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 スポーツの尊厳を傷つけ、その価値を地に落とす行為だ。

 男子テニスの三橋淳(みつはしじゅん)元選手(27)が八百長に手を染めたとして、国際的な不正監視団体から永久資格停止と罰金5万ドル(約550万円)の処分を受けた。

 2年前に南アフリカとナイジェリアで行われたプロの下部ツアーに参加した選手らに対し、数百ドルから数千ドルの見返りで、わざと試合に負けるよう持ちかけたとされる。

 さらに、公認のブックメーカー(賭け屋)を通じ、テニスの試合を対象にした賭けも76回繰り返していた。公平・公正を疑われるとして、テニス選手は禁じられている行為だ。選手を信じ、真剣勝負に声援を送るファンを裏切った罪は重い。

 監視団体は08年に設立された。怪しい動きがあるとブックメーカーから通報がある。昨年は292件の情報があり、選手や審判計9人が処分された。下部ツアーは賞金が低く、場合によっては八百長による報酬の方が高くなることも、不正が絶えない背景にあるようだ。

 日本テニス協会も手をこまぬいてきたわけではない。プロ登録の際に法令順守の研修を開き、今年度からは海外を転戦する選手向けにインターネット経由の講座も始めた。とはいえ研修は1度で、参加しなくてもペナルティーはないなど、とても十分とはいえない。

 スポーツ界は、競技を始める時期が低年齢化し、ジュニア世代でも国際大会を転戦するケースは珍しくない。だが、技術力の向上に注がれる力や熱意に比べ、倫理面は立ち遅れている。競技団体ごとに計画を立て、スポーツ庁も問題意識をもって、10代のうちから積極的な取り組みを始めるべきだ。

 問題行為を自分から申告すれば処分を軽減する制度や、通報を受けつける窓口の整備なども検討すべきではないか。

 やましいことのない選手や指導者は、そうした仕組みがあること自体を快く思わないかもしれない。だが、倫理を説くだけで十分か。広く社会に導入されている、こうした工夫も参考にしていい。

 間違いを犯してしまった選手を支えることも欠かせない。

 いったん処分を受けた者が現場に戻り、観客の前で再びプレーするには、社会の理解が欠かせない。本人の反省に任せるだけではなく、競技団体や統括団体の責任の下、復帰プログラム作りを進めてほしい。

 包括的な取り組みが人々の信頼を取り戻し、スポーツの尊厳を守ることにつながる。

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