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 小池百合子・東京都知事が自民党都連を「忖度(そんたく)政治だ」と批判すれば、自民党は小池都政を「決められない政治だ」と糾弾する。そんなつばぜり合いが激しくなってきた。

 注目の都議選の告示まで1カ月をきった。小池知事が率いる地域政党・都民ファーストの会が台風の目となり、関心は今後ますます、「小池都政にイエスかノーか」の一点に集中しそうな雰囲気だ。

 だが、果たしてそれだけでいいのか。いちど立ち止まって、都議が担うべき役割をおさらいしておきたい。

 議員の中から首相が選出される国会と違い、都道府県の首長と議員はどちらも有権者に直接選ばれる。二元代表制といわれるシステムで、両者は地方行政の「車の両輪」の関係にある。

 都議は、地域のさまざまな声に耳を傾けたうえで、知事が提案する予算の配分や政策が適切かどうかを、都民の代表としてチェックする。それには、知事と一定の距離を保ち、緊張関係にあることが不可欠だ。

 だが、この20年近く知事与党の自民、公明はどうだったか。

 豊洲への市場移転問題で、両党は今春、都議会に百条委員会を設けることに賛成し、土壌汚染対策をめぐる都と東京ガスの交渉の実態を追及した。改革姿勢を訴えたつもりだろうが、本来こうしたチェックは、市場の移転予算を議会として認める前に果たしておくべきものだ。

 なれ合いの懸念は、都民ファーストにもつきまとう。

 きのう発表の公約で、都民ファーストは市場移転に関する考えを明確にせず、知事の今後の判断を尊重したいと述べた。この先、様々な都政の課題について自分たちのリーダーの方針を健全に批判し、注文をつけられるのか。そこが問われる。

 都議のもう一つの役割は、知事側と政策を競いあい、それを都政に反映させることだ。

 たとえば、2030年には都民の4人に1人が65歳以上となる。だが介護の施設も人手も足りない。巨大都市の超高齢化にどう備えるか。また、東京一極集中による地方の衰退は、都も解決に乗りださねば展望が開けない課題だ。しかし小池都政では光が当てられていない。都議としてどう考えるのか。

 この4年間、都議の提案で生まれた条例のうち生活に直結するものは一つもない。定数127と最大の地方議会にもかかわらず、水準は高いといえない。

 反省を踏まえ、都議選にそれぞれがいかに臨むか。有権者に語るべきことは、少なくない。

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