「早く日曜にならないでしょうか」「楽しみすぎて死にそうです」
VICE JAPANの丁稚奉公男(24歳)が、隣の席でずっと騒いでいる。うるさ過ぎてこっちが死にそうだ。なんでもボクちんが大好きな銀杏BOYZのライブが5月28日にあるようで、ボクちんにとっては8年ぶりの参戦らしい。正直いって銀杏BOYZに興味はない。「ひよっこ」ちゃんは観てるから、まぁ好印象ですけど、音楽に関していえば、「ああー、私も若いころは変なのが好きだったからなぁ。あぶらだことかー」くらいなもんで、かわいいねーボクちん、スクスクと育ってねー、と温かく見守り続けてきたと思う。しかしここにきて、丁稚ボクちんに変化が現れた。髪の毛を伸ばし始めた。コンタクトレンズに変えた。パーマをかけた。その結果、完全に見た目が銀杏BOYZの峯田和伸になったのだ。完全に〈峯田化〉したので、現在では〈ミネタカ〉と呼ばれるほどだ。さすがにミネタカの気持ちがわからなくなった。いくらライブが楽しみだからといって、ミネタカ自身が峯田になる必要はないのだ。ミネタカが心配になってきたので、この場をお借りして、ミネタカの胸の内をきちんと訊いてみた。
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いよいよ日曜が迫ってきましたね。どうですか、今の気分は?
ミネタカ:まだ水曜日かーって感じです。今週に限っては、早く過ぎて欲しいと思っています。
いつもは早く過ぎて欲しいって思わないのですか?
ミネタカ:そんなこともありません。
今回はワンマン公演でしたっけ?
ミネタカ:いえ、もう1個でます。never young beachが出ます。
ネバやんかー。高橋一生の弟だっけ? やっぱ正直、ワンマンの方が良かった?
ミネタカ:そうですね。
何を着ていくのですか? 今日みたいに銀杏BOYZのTシャツ着ていくの?
ミネタカ:着ていかないです。
でも絶対会場で、「峯田さん、そっくり!写真撮らせてください」とかっていわれるよね。
ミネタカ:いわれないと思います。いわれません。
絶対いわれるって。じゃあいわれたとします。そしたらどうするの?
ミネタカ:撮っていいです、っていいます。あ、でも、あれですか? 会社的にはマズいですか?
どっちでもいいです。でもね、そんなに峯田ソックリにしてね、もうあなたは〈ミネタカ〉になっているわけです。どうしてそんなに好きになったのかがわからないので、まずは峯田さんとの出会いから教えてください。
ミネタカ:中学校3年生のときです。読売新聞に〈銀杏BOYZのヴォーカル、書類送検〉と載っていました。
え? 峯田って捕まってるの? なんで? ドラッグ?
ミネタカ:いえ、ROCK IN JAPAN FESTIVALでチンチン出したんです。
ほほう。
ミネタカ:元々、大槻ケンヂが好きなんですけど、そのエッセイのなかで、〈峯田和伸〉って名前が出ていたんです。それで「あ、大槻ケンヂのエッセイのヤツが捕まってる」と気になり、すぐにBOOKOFFでCDを買いました。
いくらでしたか?
ミネタカ:覚えていません。
もしチンチンで捕まっていなかったら聴いていませんでしたか? ドラッグとかだったら?
ミネタカ:はい。「チンチン出してる!おもしれぇ!!」からスタートしていますから、聴いていなかったと思います。
あ! あなた、そういえば高校のとき、チンチン出して退学になっていますよね! それってもしかして…
ミネタカ:はい。全部つながっています。
そのときからチンチンを?
ミネタカ:はい。
チンチンを出し始めたの?
ミネタカ:はい。それ以前は、チンチンは出していません。
BOOKOFFで買ったCDはどうだったんですか?
ミネタカ:全然良くなかったです。
え? 良くなかったの? どうして? チンチンに見合ってなかったの?
ミネタカ:そうです。最初はそうです。うるさいと思ったんです。演奏も下手でした。それまでは筋肉少女帯しか聴いていませんでしたし。
筋少はプログレみたいなものですからね。じゃあ、いつから銀杏BOYZの音楽はチンチンに見合うようになったんですか?
ミネタカ:友達に貸したんです。そしたら返ってきたときに「うるさいけど、メロディはいいね」みたいなことをいわれました。それで、ちょっと気になり始めました。あと全部ラブソングなんです。全部、女の人のことを歌ってる。
はい。
ミネタカ:ちょうどそのとき、転校してきた女の子を好きになったんですが、「彼氏いるから」ってフラれたんです。そのときに俺を包んでくれたのが、銀杏BOYZのNOISEだったんです。
「NOISE」っていう曲があるんですか?
ミネタカ:いいえ。銀杏BOYZの音楽のことです。
銀杏BOYZってノイズやってるの?
ミネタカ:いいえ。
なんで今NOISEっていったの?
ミネタカ:うるさい音楽っていう意味でいいました。
それで、失恋したときに聴いたらハマったんですね。
ミネタカ:はい。俺の心を代弁してくれました。
なんて曲? どんな歌詞ですか?
ミネタカ: “いてもたってもいられなくなりましてー 商店街をチャリでぶっ飛ばしましたー” そういう歌詞です。「援助交際」って曲です。
じゃああなたも梅ヶ丘の商店街をぶっ飛ばしたんですか?
ミネタカ:はい。イヤホンで聴きながらです。
チンチンは、その歌詞のなかで出すの?
ミネタカ:そこでは出さないです。
他の曲も教えて。
ミネタカ:「メス豚」とか。フラれる曲がいっぱいあります。
その歌詞も教えてください。
ミネタカ: “女なんか嫌いだ でも本当はやりたいんだー” そうやって締める曲です。
なるほど。じゃあ、フった女の子をあなたも当てはめていたんですね。
ミネタカ:はい。クソ女です。メス豚野郎。
歌詞が大きかったんですね。じゃあ、高校入ってからも、好きな女の子ありきで聴いていたんですか?
ミネタカ:いいえ。高校のときに好きな女の子はあまりいませんでした。
じゃあ、どうやって銀杏BOYZを聴いていたんですか? リアルじゃなくなっちゃうでしょう?
ミネタカ:学校でイチャイチャしているようなカップルに対するヘイトフィーリングで聴いていました。
え? なに?
ミネタカ:ヘイトフィーリングです。曲の主人公は、基本的に告白とかできないんです。相手にもされないんです。
ああ、なるほど。峯田さんっていうのは、ジョックではなく、ナードだと。そっち系の代弁者みたいな。
ミネタカ:まあ、そういわれています。
最初のライブ体験を教えてください。
ミネタカ:高1のときに赤坂ブリッツで観ました。映画『少年メリケンサック』のイベントみたいなやつです。JAPAN-狂撃-SPECIAL、SAKEROCK、ZAZEN BOYS、そして銀杏BOYZです。
ZAZEN BOYSと銀杏BOYZは関係あるんですか? バービーボーイズとか。
ミネタカ:そこはわかりません。
初めて観た銀杏BOYZはどうでしたか?
ミネタカ:マジでもうエエーイって。こことここが同じ世界に感じられませんでした。
こことこことは?
ミネタカ:よくいわれている例えで申し訳ありませんが、〈ここ〉が俺のいる場所、〈ここ〉がステージの上です。
そんな例え話、あまり聞いたことがありません。
ミネタカ:歩ける距離なのに、歩けるとは思えない距離。もう別世界でした。
はい。
ミネタカ:感動したんです。こんなやばいもの観てしまったので。どうしようかと思いました。
はい。
ミネタカ:やるしかないって思いました。
何を?
ミネタカ:次の日にギター買いに行きました。バンドもしました。
おお! それはかっこいいエピソードですね!! バンドをさせる気にさせるなんて、すごい影響力だったんですね、銀杏BOYZは。
ミネタカ:すいません。ギターを買ったのは次の日ではありませんでした。
じゃあ、いつ買ったんですか?
ミネタカ:すでに持っていました。
なんで嘘ついた?
ミネタカ:その方がライブの衝撃を伝えられると思ったからです。
フーン。ではそのギターで何を演ったのですか?
ミネタカ:「BABY BABY」です。
それも銀杏BOYZの曲ですか?
ミネタカ:はい。
どんな歌ですか?
ミネタカ: ”イルミネーションー イリュージョンー BABY BABYー” 夢のなかの歌です。クリスマスの歌です。
でもあなたも年を取り、彼女もできますよね? そしたら幸せになるじゃない? 銀杏BOYZを聴く必要がなくなるのではありませんか?
ミネタカ:成就しちゃいけないんです。成就したら銀杏BOYZでもなんでもなくなる。
ハァ?
ミネタカ:銀杏BOYZじゃなくなるんです。
銀杏BOYZが成就したら?
ミネタカ:いや、俺です。俺に彼女とかできたら、銀杏BOYZでもなんでもなくなる。
ハァ? 彼女ができたら聴いてもしようがないってことですかね?
ミネタカ:そうです。
聴いても意味がないってこと?
ミネタカ:そうです。
じゃあ、彼女がいたときは、聴いてなかったんですか?
ミネタカ:聴いていました。聴き続けていました。
何をいっているのかまったくわからない。
ミネタカ:喉は渇いてないけど、好きだからコーラを飲む、です。
おおー。じゃあ彼女がいるときは、いないときより喉は渇いてないんですね。
ミネタカ:あたりまえでしょ。喉を渇かしたいんですよ。俺は喉を乾かしたいんですよ。
今は渇いているのですか?
ミネタカ:はい。
じゃあ、コーラも完璧に美味いんですね。
ミネタカ:はい。銀杏BOYZ第二次ブームが来ています。
あ、第二次ブームなんですね。いつから?
ミネタカ:えっと、ここで働き始めてからです。
なんで? ストレス? それとも好きな子が事務所にいるの?
ミネタカ:いえ、その、なんか。
なに?
ミネタカ:俺、あきらかに銀杏BOYZの真似とかしているヤツって気持ち悪いと思います。
あなたのことじゃない。
ミネタカ:「お前、絶対、峯田のこと好きでしょ?」みたいなヤツです。
だからあなたのことじゃない。
ミネタカ:「嫌だなぁ」と思っています。ライブとかしているとき、対バンでいるんです。でも俺、今バンドやっていないからいいかなぁ、と思っています。
整理します。VICEで働き始めた。だからバンド活動も止めた。だから峯田の格好を真似してもいい。俺は許される。そして第二次ブームが来た。ということですか?
ミネタカ:はい。
今の銀杏BOYZのどこが好きなんですか?
ミネタカ:銀杏BOYZも変わったんですが、俺も変わったからです。
どういうことでしょう?
ミネタカ:銀杏BOYZは新作を出しました。2014年の1月15日に。
すげえ、出さなかったんですよね? 長いあいだ待たされたんですよね?
ミネタカ:そこなんです。すげえのは。
すごくねえよ、そんなの。
ミネタカ:なぜですか? いってもいいですか?
どうぞ。
ミネタカ:俺は最近調べてるんスよ。ライブに行くから。
はい。
ミネタカ:2007年くらいのブログでは「もうすぐ新作出ます」とかいってました。スタッフが。
はい。
ミネタカ:「もうすぐ完成します」って。
はい。
ミネタカ:でも出ない。まったく出ない。そのあいだにメンバーも結婚したり、辞めたりで、銀杏BOYZはバタバタになったんです。
うん。
ミネタカ:そこがすごいんです。
よくわかりませんが、その出さなかったのがすごいと?
ミネタカ:そうではなくて、やっと出た新作のほうです。
あなた、どんどん勝手に頭のなかで走るでしょ。
ミネタカ:その新作が未完成な感じだったんです。メンバーがいなくなったから、打ち込みになってたり、しようがないからノイズ入れていたり。
今度はちゃんとノイズですね。
ミネタカ:セカンドが出るまでに9年間ありました。そのあいだに俺も成長しました。いろんなことがありました。いろんなことがあって、これが銀杏BOYZの成れの果て。
はい。
ミネタカ:しようもない、しようもないアルバムなんです。公式もわからず計算ドリルを解き続けたような凄みがあったのです。
コーラとか、ドリルとか、ちょいちょい入れますね。で、気に入ったんですか? 気に入らなかったんですか?
ミネタカ:最初は聴けなかったんです。買ったんですけど、聴きたくなかったのです。こんだけ楽しみだったから、聴けなかったんです。でもヴィレッジバンガードの前を通ったら、流れていて、「ギョエーかっけえー!!!!」。家に帰って、そこでちゃんと初めて聴きました。
要するに、その未完成っぽいところとか、中途半端な感じがたまらなかったのですか?
ミネタカ:エモ味です。エモ味だけです。未完成だったから、もっと好きになったんです。9年間の限界がここにはあるんです。
ちなみに日曜日のライブでは、チンチン出してくれるんですか?
ミネタカ:わかりません。でも俺、峯田のチンチン触ったことがあります。
教えてください。
ミネタカ:ラ・ママでのライブを最前列で観ていました。全裸になっていたので触りました。
どうだった?
ミネタカ:嬉しかったです。
でも引っかかるのが、峯田って「俺たちナードの代表」みたいな感じだったわけですよね? でも俳優もやるし、映画音楽もやるし、かなりエンタメ色が強くなっていると思うんですね。そうなっちゃうと、「俺たちの峯田」みたいなのが薄れてきません? 説得力ないでしょ。
ミネタカ:そこは興味ないです。よくいわれています。「オマエ、役者になったのかよ」とかって。でもそこに関しては、俺はどうでもいいんです。関係ないです。ドラマなんて観なきゃいいわけです。そこは俺わかっています。俺の代弁者だとは思っていません。
さっき代弁してくれたといってたような。
ミネタカ:例えば、銀杏BOYZの前身バンドのGOING STEADYに「童貞ソー・ヤング」っていう曲があります。ライブに童貞が集まって、「童貞最高ー!」みたいな雰囲気になりますが、峯田は童貞じゃありません。
まぁ、そうですよね。
ミネタカ:峯田和伸は役者なんです。根っからの役者なんです。チンチン出して、童貞を叫んでいますが、絶対女にもモテています。童貞の神だと思ってるヤツは間違いです。
なんでそれがわかってるのに、あなたは合わせられるの? わかってたら、曲も色褪せちゃうのでは?
ミネタカ:彼はカリスマです。童貞じゃないのに、童貞万歳っていって、童貞の客を沸かせてしまう。本当にかっこいい。あのー、俺、銀杏BOYZの話を日々しますが、いつもあまり納得されていませんよね?
はい。
ミネタカ:違うんです。俺は峯田が好きなんです。峯田和伸が好きなんです。
ん? 銀杏BOYZではなくってこと?
ミネタカ:はい。もちろんバンドも音楽も好きですが、それ以上に峯田が好きなんです。峯田が好き、峯田が好きなんです。銀杏BOYZというよりも峯田が好きなんです。
ああ、そうだったの。それなら納得できるかも。でもそんな風に好きな男ってあまりいないから、その感覚わからないなぁ。
ミネタカ:サウンドガーデンのクリス・コーネルが好きだったから、髪の毛伸ばしたっていってたじゃないですか!!
いや、あれも音楽ありきだから、峯田とは違う。サウンドガーデンがリンキン・パークみたいになったらもう聴かないもの。
ミネタカ:よくわかりません。
誰だろう? 他に峯田みたいな存在っているのかなぁ。…あ! ヘンリー・ロリンズでしょ! 峯田はヘンリー・ロリンズ!
ミネタカ:よくわかりません。
ヘンリー・ロリンズなら、何をしても許されるもの!! ロリンズ峯田か! すげえ納得しました。うん、納得したー。
ミネタカ:よくわかりませんが、良かったです。
それで大好きだから、そんな髪型にしたんですか? ミネタカになったのですか?
ミネタカ:よくわかりません。しかし、たまに似ているっていわれることがあったので、思いっきりこちらから寄せてみました。
やはり峯田に似てるっていわれるのは嬉しいのかな?
ミネタカ:嬉しい? 嬉しい…のかもしれません。
好きな人に近づきたくなる、と?
ミネタカ:それはあるかもしれません。
この前、ゲイの人から聞いたんだけど、自分自身が好きなタイプの男性の髪型とかファッションに近づけるから嬉しい、といってましたよ。
ミネタカ:そうなのかもしれない。そうなのかもしれないです。ゲイなのかな。いや、バイセクシュアリティ。
あなたのもうひとつの大好物といったら、欅坂46の尾関さんですが、峯田と尾関だったらどっちが好きですか?
ミネタカ:峯田ですね。
即答ですね。じゃあ、チューするんだったら?
ミネタカ:尾関です。
フーン。でも他のファンの人たちはそんな感じじゃないですよね。「銀杏BOYZ最高! 俺たちの代表、峯田!!」って感じなんでしょ?
ミネタカ:よくわかりません。だいいち、他のファンとはまったく喋りませんし、喋りたくありません。
なんで?
ミネタカ:同じ女の子を好きになった男と仲良くなりたくないです。それと同じです。
よくわかりました! じゃあ、最後に。峯田に「ケツかせ!」っていわれたらどうしますか?
ミネタカ:かします。
チューは嫌で、ケツはOKなのかよ!
ミネタカ:もちろんじゃないですか!!
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