pixivに投稿されたR-18指定の小説を「有害表現」として引用している研究論文が、モラルが欠如し、作者に対する名誉毀損だとしてネットで批判を集めています。ピクシブは5月25日、論文の発表元である立命館大学へ経緯と事実関係の確認および対象ユーザーとの問題解決を要請したことを発表しました。
論文は立命館大学情報理工学部の3人による「ドメインにより意味が変化する単語に着目した猥褻(わいせつ)な表現のフィルタリング」。Web上で青少年にわいせつな暗喩表現を見せないようにするため、人工知能を使った新しいフィルタリングの手法を提案した内容です。
そのフィルタリングの分析に、pixv内のR-18(18歳未満禁止)の小説を10点、「猥褻な表現が含まれる文」として使用したことを報告。特に作者に使用許可は取っていませんでしたが、論文ではその小説すべてのURLと作者名を明記していました。また論文は5月24日に2017年度人工知能学会全国大会で発表され、大会のWebサイトでもPDFファイルで公開されました。
論文における小説10点の選定理由は、「本研究では猥褻な表現に関する文を集めるために,pixivに投稿されているR-18小説を用いた.R-18小説に分類される小説の中から,2016年10月のウィークリーランキングTop10の小説を選択し,分析に用いた」。
通常、pixivでR-18指定されている作品は、会員がユーザー設定で「R-18指定作品」も見られるよう設定しなくては閲覧できないようになっています。このように一定のフィルタリングがなされている作品を引っ張り出して「猥褻な表現が含まれる文」として紹介し、作者名まで明記している論文の内容に、ネットでは批判の声が続出しました。
「ゾーニングされた場に公開されている作品を『未成年に有害』として扱うってどういうこと?」と疑問を覚える意見。ほかにも「サイト名や作者名を匿名表記にするべきでは」など、研究倫理に反しているとの指摘もありました。
引用された作者の中には既に、今回の論文をきっかけにpixiv会員以外の「不特定多数の目にさらされることを恐れて」という理由で、作品を全て非公開にした人も出ています。
ピクシブはこの件を受け、「ピクシブ株式会社より論文の発表元である立命館大学に対し、経緯と事実関係の確認および対象ユーザーとの問題解決を要請しております。皆様がより安心してpixivを利用できるよう、引き続き本件への対応を進めてまいります」と、対応に動いていることを発表。論文への使用がpixivの利用規約に反していないかなど、編集部からピクシブ広報部へ質問も送っていますが、19時時点で回答はもらえていません。
立命館大学の情報理工学部の事務室へ問い合わせたところ、「当該論文に関する状況は把握しており、事実関係を調査中です」と回答しました。また人工知能学会でのサイトでは該当の論文が「※例外的に発表原稿を非公開としました」という一文とともに非公開に。理由について学会の広報部に取材を進めています。
(黒木貴啓)
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