もうすでにレビュー記事を2記事もあげているこの作品。
読めば読むほど味がでるというか、奥深いというか、やっぱりいくえみ綾さんの漫画は凄いなと。
ドラマは見てないんだけど、きっと、この漫画に出てくる登場人物を、もっとドラマティックに再現しているんだろうな。
主な登場人物は4人
主人公の美都と、その不倫相手の有島くん、美都の旦那さんの涼太、有島くんの奥さんの麗華。
みんな普通の人。
ただ、それぞれの生い立ちで、それぞれ少しずつ癖はある。
ドラマでは、涼太と麗華をやけにホラーっぽく再現してるらしいけど、そんなこと全然ないし。
涼太は、ちょっと抜けてる(というかたぶん発達障害)母親と、その母親を心から愛す父親に育てられた。父親の穏やかで寛容であたたかな愛は母親にだけ向けられ、良太には向けられなかったが、母親は良太を心から愛してくれていた。
そんな家庭で育った涼太が、やはり少し抜けてる美都と結婚し、なにがあっても美都を愛しぬくと決意するのは、何一つおかしなことではない。
ドラマの予告動画見たけど、涼太、こんなにホラーな人にされちゃってて、可哀想だなぁ。
麗華は、お金と女にだらしなく暴力的な父親と、パートに出て必死で生活費を稼ぐ母親、可愛い妹と4人家族。麗華は家計を支えるため、妹を大学に行かせるために高校生からアルバイトをしていた。自分は奨学金で大学に行くという。
父親から家族を守り、母親を支え、妹思いの『いいお姉ちゃん』でいつづけた麗華が、太陽のような有島くんと結婚したのも、それでも自分の感情を夫にすらぶつけることができず、押し殺し、目をそらし、今は幸せなんだと思い込み続けるのも、おかしくもなんともない。
そして美都。
スナックを経営する母親と2人暮らし。しょっちゅうスナックに呼び出され、お客の相手をさせられる。そしてスナックにいた占い師には『2番目に好きな人と結婚するといい』と言われて涙ぐむ。母親は、美都が実家に戻ったとき、美都に安物のワンピースを着せ『似合うじゃない』という。
そんな母親に育てられた美都はきっと、自分の価値なんて大したことないと思っていて、適当な事務職につき、妥協した相手と結婚をする。自分なんてこんなもんだって思ってるんだと思う。
ちなみに、安物のワンピースを着せられた美都を実家に迎えにいった涼太が、ワンピースのことを『似合わない』と言いきったところはかっこよかった。
この4人の中で、有島くんは異色に感じるくらい『幸せな普通の一般家庭』で育つ。年の近い妹とも仲良しだし、家族4人そろっての外食も和気あいあい。おまけにスクールカーストは常に上位のイケメン。
そんな『幸せ』なイケメンの有島くんは、大学時代、普通に可愛くて普通に裕福な女子とおつきあいするチャンスがあったのに、薄幸な麗華を見捨てることができなかった。この優しさもまた、幸せイケメンなゆえの感じがする。
そういったことまで描きこんでるこの漫画、すげくね?
やっぱいくえみ綾作品ぱないわー。
さて。
そんな、わたしなんて所詮こんなもん、と思って生きてきた美都が、初恋の、人生で1番好きだった有島くんに再会してしまうんだから、それはもう、ハマってしまうでしょう。所詮こんなもんって思ってた自分の人生が、一気に輝きだしてしまう。
悪いか
悪くないかなんて
誰がどこで
決めるんだろう
私なんかきっと
ものすごい悪い奴だ
そこには私の
幸せがあるだけなんだけど
私は
いつかきっと
罰があたる
いや不倫は悪いって法律で決められてるわけですけどね。
友達の正論も
陳腐な説教
私の心には
届かない
そうよ私
バカよ?
今かなり動物よ?
それの何が悪いの?
有島くんが既婚だとわかり、そして少し雲行きが怪しくなったときも
私たちは
続くと思う
確信がある
『運命』
『宿命』
『必然』
『奇跡』
『確信』
そして脳内はお花畑。
最近のご機嫌は
ある一つの事柄ですべて
決まる
会えるか
会えないか
誕生日を祝ってくれる約束をキャンセルされたとき
きっと理性では、もう危ないとわかってる。
『また』
って言った
『また』
って言った
『また』
次もあるよね
大丈夫
大丈夫だ
私
ハマると
しつこいよ
そして、有島に別れを切り出されたときの怒り。
やばいのは
最初から
承知でしょうが
そんな美都を、親友香子が諭す。
あんた
有島と
どうなりたいの?
未来のないものに
すがって何が
楽しいの?
あたしすっごい
まともなこと
言ってるよね?
本能のまま
動いてるなら
動物だよね?
夫が変態なんだという美都に香子は
私からしたら
あんたも充分
変態だわ
有島に
大事にされてるとでも
思ってるの?
少し
立ち止まって
真剣に考えても
いい頃じゃない?
そして。
有島くんとの別れ話。
自分の気持ちを正直に言えと美都に迫られた有島くんは
やっべぇ
失敗した?
こぇ~~~
道 間違った!
『逃げたい?』
逃げられるものなら
『わたしが路頭に迷ってたら?』
心配する・・・・・・・・・・・・ふりして家に帰る
『もう一度
再会したところからやり直せるとしたら?』
コーヒー飲んで
少し話して
そのまま帰る
で
半年後くらいにふと思い出して
なんか惜しいことしたかなあと思う
バカだからな俺
うかつだった自分を後悔しまくりの有島くん。
そんな有島くんと、美都の親友香子がバッタリ会い、繰り広げるやりとりも好き。
『香子チャンは話にきいていたとおり
いつでも正しいよね?
僕らとは違うもんね?
独身だけどね?』
『同じ立場にないと
物事のとらえ方が違うからわからない
全ての感情は経験を伴わないと
わかり得ない
という考えは
すごく幼稚で
逆に多角的にモノを見られないんだと
思いますけど
どーですか!』
香子ちゃんみたいな絶対正義の正論のひとって絶対必要。
そして香子ちゃんはなんだかんだで
美都を見捨てない優しい子。
この漫画さぁ。
ほんといいわ。
本質だと思う。
エンターテイメントとしてデフォルメされたドラマよりも
リアルにリアルで真実な、漫画の方を読んでほしい。
わたしはまだ4巻分までしか読めてないんだけど
5巻では、美都と涼太は離婚して、実家に帰った麗華を有島くんは追うっていう展開みたいだよ。
あ、あとね。
この漫画のもう1ついいなと思うのは
有島くんが、家族や、麗華を、心から大切に思ってるのが伝わる描写がたくさんあるところ。
0歳児育児をほんの少し離れ、2人で入ったファーストフードのコーヒーを、ものすごく美味しそうに飲む麗華を見ながら、嬉しそうに、もっとちゃんとしたところに入ればよかったなっていう有島くんとか、ね。
王道だけど
王道だからこそ
読めてよかったなぁと思う漫画です。
ぜひ!!
初見はあんまりおもしろい印象なかった。