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往年のマイコン「MZ-80C」が手のひらサイズで蘇る! 「PasocomMini」の実機に触れてみた
シャープが1979年に発売したPC――本稿では当時に倣ってマイコンと記述する――「MZ-80C」を4分の1スケールで再現した筐体に,小型コンピュータ「Raspberry Pi A+」を内蔵して,MZ-80C用プログラムを実行できるという異色の製品だ。2017年10月中旬発売予定で,予定価格は1万9800円(税別)。2017年6月1日に予約受け付けを開始する予定である。
筆者自身は,MZシリーズのマイコンを買ったことはないのだが,当時の友人がMZ-80Cを所有していて,いろいろなゲームで遊ばせてもらったことをよく覚えている。ボンドソフトの「タイムシークレット」や「タイムトンネル」といったアドベンチャーゲームは,なかなか面白かったものだ。
そのPasocomMini MZ-80Cに関する説明会が,東京・秋葉原で行われ,同製品の開発元であるハル研究所,筐体の製造を担当する青島文化教材社(以下,アオシマ),そして同製品に搭載するBASICの開発を担当するスマイルブームの担当者により,プロジェクト発足の経緯や開発に当たっての苦労などを説明した。
本稿では豊富な写真を中心に,PasocomMini MZ-80Cがどのような製品かを紹介したい。
4分の1スケールの手のひらサイズに往年の名機を再現
第1の見どころは,実際のMZ-80Cの外観を4分の1サイズで忠実に再現したという筐体だ。102.5(W)×71.25(D)×32.5(H)mmという手のひらサイズながら,一体型の筐体にビルトインされたキーボードやカセットテープレコーダーのボタン類まで,忠実に再現してあるのがなんともかわいらしい。
念のために説明しておくと,カセットテープレコーダーは,今で言う光ディスクやSDカードのように,プログラムやデータを保存したり読み込んだりするのに使うものだ。データを音声に変換して,音として記録していたのである。
ただ,CRTの前面は本体から取り外し可能で,画面表示を模したプレートを交換できるようになっている。思い出のゲーム画面をプレートと同サイズで印刷して,CRT部分にはめ込むなんてことも可能であるという。
ミニチュアサイズかつレトロな見た目のPasocomMini MZ-80Cではあるが,中身はれっきとした小型コンピュータである。そのため,ビデオ出力用のHDMI出力端子や,周辺機器接続用のUSBポート,ACアダプタ用の電源コネクタといった,MZ-80Cにはなかったインタフェース類も備えている。なお,オリジナルのMZ-80Cは,内蔵のグリーンディスプレイによる単色表示しかできなかったが,本製品はHDMI出力によるフルカラー表示が可能である。
なお,未使用時にはインタフェースを隠すカバーも付いているので,オリジナルにない端子類は隠しておきたいという人も安心(?)だ。
SmileBASICとMZ-80 Emulatorが同時に動作
SmileBASICはもともと,ニンテンドーDS用のプログラムツールとして開発されたもので(関連記事),それをPasocomMini MZ-80C用に移植したものを採用しているわけだ。そのため,残念ながらシャープ製のMZ-80C用BASICを前提に作られたBASICプログラムを,そのままSmileBASICで動かそうとしても動作はしないだろう。
だが,そこを動くように改造するというのも,70年代後半から80年代前半にかけてBASICでプログラムを組んだ経験のある人にとっては,面白い挑戦かもしれない。
さらにPasocomMini MZ-80Cでは,SmileBASICだけでなく,「MZ-80 Emulator」というハル研究所製のエミュレータソフトウェアも動作する仕組みとなっている。
このエミュレータを使えば,MZ-80C用の機械語プログラムを入力したり,どうにかして吸い出した当時のプログラムを読み込ませたりして,当時のように実行できるのだ。1980年代前半のマイコン雑誌には,MZ-80C用のプログラムコードがよく掲載されていたので,それらを引っ張りだしてきて,PasocomMini MZ-80Cに入力,実行してみるというのも面白い。
なお,PasocomMini MZ-80Cの製品版には,当時のMZ-80C用ゲームが付属する予定となっており,マイコン雑誌が残っていないという人でも,あの頃のゲームをプレイできるというわけだ。
筆者が気になっていたのは,このエミュレータがどれくらい正確にMZ-80Cを再現しているのかと,エミュレータ自体をPasocomMini MZ-80Cのユーザーが改変できるのかという点だ。
これについて,スマイルブームの細田祥一氏に話を聞いてみたところ,ハル研究所製のエミュレータは,すでに実機をかなり忠実に再現しているが,カセットテープレコーダーの読み書きを行う部分をSDメモリーカードへの読み書きに変換するといった部分は,まだ開発中とのことだった。
ただ,文字のデータを書き換えて,ドット絵のグラフィックス(※ただし単色)に入れ替える別売りハードウェア「PCG」(Programmable Character Generator)の機能は,サポートしていないそうだ。ハル研究所はかつて,MZシリーズ用のPCGを製作して販売していたこともあるそうだが,すでに社内にも資料や知見が残っておらず,ロストテクノロジーとなってしまっているためという。
また,MZ-80 Emulatorをユーザーが改変する仕組みは用意していないとのことだった。MZ-80 Emulatorを改造して,独自のPCGを実装したり,MZ-700のエミュレータに変えたりといったことはできない。
エミュレータを改変できないことについて,PasocomMini開発ディレクターの郡司照幸氏は,これをベースに改造して何か別のハードを作るという製品ではなく,「(MZ-80Cを再現した)パッケージとしてみてほしい」と述べていた。たしかに,独自の機能を実装したければ,自分でRaspberry Piでも買って実現すればいいだけのことで,手のひらサイズで外観まで再現したPasocomMini MZ-80Cという製品にはそぐわない,というのは頷ける話だ。
PasocomMiniシリーズは今後も,80年代初期のマイコンブームを支えた記念碑的製品として,NEC(当時)の「PC-8001」と,富士通の「FM-7」の再現モデルを製品化する予定とのこと。会場にはこれらのオリジナルと,4分の1サイズで再現したモックアップが展示されていた。発売時期や価格は未定だが,今後の製品も,
かつてこれらのマイコンを使っていた人や,欲しくても買えなかった人(※筆者含む)は,PasocomMiniシリーズを買って,当時のプログラムを改めて試してみてはいかがだろうか。
PasocomMini 公式Webサイト
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