日立製作所は大型の汎用コンピューター「メインフレーム」のハードウエア開発から撤退する。今後は米IBMからハードの供給を受け、メインフレームの事業自体は継続する。メインフレームは企業や官公庁などの基幹業務システムに幅広く採用されているが、市場縮小が目立つ。日立はハードからの撤退で事業の「選択と集中」を急ぎ、成長分野に経営資源を振り向ける。
ハードにおけるIBMとの協業などを23日、発表した。IBMのハードに日立製の基本ソフト(OS)を搭載した新製品の提供を2018年度から始める。日立はメインフレーム向けのOSなどの開発は今後も続ける。
メインフレームは大量のデータを処理する信頼性の高いコンピューターだ。1950年代に登場して以降、特に日本では幅広く利用され、日立やIBM、NEC、富士通などのメーカーがしのぎを削る世界有数の市場だった。
ただ90年代から「ウィンドウズ」や「リナックス」などのOSを搭載したパソコンサーバーなどの小型コンピューターが普及し、メインフレームの市場は縮小。パソコンサーバーに比べて価格が高いほか、ソフトの互換性が低いなどの欠点もある。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、90年代半ばに1兆円超あったメインフレームの国内出荷金額は、15年度には450億円弱まで落ち込んだ。
日立はこうした変化を背景にハード開発からの撤退を決めた。一方、既存システムの安定稼働やセキュリティーの高さを重視する企業を中心に、メインフレームの需要は根強い。既存システムで蓄積されたデータなどを、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」に活用したいという声もある。日立が成長領域と見込む分野だ。
日立は18年度にIBMと組んで提供を始めるメインフレームの製品については、自社のIoT基盤「ルマーダ」と連携しやすくする。従来よりもネットワーク機能や外部のサーバーなどとの連携機能を強化する。これにより既存製品からの置き換えだけでなく、IoT分野向けの新サービスの需要も取り込む考えだ。