トランプ米大統領、ローマ法王と初会談 過去にあつれき
就任後初の外遊で中東と欧州を歴訪しているドナルド・トランプ米大統領は24日、バチカンを訪れ、ローマ法王フランシスコ1世と初めて直接会談した。トランプ氏と法王は、大統領選中からトランプ氏の移民政策や環境政策をめぐり厳しい言葉を交わしている。
大統領一行は午前8時半(日本時間午後3時半)の少し前に法王庁に到着。会談は直前になって予定が決まったため、早朝の対面となった。メラニア夫人や娘のイバンカさん、イバンカさんの夫ジャレド・クシュナー上級顧問が、レックス・ティラーソン国務長官、H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が同行した。
法王庁公邸管理部のゲオルク・ガンスバイン大司教に出迎えられた大統領一行は、スイス衛兵の護衛と共に法王の執務室へ向かった。
トランプ氏は法王に「素晴らしい名誉です」と伝え、2人はにこやかに言葉を交わしたという。非公開で20分ほど会談した後、再び報道陣の前に姿を現し、贈り物を交換した。
トランプ氏は、黒人指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の著作集を贈り、法王は世界平和の日に行った説教の写しにサインしたほか、環境保護の必要性を説いた自分の著作を贈った。
トランプ氏は「では、拝読します」と法王に答えた。
フランシスコ法王は昨年2月、大統領候補のトランプ氏がメキシコとの国境に不法移民を防ぐ壁を建設すると発言していることについて、「橋を築くことでなく、壁を造ろうと、それだけを考えている人は、それがどこであろうと、キリスト教徒ではありません」と語っていた。
これに応えてトランプ氏は当時、「宗教指導者が人の信仰を批判するなどみっともない」と反発し、「もしバチカンがISIS(いわゆる「イスラム国」)に攻撃されたら、法王はドナルド・トランプが大統領だったら良かったのにと嘆くに違いない」と演説していた。
また今年1月から2月にかけてトランプ氏が大統領として、イスラム教徒の多い6カ国からの入国を制限し難民受け入れを一時停止しようとした際、法王はツイッターで、「主なる神が聖書でどれだけ頻繁に、移民や外国人を受け入れるよう私たちに求めていることか! 私たちも外国人なのだと、どれほど思い出させてくださることか!」と書いた。
BBCのジョン・ソープル北米編集長は「これほど対照的な2人がいるだろうか? フランシスコ法王はかすかな微笑みの気配だけをたたえ、トランプ大統領は満面の笑顔で。2人は法王の書斎で向かい合って座った。まるで片方の就職面接のようだった」と指摘する。
「世界指導者同士がこうして会談する際には、私たちには相違点よりも共通点の方が多い――などと言うのが普通だ。それは確かにその通りだろう。しかし、この2人を分ける相違点も本物だ」
トランプ氏は法王庁の次に、イタリアの大統領と首相を訪問し、次いでブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する。さらに26日にはイタリア・シチリアで主要7カ国(G7)サミットに出席し、外遊を終える。
ローマとバチカン周辺の警備は強化されたものの、23日夜にはローマ市内の広場でトランプ氏に抗議する集会が開かれ約100人が参加した。
(英語記事 Trump holds first face-to-face talks with Pope Francis)