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【社会】

「対テロ」名目で心も捜査 「共謀罪」の危険な本質 参院で熟議を

 <取材班の目>政府与党の都合で三十時間で打ち切られた衆院の審議では、政府が「心の中」の処罰や一般人の処罰につながるといった共謀罪が抱える本質的な危険を隠そうとするあまり、答弁をはぐらかす姿勢が目立った。

 例えば、最大の論点だった「一般人」が捜査や監視の対象になるか、という問題。「組織的犯罪集団」の構成員かどうかを、捜査機関が判断するには捜査してみなければ分からない。しかし金田勝年法相は、一般人とは「何らかの団体に属しない方や、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方」という意味なので「捜査対象になることはあり得ない」と言い続けている。これでは「犯罪に関係ない人は捜査されない」という当たり前のことを言っているに等しい。

 「心の中で考えたことが処罰や捜査につながり、言論の萎縮を招く」といった野党の指摘に対し、政府は「準備行為があって初めて処罰の対象とするので内心を処罰するものではない」と答え続けていた。金田氏は、採決が強行された十九日の衆院法務委員会で、「心の中」にある目的が捜査対象になることや、警察が目を付けた人物の知人が捜査対象になることを認めた。

 政府は「テロ対策」を強調しているが、その必要性を証明しきれていない。そもそも共謀罪は、意思の合致があったときに成立するもので、心の中に踏み込まなければ証明できない。参院では、政府はそうした危険性を認めた上で熟議をすべきだ。 (西田義洋)

 

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