「加計学園」獣医学部新設問題 4つの論点

「加計学園」獣医学部新設問題 4つの論点
国家戦略特区の制度により、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に新設しようとしている獣医学部の問題。この問題をめぐり、学園の理事長が安倍総理大臣と大学時代からの友人であることや、「総理のご意向」などと書かれた複数の文書が公表されたことから国会で野党が今治市とこの学園が選ばれたいきさつが不透明だと追及しています。これに対し、安倍総理大臣は「彼からこの問題について、頼まれたことはなく、働きかけていない」と否定しているほか、菅官房長官も文書について、「怪文書のような文書だ」と述べています。いったい何が問題とされているのか、これまで国会などで指摘されている論点をまとめました。
今回クローズアップされた獣医学部は文部科学省がこれまで全国的に獣医師の数は足りているとして、昭和59年以降、既存の16大学以外が新設することを規制してきました。定員も全国の大学で合わせて930人と定められてきました。

この厳格な規制が見直されるきっかけとなったのが、平成25年にできた国家戦略特区の制度です。この制度は従来の特区と違い、総理大臣のトップダウンで指定した地域において、大胆な規制緩和を進めるのが特徴で、最近では民泊やドローンなどが認められてきました。

今治市は平成19年から獣医学部の新設を15回にわたって求め、いずれも認められませんでしたが、平成28年1月にこの特区の指定をうけると、事態は大きく動きます。

同じ年の11月9日に安倍総理大臣が議長を務める国家戦略特区諮問会議は52年ぶりの獣医学部の新設を認めます。そして、ことし1月4日、内閣府は今治市で獣医学部を設置する事業者を公募します。応募の条件は、平成30年4月に新設可能なこと、設置は1校に限って認めるといったものでした。8日間の公募期間に手を挙げたのは岡山市の加計学園だけで、1月20日、正式に学園が事業者に選ばれました。

長年規制されていた獣医学部の設置

今回クローズアップされた獣医学部は文部科学省がこれまで全国的に獣医師の数は足りているとして、昭和59年以降、既存の16大学以外が新設することを規制してきました。定員も全国の大学で合わせて930人と定められてきました。

この厳格な規制が見直されるきっかけとなったのが、平成25年にできた国家戦略特区の制度です。この制度は従来の特区と違い、総理大臣のトップダウンで指定した地域において、大胆な規制緩和を進めるのが特徴で、最近では民泊やドローンなどが認められてきました。

今治市は平成19年から獣医学部の新設を15回にわたって求め、いずれも認められませんでしたが、平成28年1月にこの特区の指定をうけると、事態は大きく動きます。

同じ年の11月9日に安倍総理大臣が議長を務める国家戦略特区諮問会議は52年ぶりの獣医学部の新設を認めます。そして、ことし1月4日、内閣府は今治市で獣医学部を設置する事業者を公募します。応募の条件は、平成30年4月に新設可能なこと、設置は1校に限って認めるといったものでした。8日間の公募期間に手を挙げたのは岡山市の加計学園だけで、1月20日、正式に学園が事業者に選ばれました。

選考は適切に行われたのか

議論となっているのが、今治市と加計学園が選ばれた過程についてです。

今治市が獣医学部の新設を正式に目指したのは平成28年1月ですが、その2か月後に同じく特区制度のもと、獣医学部の設置に名乗りを上げていたのが京都府です。ことし1月、今治市に設置が決まるまで、この2つの自治体は獣医学部を設置をめぐり、競合する関係にありました。国会では野党からこうした選考の最中にかかわらず、各省庁が今治市の提案を前提に検討していたのではないかと疑念が示されました。
その根拠とされたのが去年9月から10月にかけて、内閣府と文部科学省がやり取りしたことを記録したとされる複数の文書の存在です。
このうち、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と書かれた文書は、今治市に獣医学部を設置する時期について、「最短距離で規制改革を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。
また別の文書では、去年9月下旬に行われたとされる打ち合わせの内容が記されていて、このなかで内閣府の幹部は「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と文部科学省側に要請しています。
これに対し、文部科学省側が、「今治市の構想を実現するのは簡単ではない」と答えると、内閣府側は「できない選択肢はない。やることを早くやらないと責任をとることになる」と述べたと記されています。

これら文書はいずれも選考途中に作られたとされ、野党からは、獣医学部の設置はいわば「今治ありき」で決められたのではないかと疑問の声が上がりました。

これに対し、菅官房長官は「怪文書のような文書で、出どころも明確になっていない」と批判はあたらないと否定しました。

また、文部科学省も松野文部科学大臣が記者会見を開き、「関係職員に聞き取りした結果、これらの文書の存在は確認できなかった」と結論づけています。

京都府側の受け止めは?

さらに、京都府側の関係者に話を聞くと、応募を断念した理由の1つに募集条件が変更されたことをあげました。

平成27年6月に日本再興戦略で獣医学部の新設が提案されてから、内閣府はその応募条件について「全国的見地」で行うと明記していました。それが去年11月になると、この文言が消えた代わりに「獣医系大学のない地域に限り」という文言が新たに盛り込まれました。これにより、同じ地域にすでに獣医学部をもつ大阪府立大学があるため、新たな条件を満たすことができなくなったということです。

こうした経緯について、野党からは疑問の声も上がっています。特区の作業部会の中で京都府と京都産業大学が示した共同提案は20ページにわたっていて、iPS細胞を使った再生医療など新たな生命科学の分野で活躍できる獣医師を育てると記されていました。これに対し、野党の議員から今治市の提案は2枚で、内容的にも京都府側がすぐれていたのではないかと指摘する声もでています。

これについて、内閣府は「今治市の提案のほうが京都府と比べて熟度が高かった」と説明しています。また、条件を変更した理由については「獣医師が少ない地域に限り認めるためだった。また、獣医学部の新設に反対していた獣医師会に配慮するためだった」と説明しています。

一方、京都府の関係者は「条件の変更は寝耳に水で、受け止めきれなかった。それぞれの計画の優劣で公平に選考されれば納得いくが今回はあまりに選考の過程が不透明でなぜ選ばれなかったのか納得できない」と指摘しています。

特区の「透明性・公平性」

国はこの国家戦略特区を運用するにあたり、法律に基づいて閣議決定された基本方針を定めています。そのなかで、国家戦略特区は「岩盤規制」をスピード感をもって突破するための仕組みだと規定しています。
一方で、恣意(しい)的な指定を禁じ、透明性を確保しながら客観的な評価に基づいて検討を行うよう定めていて、指定にあたっては、公平性や中立性を保つよう求めています。