妊娠すると気になるのが、「元気に生まれて来てくれるか」ということですよね。
病気も心配ですが、「奇形児」という言葉を聞いただけでもなんだか怖くて、目をそらしたくはなりませんか。
大切なのは、心配しすぎる前にしっかり知識をつけることです。
今回は、奇形児についての簡単な説明やその原因、治療法などをざっと紹介します。
怖い写真も、きつい表現も出てきません。妊娠・出産前に不安になっているあなたのために書きました。
妊娠期間をストレスなく過ごせるように、ぜひ読んでみてください。
もくじ
そもそも奇形児ってどういうこと?
「奇形児」とは、生まれた時から指が1本多かったり、手足がないなど、見た目が正常な状態とは異なっている赤ちゃんのことです。
ですから、生まれつきの病気や障害があっても、見た目が正常であば、「奇形児」とは言わない場合もあります。
奇形になる確率は100人に2人と言われているけれど
日本では、奇形になる確率は100人に2人くらいと言われています。
全体の2%ですから多く見えますが、ひとことで「奇形」と言ってもいろいろな種類があるのです。
例えば、つむじが二つあったり、生まれつき体にあざがあったりといった、軽度で生活に支障のないものから、手や足がないなどの重度なものまで。
あまりに重い奇形がある胎児は、お腹の中で育つことができず流産になったり、生まれてもすぐに亡くなってしまったりします。
しかし、生活に支障があるほどの奇形でも、今は手術で改善したり、義足などを使って日常生活を送る方法はたくさんあります。
では、どんなタイプの奇形があるか見ていきましょう。
奇形の種類を知ろう
奇形には、さまざまな種類があります。
とくに大きく分けて「外見でわかる奇形」と「体内で起こる奇形」があります。
外見でわかる奇形の例
・合指症…となりあった指がくっついてる状態。こちらも手術で離すことができる
・口唇裂…左右の唇が、つながっていない状態で生まれてくる。手術で目立たなくできる
体内で起こる奇形の例
・無脳症…赤ちゃんの脳が育たず、死産や流産になる可能性が高い。葉酸でリスクを減らせる
・その他女児の卵嚢、男児の精巣、内臓などに異常が見られる奇形
外見でわかる奇形は、お腹の中にいるときにエコー検査で発見できるものも多いです。
しかしエコーでは見えなかった部分や、体内で起こる奇形は、生まれてしばらくしてから見つかる場合があります。
出産前にくわしい「出生前診断」をすることも可能ですが、それでもすべての奇形を見つけ出すことはできません。
では、何が原因で奇形になるのでしょうか。また事前に奇形を予防することはできるのでしょうか。
赤ちゃんが奇形になる原因
赤ちゃんが奇形になる原因、気になりますよね。主なものを見ていきましょう。
理由1.遺伝によるもの
両親や家族が奇形の遺伝子を持っていて、遺伝するパターンです。
気をつけてほしいのは、自分や身内に奇形があるからといって、必ず遺伝するとは限らないということ。
反対に身近な人に奇形がなくても、赤ちゃん自身の問題で奇形が起こることもあります。
どの奇形が何パーセント遺伝するかというのは、人それぞれであり、明確な基準はありません。
理由2.高齢出産によるもの
女性の妊娠年齢が高くなるほど、卵子が老化し、先天性の異常が起こる可能性が上がります。
流産や早産のリスクも高まるので、子供がほしいと思うなら、早めに妊活することをおすすめします。
ただし、若いうちに妊娠しても、赤ちゃんになんらかの異常が起こる確率はゼロではありません。
理由3.外からの原因によるもの
赤ちゃんの奇形を防ぐチャンスがあるとしたら、この「外からの原因」をとりのぞくことが一番です。
奇形の原因になる主なものは以下です。
・大量の飲酒
・サリドマイドなどの強い薬
・葉酸の不足
・風疹
風疹は、ワクチンで防ぐことができますが、妊娠してからワクチンを接種することはできません。
自分が風疹の抗体を持っているかわからない人は、妊娠前に病院で検査を受け、必要ならワクチンを接種しておきましょう。
また、二分脊椎や無脳症を引き起こす「神経管閉鎖障害」は、体内の葉酸(ビタミンBの一種)が不足するとリスクが高まります。
厚生労働省も妊娠初期の女性に、葉酸をサプリなどでとることをすすめていますので、意識してとるようにしてください。
(関連:とりすぎ注意!葉酸の効果とサプリの選び方)
理由4.原因不明の奇形
残念なことに、奇形になる原因がわからないケースもたくさんあります。
奇形児が生まれると母親の問題のように言われることがありますが、実際は赤ちゃんの問題だったり、調べてもわからなかったりすることが多いのです。
奇形児が生まれたときに大切なのは、原因探しではなく、これからどう育てていけばいいか、知識を身につけることです。
奇形は治療することができる
「生まれつきの奇形」と聞くと、一生直らない印象を受けますが、実際は違います。
指が5本より多い多指症は手術でとることができますし、口唇裂も手術で左右の唇をつなげれば、ほとんど目立たなくなります。
生まれつき手や足がなくても、義手・義足の技術は進歩していますから、将来仕事をしたり結婚して家庭をもつことももちろんできますよ。
また、奇形の内容によっては成長とともに自然に目立たなくなることもあります。
手術は通常、生後すぐではなくある程度体が成長してからおこないます。医師から奇形の診断を受けたら、どのような治療法があるか、手術するとしたらいつ頃が適切かをしっかり確認してください。
「治療法がある」とわかるだけで、心の負担がかなり軽くなるはずです。
不安をなくすためには知識を持つのが一番
「生まれた子が奇形だったらどうしよう」という不安は、妊娠中に考え出すと抜け出せなくなってしまいます。
出生前診断するという方法もありますが、そこでもし赤ちゃんに異常が認められたらどうするのか…。
いろいろ想像して、心配が止まりませんよね。
まだ奇形かどうかはわからないけど不安なあなたも、奇形の赤ちゃんが生まれるかもしれないと言われたあなたも、大切なのはその症状に対する知識を持つことです。
奇形に対して不安をあおる情報はいくらでもありますが、あなたが赤ちゃんを生むと決めたなら、万が一奇形児が生まれたときにとる行動はひとつ、「治療法や育て方の知識を身につけること」です。
異常や病気は、それが何かわからないうちは恐怖になります。赤ちゃんに奇形の可能性があるなら、
・どんなサポート体制が社会にあるのか
を調べ、医師や行政に確認してみてください。正しい情報を集めれば、不安を和らげることができます。
出生前診断をしようか迷っている人は、診断する前に「異常が見つかったらどうするか」を夫婦で決めておいたほうがいいですよ。
そうすればよくない結果が出てもパニックにならず、今後のことを考えられます。
あまり表には出てきませんが、奇形に生まれても健康に育って仕事や家庭を持っている人はたくさんいます。
赤ちゃんがどんな見た目で生まれてきても、その子が幸せになるための手伝いをしてあげてください。
決して不確かな情報には惑わされず、心配なことはきちんと医師に確認してくださいね。