一流大卒「官僚の元妻」が貧困に苦しむワケ

15年前の離婚を機に転落が始まった

植草紀子さん(仮名)は、個人経営の学習塾で住み込みで働いている(編集部撮影)
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、一流大学卒でキャリア官僚元夫人という経歴をもつ55歳の女性。彼女は離婚を機に貧困に陥った。

 

この連載の一覧はこちら

「人生、何もかも、うまくいきません……」

東京下町。植草紀子さん(仮名、55歳)は、待ち合わせ場所で顔を合わせるなり、深いため息をつく。表情は疲れ、「美容院に行くおカネがない」ので毛髪はボサボサ。白髪が多く、年齢よりも老けて見える。15年前に離婚、それから転落の一途をたどっているという。

近くに生活する部屋があるというので、見せてもらう。数分歩き、商店街の外れにある小さな学習塾で立ち止まる。建物は木造。小中学生向けの小さな学習塾の中に入り、教室を通り抜け、はしごを上る。なんと学習塾の屋根裏に6畳ほどのスペースがあり、現在、そこに居住しているという。きれいに整頓されているが、狭すぎて満足に生活できる空間ではなかった。高さは女性がギリギリ立てる程度の160センチほど。さらに屋根の形に沿って傾斜している。

違法建築の「屋根裏」に住む

「学習塾の経営者とたまたま知り合いで、塾の手伝いをすることを条件に住まわせてもらっています。2年前、妹の家を追い出されて路頭に迷っているとき、助けてもらいました。屋根裏の部屋は違法建築、出入口ははしごだけ。天井の斜めに沿って足を向ければ、眠れます」

元夫は、なんとキャリア官僚。離婚前までは世帯年収2000万円を超える富裕層で、長年、海外に赴任していた。部屋に昔の写真があった。色あせた紙焼き写真には、きれいに化粧して着物やドレス姿で華やかに着飾る30代の植草さんの姿があった。

次ページ海外生活から屋根裏になぜ転落したのか
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチAD
半導体の覇者<br>熱狂する世界、沈む日本

今やアップル、グーグルも半導体メーカー。半導体関連株はITバブルに迫る高水準。トップ10にアジア勢が並ぶが、日本は事業売却に揺れる東芝のみ。勢力図激変の業界をリポート。