一国経済の景気を左右するマクロ経済政策(またの名を総需要管理政策)は、「財政政策」と「金融政策」に大別されます。
1960年代まで(そして日本ではつい最近まで)は、「経済政策と言えば公共事業と減税(つまりは財政政策)」でした。しかし、1980年代から数年前までの経済学界、そして各国の経済政策は「財政政策から金融政策へ」とまとめることができます。その一方で、近年急に財政政策の役割が見直されている。
このような変化の原因は何なのでしょう。
財政政策から金融政策へとマクロ政策の主役が変化した大きな理由は、国際金融制度の変化にあります。1971年のニクソンショック(アメリカが金1オンス=35ドルの固定価格での兌換を停止した)を経て、主要国は変動相場制に移行します。
固定相場制から変動相場制への移行により、財政政策の効果には大きな変化が生じました。なんとなく知っている方も多いと思いますが、ここは思いきって細かく観察していきましょう。
為替が固定相場制ならダブルで効く
財政政策によって公共事業が積み増しされると、それによって関連企業の業績が向上するでしょう。業績改善に伴い、取引が活性化します。設備の増強をはかる企業も増えますよね。取引や投資の増加に伴い、資金需要も増えるため、金利が上昇します。ここまでは、為替レートとは無関係に生じると予想される影響経路です。
問題はここから。
財政政策の成功で、日本国内での金利が上昇すると、日本国内での資金運用が有利になります。つまりは円需要が増大する……ここで為替制度が効いてきます。
固定相場制の場合、円への需要が増大しても、通常は固定レート(例えば$1=¥360)を守らなければなりません。そこで日本銀行は、為替レートを維持するために円の供給を増やすことになります。資金の供給が増加した(結果として金融緩和状態になった)ことで金利上昇は押さえ込まれ、景気は財政出動と金融緩和の同時発動状態となり、さらに改善します。
一方で、変動相場制の国ではこのような影響経路はありません。なぜでしょう?