「時間」こそが元手
昨今、「働き方改革」が話題になり、特に、長時間労働の問題がクローズアップされている。
かつては堂々と自社ビルの「不夜城」ぶりを誇った某大手広告代理店も、若手社員が自殺する痛ましい出来事が世間で話題にされるようになってからは、原則として午後10時に社員は退社するようになった。
筆者は、たまたまこの会社とビジネス上のご縁があったが、メールの連絡を頂く時刻は午後9時台が圧倒的に多かった。「午後10時以降はダメなのですね?」と社員に訊くと、「はい。そうなのです」という答えが返ってきた。
「残業せよ」と言われるのは嫌だが、「残業するな」と言われるのも困るのだろうなあ、と少々同情した。しかし、時代は変化している。適応を図るしかない。
このように、日本の会社の時間感覚は変化しつつある。本稿では、働くサラリーマンと「時間」との関係のあれこれについて、考えてみたい。
1. 無遅刻こそが「信用」の基本
新卒で就職した一年目社員は、もちろん、いろいろなことができるといいのだが、一つだけ何が一番大切かというと、取引先との約束に遅れないことはもちろんだが、定刻よりも早く会社に来る、「無遅刻」を達成できることだと申し上げたい。
「その程度のことでいいのか」と思われるかも知れないが、時間を守ることが約束の基本であり、約束できない相手とは、取引も共同作業もできない。新入社員は、無遅刻を通じて、必要な時間に必要な場所に身を置くことができるという実績を会社の仲間及び自分自身に対して示すことが大事だ。
もちろん、取引相手や、顧客など社外の人を相手に、時間を守ることは「必須」だ。例えば、待ち合わせ時間に対する厳しさは、文化や地域によっても異なるが、国際比較では、日本は、ドイツ、オランダ、アメリカなどと共に最も厳しい部類に属する(参照:エリン・メイヤー『異文化理解力』英治出版)。
「言い訳があれば遅刻していい」と思うのではなく、「基本的に遅刻の言い訳というものは存在しないのだ」と考えておくようでありたい。