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2013年10月 3日 (木)

亜硫酸ナトリウムと酸素の反応機構

亜硫酸ナトリウムは食品添加物やボイラーなどに広く使用されている還元剤です。

おもな反応は、酸素を吸収して硫酸を生成します(硫黄の酸化数は+4→+6、式1参照)。

  (1)  2Na2SO3 + O2   → 2Na2SO4 

この反応機構はあまり知られていないようなので、文献で調べた結果を紹介します。

1 ラジカル連鎖反応機構です

この反応は古くから知られており、1898年にはすでに連鎖反応機構が提案されています([1,2]中の文献参照)。

現在もラジカル連鎖反応と考えられています(式2)[3,4]。(赤字はラジカル)。

  (2-1)  SO3^2-    → ・SO3^-   +  溶媒和電子

  (2-2) ・SO3^-   +   O2  →  ・SO5^-

  (2-3) ・SO5^-   +   SO3^2-    →  SO5^2-    +    ・SO3^-

  (2-4) SO5^2-    +    SO3^2-    →   2SO4^2-

2 もう少し詳しい反応機構

式2はやや簡単すぎるので、もう少し詳しい説明を考えてみました(図1)。

      図1 亜硫酸イオンと酸素との反応のラジカル連鎖反応機構の説明

11_2

図1の説明

① 亜硫酸イオンから、光や環境中の微量重金属(M^n+)の触媒作用で ・SO3^- が発生。

② ・SO3^- が酸素分子がラジカル反応して ・SO5^- が発生。

③ ・SO5^- と亜硫酸イオンがラジカル反応して SO5^2- と ・SO3^- が発生。

④ ・SO3^- は②の反応に利用されるので連鎖反応が継続する。SO5^2- は亜硫酸イオンのS原子に求核付加して2分子の硫酸イオンを生成。

3 まとめ

この機構はまだ少し問題が残っていると思われる。例えば、

光以外にも極微量の不純物の重金属イオンをラジカル開始剤と考えたり[5]、

反応性の高い溶媒和電子が存在したり[3]、

あるいは上記以外のいくつかのラジカルの存在も指摘されたりしている[3]。

しかし、現在、上記以外の反応機構は考えられていない。

4 文献

[1}  JACS(Journal of the American Chemical Society), 1941年, 63卷, p.1644-1650

[2]  Environmental Health Perspectives, 1985年, 64卷,p .209-217

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1568601/pdf/envhper00447-0209.pdf

[3]  JACS, 1972年, 94卷, p.47-57

[4]  Biotechnology and Bioengineering, 1991年, 37卷, p392-396

[5]  JACS, 1978年, 100卷, p.6252-6253

 

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