「あのとき売っておけば…」
しかし、売電価格は年々下がり続け、太陽光発電関連の倒産も相次ぐ中、ゴルフ場を買い求める太陽光発電関連会社は激減している。
「ソーラーバブル期に高値で売却し、会員の預託金を清算できたゴルフ場が勝ち組。周辺では『あのとき売っておけば』という後悔の声もある」と北関東にあるゴルフ場の支配人は明かす。
今年11月末で閉鎖し、メガソーラー化する栃木県宇都宮市のケントスゴルフクラブは「売却額は約10億円。相場の約2倍と聞いている」と同クラブの新井博氏。確かに活況期ほどの値段ではない。
新井氏は「働き盛りのゴルファーが減少し、この辺りのゴルフ場は土日の売り上げが右肩下がり。うちも今は黒字経営だが、数年後は赤字に転じる見込みだ。この値段で売れるうちにという、上の判断は致し方ない」と嘆く。
北関東のゴルフ場は、熾烈な価格競争で平日3000円昼食付きなど、破格のプレー代が当たり前。「健全な経営には8000~9000円のプレー代が最低ライン」(新井氏)で価格競争はつぶし合いに他ならないが、売却先が見つからなければ、引くに引けない。
15年の『レジャー白書』によれば、ゴルフ人口は14年までの10年間で約30%減。団塊世代が後期高齢者となる数年後には、さらなるゴルファーの大量減少が予想される。石川遼らスター選手も、若者のゴルフ離れに歯止めをかけることはできなかった。
いまや「車が必須で丸1日つぶれる」という既存の姿から脱却し、時代に合ったスタイルの確立が急務。抜本改革なしに業界の未来はない。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 野村聖子)