福岡高の東京同窓会で行われた鏡開き。スペインの未完の大聖堂「サグラダ・ファミリア」の建築に携わるOBの彫刻家、外尾悦郎氏の記念講演もあった=2017年5月13日、都内
新聞に見開きで掲載された修猷館高同窓会総会の告知広告=2017年5月13日、西日本新聞朝刊
緊張した面持ちで入学式に臨む筑紫丘高の新入生たち=2017年4月7日、福岡市南区(撮影・中村太一)
吉武和彦(よしたけ・かずひこ)
1971年7月生まれ、北九州市出身。大学を卒業後、福岡市の月刊経済誌を経て、1999年9月西日本新聞社に入社。経済部、宇佐支局(大分県宇佐市)、経済部、東京報道部、北九州本社編集部から、2015年8月にqBiz編集長に。「ガラケー」を使いこなすが、今回の異動を機にスマートフォンの練習を始める。
「あの社長はしゅうゆう出身」
「あの部長はふっこうやもんね」
福岡で企業の取材をしていると、こんなフレーズを耳にすることがある。この春、転勤や就職で東京や大阪から転入してきた方々も、あいさつ回りや商談で早速、同じような言葉を聞いているかもしれない。
「しゅうゆう」や「ふっこう」とは、いずれも福岡市内の県立高校の愛称。修猷館高と福岡高のことを指す。
そうとは知らずに初めて聞いた転勤族は、「周遊」や「復興」の文字が頭に浮かぶかもしれない。「まさか高校時代の話が出てくるとは…」(大手販社の九州支店長)と意表を突かれる方もいるだろう。
市内では、この両校に「がおか」と呼ばれる筑紫丘高を加えた3校が「各学区の成績トップ校」(大手進学塾)とされ、地元で「御三家」と呼ばれることもある。
■絆の下地は“地元の子”?
どこの都立高も府立高も受験できる1学区制の東京や大阪と違って、福岡県には13の学区がある。県立高を受験するなら、自分の住所地がある学区の高校を選ばなければならない。
つまり、“地元の子”たちの集まりとも言え、これが下地になっているのか、福岡は「大学よりも高校の人脈が物を言う土地柄」(地場企業社長)とされている。
中でも、大手企業や経済団体のトップや幹部にはいわゆる「御三家」の卒業生たちの姿が目立つ。さらに、先輩後輩のつながりは社会に出ても続き、同窓会が盛んな学校も多い。その同窓会の告知広告は新聞の見開きで掲載されることもあり、転入者たちを驚かせているようだ。
中国地区出身で福岡市・天神で働く20代女性は「私の地元では見たことがありません」。長崎県出身の50代男性も「ここまでやるとは…」と衝撃を受けている様子だ。
広告は卒業生たちが勤める会社単位で「わが社は1人当たり2千〜3千円ずつ出した」(修猷館OB)などと“自腹”で出稿。九州電力や西部ガス、西日本鉄道、福岡銀行など勤務先の社名と共に「有志一同」などと存在をPRしている。
■予想もしない“地雷”が!
母校愛を育む卒業生たち。その一方で、他校の卒業生にライバル心を抱くことも。その微妙な立ち位置や心情を読み違えると、思わぬ“地雷”を踏んでしまうこともある。
とはいえ、その特性を理解し、溶け込んでいけば、転勤族もビジネスの場でキーマンたちとつながっていける可能性はある。
その鍵はどこにあるのか。はたまた、言ってはいけないNGワードとは。
高校の対象を福岡県内に広げ、13学区のうち特に「人気校」(大手進学塾)とされる7校のOB、OGに集まってもらい、覆面座談会を敢行。「福岡は本当に大学より高校人脈が物を言うのか」をテーマに語り合ってもらった。
途中、司会の私が予想もしない“地雷”を踏んでクレームを浴びる場面もあるため、まだ地雷を踏んでいない方は、ぜひ回避に役立ててください。
福岡の街の魅力を満載した人気連載「福岡スタイル」のシリーズとして、近く【前編】と【後編】の2本立てで掲載します。お楽しみに。