現実を知るにはどうすればいいか? これは数千年前から哲学者たちが問うてきた命題だ。今やコンピューターの登場によりその命題は進化した。新しい問いはこうだ
「現実はコンピューターシミュレーションにすぎないのではないか?」
この命題を証明することが可能なのかに関してのパネルディスカッションが昨年、アメリカを代表するSF作家アイザック・アシモフの追悼記念討論会(アイザック・アシモフ・ディベート・シリーズ)で行われたが、ここではその根拠となりうる5つの事柄を見ていくことにしよう。
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5. コンピューターの性能はシミュレートするのに十分
インテルの創業者の1人であるゴードン・ムーアは、ムーアの法則として知られる予測を行なった。すなわち、半導体の集積率は18ヶ月で2倍になるというものだ。今日のコンピューターの専門家は、コンピューターの性能上昇は毎年2倍ではないが、それに近いことを知っている。
このままコンピューターの性能が上昇し続ければ、いずれ現実をシミュレートできるほどのものが登場するだろう。
NASAのある専門家は、10年以内に人生80年分をシミュレート可能なコンピューターが開発されると予測している。それは人間の一生の思考すべてをシミュレートできるもので、もちろん中の人間は自分がコンピューター上の存在だとは知りもしない。
あるいは宇宙全体がシミュレーションなのかもしれない。宇宙シミュレーターはすでにいくつか存在しているが、最も印象的なのはハーバード・スミソニアン天体物理学センターのものだ。2014年、それは宇宙130億年の歴史をたった3ヶ月で再現してみせたのである。
4. 現実は我々が見るまで存在しない
現実の基礎である亜原子の物体は通常、波か粒子として存在する。しかし両方の性質を持てるものもある。例えば、光や電子と同じくらいの質量の物体だ。
これらの亜原子の物体は、観察されていないとき、両方の状態で存在する。そして、一度観察された途端に、波か粒子かを”決める”のだ。論理的にはきわめて違和感を感じる現象である。現実の基礎は見てみるまで存在しないということだからだ。
観察がその”決定”に影響する理由はよく分からない。だが我々が考えているような現実というものは存在していない可能性を示す不気味な証拠である。
3. 世界がホログラムだと仮定すれば、
一般相対性理論と量子力学は統一される
シミュレーション仮説における最大の議論の1つが、宇宙は本当は2次元で、3つ目の次元は薄い振動するひもが作り出したホログラムではないかというものだ。つまりテレビゲームの3次元環境がコードによって作られていることと、大差ないかもしれないのだ。
今年発表された論文によれば、2次元の世界はあり得ることで、仮にそうであれば、一般相対性理論と量子力学を統一するという物理学最大の難問の1つが解決されるかもしれないという。両理論は物理学の主要な理論でありながら、互いに相容れることがない。
一般相対性理論は、宇宙や重力といったマクロの世界を見事に説明する。一方、量子力学はウランの崩壊といったミクロの世界を正確に説明する。3次元世界では拒絶し合う2つの理論だが、2次元世界なら統合されるかもしれないのだ。
関連記事:この宇宙がホログラムであることを証明する初の”証拠”を発見したと主張する物理学者(英研究)
2. クロード・シャノンのコード
シルベスター・ジェームス・ゲーツは常人にはとても理解できない超対称性、超重力、超弦理論といったことを専門とする理論物理学者だ。
彼は、アディンクラという超対称代数に使われるシンボルを使った超弦理論等式の研究から、現実の基礎がコードに過ぎないという信ぴょう性の高い証拠を発見したという。等式の中に1940年代に情報時代の父クロード・シャノンが作ったコードが含まれていたのである。
ゲーツはこれについて、この予想もしなかったつながりが示唆することとは、これらのコードが自然界では普遍的なもので、現実のエッセンスにも組み込まれている可能性である、と話している。つまり映画『マトリックス』で描かれたような、人間の経験が仮想現実の産物にしか過ぎないという可能性である。
1. 確率的にシミュレーションである可能性が高い
オックスフォード大学のニック・ボストロムによれば、人間の文明には3つの可能性しかないという。1つ、人間はシミュレーターを作る前に絶滅する。2つ、科学技術は発達するが、どういうわけかシミュレーションを行わない。どちらの可能性も我々が現実に暮らしていること前提としている。
だが3つ目は、我々がシミュレーションの住人であるという可能性だ。その可能性は高い。確かに人類がシミュレーターを開発する前に絶滅する可能性は高いが、仮に将来的にそのようなものが完成すれば、好奇心旺盛な我々はその使用を止めることができないだろう。いくつものシミュレーションが稼働し、そのシミュレーションの中の人間がさらにシミュレーションを作り出す。無数のシミュレーションが実施され、そこであらゆる思考や行動が模倣される。
さて、ボストロム説が正しいとすれば、我々が住むこの世界はオリジナルの”本物”の現実であろうか? それとも無数に存在するシミュレーションのうちの1つであろうか?
via:5 Reasons Life is Actually Just a Computer Simulation
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コメント
1. 匿名処理班
この世界がコンピュータの中にあるというならば神様にプログラマーとしての才能は皆無だと思う。
2. 匿名処理班
我々が神様と呼んでいる存在が「プレイヤー」で
我々はNPCなのかもしれない
3. 匿名処理班
シミュレーションの中でシミュレーションをしてさらにその中でシミュ(ry
上位の人間がうっかりコードを引っかけたら複数の宇宙が消えてしまうな!
4. 匿名処理班
五角の是座を成す、ジョーカー大陽星団 の事ですね。解ります
5. 匿名処理班
実はオレも気がついてた。
鏡を見るたび「フットボールアワー岩尾」似がいるんだ。
本当は「三浦春馬」似なのに。コンピウターったらw
(号泣していいですか?)
6. 匿名処理班
シャットダウンはよ
7.
8.
9. 匿名処理班
シミュレーションだとしても、頑張って生きていくことには変わらない
10. 匿名処理班
物理学者ってこういう話になった途端にすごいバカになるよな。
超越論哲学の意義がまるでわかってない。
世界の可能性の条件の設定という発想がまるでない。
11. 匿名処理班
ワーオ!すばらしー!早速やり直そうぜ!
12. 匿名処理班
仮にシミュレーションなら、糞ゲーすぎてやってる奴飽きないのか?
俺ならバグだと思う国とか人間は専用ソフトを作り修正するか
いっそう全部ぽいし再度作り直すと思うぜ
13. 匿名処理班
だとしてだよ
14. 匿名処理班
実際、シミュレーション世界なんかコピー作ればそれだけ無限に世界が作れるわけで、
例えばそれだけの性能のコンピュータが作れる星が宇宙にひとつでも出来れば、
この世界が、そこで作られた一兆個のシミュレーション世界の一つなんて事は十分にありえるし、リアル(だと思ってる)宇宙にリアルに存在する可能性と比べれば恐ろしく可能性高いやろな。
15. 匿名処理班
つまり、この世界はF.S.S.と同じであると。
16. 匿名処理班
こういうことは俺もいつも考えていたよ
中2の頃から
17. 匿名処理班
>世界がホログラムだと仮定すれば一般相対性理論と量子力学は統一される
これいろんなまとめサイトで荒唐無稽な話で扱われてたけど、ちゃんと元の論文読んだらそれなりに説得力のある話だったわ。
端的に言うと、物体が光速に近づくと、空間は縮んで時間は止まるから、光子とかの光速で動く素粒子から世界を見ると、世界自体がペラペラな切り取られた映像に見えるから、それが素粒子の数だけ重なったように見えるとか何とか。
18. 匿名処理班
神の思し召しとか、釈迦の掌の上とかと内容はほぼ同じ。
機械文明になぞらえて宗教色が薄くなっているだけで。
19. 匿名処理班
ムーアの法則に突っ込んじゃイヤーん
20. 匿名処理班
可能性がないわけはないよなぁ
ダム湖に住んでいるブラックバスは川が海まで続いていることも海という存在も想像することなど出来ないわけだし
21. 匿名処理班
モーフィアーーース!!!
22. 匿名処理班
シミュレーションの中でシミュレーションできちゃうようになるのか…
つまりそのシミュレーションの中でもまたさらにシミュレーションがされるようになりそのまた先で…
となると一番最初にシミュレーションが始まったのはいつなのか?ってなりそう
23. 匿名処理班
仮想空間なら、もっと楽しい人生にしてくれてもいいのじゃよ?
24. 匿名処理班
面白いけど小中学生の頃に知ると眠れなくなるやつだこれ!
25. 匿名処理班
例えそうだとしても根元に働きかけることが出来ず、日々の生活にも影響しないのならまやかしも同然だ。暇つぶしにはなるけどね
26. 匿名処理班
YouTubeとかで動画観てたけど、難し過ぎて理解出来ないんだよな(笑) でもまぁ、VRなら尚更平和に住み良い世界にして欲しいよ…。
27. 匿名処理班
星の配置がランダムなように見えて
実は線形合同法による疑似乱数だったとかねー
28. 匿名処理班
キトラ古墳 「コンピューターあったらもっとキチンと管理しとったわ」
信長 「セコムと防犯カメラ欲しかったわ…」
エジプト 「スフィンクスの鼻のデータどこかに残ってない?」
29. 匿名処理班
シミュレーションしてる側もシミュレーションされてるから大丈夫
30. 匿名処理班
プラトンの洞窟の比喩だったけ?
現実は所詮映像に過ぎないとか
実際脳を知るたびにそうだと思う。
思考が現実化するも本当
31. 匿名処理班
シュミレーションだとするとそれに気がつく可能性もシュミレートされてるって事?
それってなんか不完全な気がする。
作者のせめてもの自己主張なのか?
32. 匿名処理班
バグが多すぎてまともにプレイ出来ません
残念ながら☆1つです
33. 匿名処理班
※1
わずか七日で専用言語から組み上げた大天才プログラマー様やぞ。
34. 匿名処理班
ドラクエの勇者達にとってはドラクエの世界の外側はうかがい知ることすら出来ない
なぜなら彼らは非常に少ないビットで開発された、魔物を倒して世界を救うために生きるだけの存在だからだ
現実世界を少しだけ模倣して作られた勇者たちは堀井雄二たちの都合によりSEXなどの行為もしないし知らないまま毎日を魔王や魔神を倒すために生き続ける
そして彼らは我々とちがい死んでも教会で生き返る
それでも勇者たちはドラクエを起動し冒険の書がある間だけはその中で生きているわけである
少なくとも本の中の登場人物とは違う
勇者たちは限定的なドラクエの世界の中では生きていることになる
35. 匿名処理班
最後の説は説得力あるわ
シミュレーションを行う知性が存在すればまあほぼ必ずシミュレーションを行う。
そしてそのシミューレーションの中で、シミュレーションを行う知性を持つ存在が生まれれば、そいつらもシミュレーションを行う。
そうやって無数の「シミューレーションによる世界」が作られる。この世界もその一つであるだろう。
という。これは確かにそうだろうと思える。
36. 匿名処理班
でも爆熱なんでしょう
37. 匿名処理班
江戸時代の極一部の学者はエレキテルを回すと宇宙が崩壊すると思っただろうな。
38. 匿名処理班
ネオ、早く来てくれー
39. 匿名処理班
DNAが設計図ってのはわかるけど、それを展開して生物を作るってのが今の知識じゃ理解できない
40. 匿名処理班
野獣先輩は何の為のシミュレーションだったんだろうか?
41. 匿名処理班
すまない、記事中にある
「情報時代の父」とは何?
42. 匿名処理班
失敗する未来予想がだいたい当たる
10才の予想が30才で現実になったわ
43. 匿名処理班
某ホラー小説がこーゆーのに繋がってて面白かったなー。
44. 匿名処理班
本物の現実とはなんだろうか
45.
46. 匿名処理班
おならが止まらないのも意味のあるシミュレーションなんですかね。随分と細部に渡ってプログラミングされてますね。悪臭とかまで。
47. 匿名処理班
この世がシミュレーションだとしたら全宇宙の素粒子単位の振る舞いを百億年は演算したわけだ
こんなとんでもない規模のシミュレーターを作るより新宇宙開闢する方がよっぽど簡単そう
シミュレーター作った知性はシミュレーターで何がしたいんだろうね
48. 匿名処理班
説明に違和感があるのは、哲学が中心にある人々の思考実験だからかなあ。
49.
50. 匿名処理班
※12
そういうんじゃなくて
ライフゲーム的な眺めるものだと思うけど
51. 匿名処理班
なぜか電脳コイルがみたくなってきた
52. 匿名処理班
最後の説は何度見ても良くわからない。
仮想現実の数が無限に増えうるとしても、それはこの世界の中での理屈でしかない。
この世界の中の理屈がこの世界の創造主にも通用するのかってのは全く別の次元の話だと思うのだけど。
53. 匿名処理班
例えば観測可能な宇宙だけで長さの最小単位で61乗×3次元あるらしいけど
その上にプランク時間単位で物理法則動いてとか重すぎない?
100歩譲って動かせたとしてもログ取ってデータ解析とか生命が作れる次元じゃないと思う
だれかどの程度パターンがあるか概算してくれないかなぁ
54. 匿名処理班
A「175層上のシミュレーション元世界でバグが発生してたんで、ちょっと復帰して作業してた」
B「あら、私も1742層上のシミュレーション元世界で発生してたバグを修正してたのよ」
A「嘘つくな、最上層は1111層だ」
B「あら無知ね、最上層は3000層よ、もっともそこからの呼び出しはさすがにないけど」
C(言えない、最上層が三十六億五千万層上にあるんだという事は)
55. 匿名処理班
この世界がシミュレーションだとすると、この世界の外にはリアルワールドがあるってことになるけど、そのリアルワールドもシミュレーションかもしれない、その可能性は充分にあると言い張れる。さらにその外には……というように、無限に続く循環思考に陥る。
宇宙の外にはさらに別の宇宙があるとか、人類の創造主を作った前の創造主のそのまた前の創造主とか、この世界は神が見ている夢で、夢からさめたその世界もさらに上位の者が見ている夢だ……とか、そういうのと同じ。