金利低下、伸びる住宅ローン残高 京都・滋賀の金融機関
京都、滋賀の主な金融機関が、住宅ローン残高を伸ばしている。日銀が昨年2月に導入したマイナス金利政策により金融機関のローン金利が急低下し、新規の借り入れや借り換えの需要が拡大したためだ。一方で、過熱する低金利競争に距離を置き、営業戦略を見直す金融機関もある。
京都銀行は、2016年度に実行した住宅ローンが1960億円と前年度比で30・9%増えた。マイナス金利を受けて金利を引き下げたことに加え、京都市などの鉄道沿線で活発化した住宅開発も追い風となった。実行額のうち、他の金融機関からの借り換えは2割を占める。3月末の残高は初めて1兆5千億円を超えた。
4月から定期借地権付き分譲マンションの住宅ローンも開始した。土地を担保にできないが、地価の上昇が続く都心部では開発が増えるとみて、人気エリアの物件を中心に開拓する方針だ。脇一博個人営業部長は「少子高齢化で住宅着工は今後減る可能性があるが、都市への人口流入は続く」と見る。住宅ローン営業を強化して20年3月末に残高1兆8千億円を目指す。
滋賀銀行は、16年度に同13・5%増の928億円を貸し出し、3月末残高を1年で262億円伸ばした。住宅ローンを強みにしている京都中央信用金庫も、3・2%増の1219億円を融資し、同残高を334億円増の1兆1105億円に積み上げた。
マイナス金利に伴う住宅ローンの最優遇金利引き下げは、メガバンクを含む金融機関全体に広がっている。中には10年固定金利で0・5%を下回る大手銀行も現れており、かつてない低金利競争で収益性も低下した。
それでも各金融機関が融資拡大を目指すのは、ほかのローンや資産運用などの取引につながる可能性が見込めるためだ。ある地域金融機関の担当者は「目先の収益ではなく、住宅ローンを入り口として教育ローンや投資信託、相続など生涯にわたる取引につなげたい」と狙いを明かす。
一方、京都信用金庫は金利引き下げ競争による「消耗戦」(広報部)を回避する方向に舵(かじ)を切った。週末に住宅ローンの相談や申し込みを受け付ける営業店を20店から15店に縮小。16年度の実行額は前年度の半分以下の307億円となり、3月末残高は5027億円と1年間で134億円減らした。
榊田隆之専務理事は「現在の金利水準は異常だ。低金利競争から抜け出さないと経営体力を失い、地域を支える『コミュニティーバンク』の機能が果たせなくなる」と語り、金利だけに頼らない新たな営業モデルを模索する考えを示す。
【 2017年05月25日 11時50分 】