご覧ください。