発達障害児の場合、その子の特性によって通常学級、特別支援学級(以下「支援級」)どちらが適切な就学先なのか判断がつかないことがあると思います。
また、各学校(またはその年度・地域)によって、通常学級在籍で発達障害児が受けることが可能な特別支援教育やその形態は微妙に異なるので、必要な情報は自分から取りにいくしかありません。
うちの場合、長女が去年入学しているので、受入校の特別支援教育の現状については把握していたつもりですが、先日参加した放課後デイサービスの保護者交流会で、新たな情報を知ることができました。
*システムとして特別公表されていない学校独自の教育形態等は、知っている人に聞かないと詳しくわからないものです。
そこで、来年就学する次女のために受入校(公立小学校)で
通常学級に在籍しながら受けることが可能な特別支援教育について(現在わかっている範囲で)整理しました。
★目次★
1.通級
通常学級に在籍しながら個別的な特別支援教育を受けることの出来る制度
小・中学校の通常の学級に在籍する児童生徒が、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障がいの状態等に応じた特別な指導について通級指導教室で受ける教育形態です。
札幌市では、言語がい(ことばの教室)、難聴(きこえの教室)、弱視(ひとみの教室)、発達障がい(まなびの教室)に対応しています。
参考:札幌市特別支援教育ハンドブックより
札幌市では、特別支援学級または通級を希望する場合、まず市の教育センターで教育相談を受け、次の図のような流れで、特別支援学級または通級への入級について、教育委員会が決定するシステムになっています(但し、自治体ごとにシステムが異なる)。
参考: 就学のための相談/札幌市
現在年長の次女は、来年度「ことばの教室」に入級する予定*1で、その場合、多くて週に1回通級できるようです。
「ことばの教室」は、放課後の時間帯に行うので、そのために通常学級の授業をぬけることはありません。
但し、発達障がい児対象の「学びの教室」の場合、入級児童数が多いことから、通常学級の授業の時間帯に行われるため、通常学級の授業をぬけて通級する必要があります*2。
その場合、定期的に授業をぬける理由について、同級生への説明が必要となることもあり、発達障害であることをカミングアウトしていない場合には頭を悩ます問題となるかもしれません。
*1次女も「学びの教室」の対象児に該当しますが、次女は言葉の遅れがあり、2年前から未就学児対象の「ことばの教室」に通級しているため、入学後も継続するという流れとなっています。
*2通級指導教室の授業時間等は地域や各学校によって異なります。
2.学びのサポーター(支援員)
札幌市では「学びのサポーター活用事業」が行われています。
市立の小中学校の通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対して、有償ボランティアである学びのサポーターが、学校生活及び学習活動を行う上で必要となる支援を行うことにより、学校における特別支援教育の充実を目指す事業です。
参考:札幌市HP
「学びのサポーター」(以下「サポーター」といいます。)が、現場でどのように運用されているかを知るため、受入校の授業を見学したことがあります。
2年生の国語の授業。
サポーターは支援が必要な児童につきっきりで、担任からの指示内容を児童に伝えたり、やるべき課題の支援をしていましたが、特別特定の児童の支援員と位置づけられている訳ではないらしく、他の児童に話しかけられれば、その児童の質問等にも答えているようでした。
けれども、1人のサポーターが、支援できる時間数はなんと週に10時間!
(約2年前に確認したことなので、現在は異なるかも知れません)
これを、支援が必要な児童数とサポーターの人数によりますが、例えば支援が必要な児童が5人、サポーターが1人であれば、1人あたり週に2時間の支援しか受けられません。
(受入校には、2人のサポーターがいるようですが、支援の対象となる児童数はわかりせん。)
受入校の特別支援教育コーディネーターの話によれば、市の各学校ごとに決められた予算があり、その予算の範囲内で利用できるサポーターの時間数がそもそも少ないとのことでした。
つまりあまりあてにできない制度です。。。
3.苦手な特定の教科のみ支援級で授業を受ける
受入校では、通常学級の在籍生徒が特定の授業(国語、算数等)の進度に追いつかなくなった場合等、その教科のみ支援級で受けることができます。
これは、システム化されたものではなく、通常学級での学習に問題が起こったときに初めて、学校側と保護者が話し合って決める支援方法です。
そのため、必要に応じて学期途中からも、支援級で授業を受ける生徒もいます。
札幌市特別支援教育ハンドブックによれば「特別支援学級担任による校内支援」にあたると思います(参考:特別支援教育指導資料/札幌市)。
ところで、2年前、長女の入学前に受入校の特別支援学級の担任へ教育相談をしたことがあります。
その際、長女が通常学級へ就学した場合でも、学級内で長女に困ったことがおきれば、
そして、必要であれば長女の担任へ、長女への支援の方法等についてアプロー
これは、前述の「特別支援学級担任による校内支援」にあたると思います。
通常、通常学級から支援級に移籍する場合は、上記「1.通級」で書いた通り教育委員会の決定が必要です。
けれども、このように「特別支援学級担任による校内支援」を受けられる場合もあるので、
通常学級在籍中に、特別な教育的支援や配慮が必要だと思った時に、まずは学校側に相談してどのような校内支援や配慮を受けられるのか相談するのも1つの方法です。
「特別支援教育コーディネーター」を使う
特別支援教育コーディネーター(以下「コーディネーター」)とは、
「特別な教育的支援を必要とする子どもの支援を学校全体として推進することができるよう、「校内学びの支援委員会*」の業務を円滑に推進するための企画・立案や連絡調整を行うことを役割とします。」=つまり「特別な教育的支援に関する校内のリーダー役」
★実際の役割
・校内学びの支援委員会の運営及び連絡・調整
・関係機関との窓口
・児童生徒の理解を図る研修企画
・保護者との面談や同席
・ケース担当会議の開催準備
*校内学びの支援委員会〜札幌市では特別な教育的支援を必要とする子どもに対して、適切かつ効果的・効率的な指導を推進することを目的に設置しています(組織の在り方や所属する委員等は各学校によって異なる)。
2009年4月1日付けで「特別支援教育の推進について」と題する通知が文部科学省から出され、日本での特別支援教育が正式にスタートした時に、
「校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を特別支援教育コーディネーターに指名し、校務分掌に位置づけること」
を各学校に求めました。
そのため、各学校に1人コーディネーターがいると思いますので、
校内支援を受けたいと考えた時に、まずはコーディネーターに相談するのも1つの方法です。
但し、役割として機能しているかどうか、発達障害に詳しいかどうか等は、各学校やコーディネーターによると思いますので、その点については注意が必要かも知れません。
また、コーディネーターは特別支援学級や通常学級の担任である場合もありますし、養護教諭や保健担当教諭が担う場合もあったりと各学校によって様々です。
まとめ
受入校のことについてよくわからないまま、我が子の就学先を通常級か支援級か入学前に決めることは難しいことだと思います(学校見学等で雰囲気や教室の様子等はわかると思います)。
特に個別の「校内支援」については個人情報の問題が関わるので、情報は得にくいです。
また、通常学級に就学後、担任教諭から合理的配慮*を受けることができ、他に特別な教育的支援が必要がない場合も考えられます(但し、合理的配慮をしてもらえるとは限りません)。
*「合理的配慮」の例〜口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による視覚的な情報掲示等(合理的配慮について詳しく知りたい方はこちらのブログ↓をオススメします!)
合理的配慮を具体的にお願いするためのステップ - うちの子流~発達障害と生きる
以上のことから、就学前に「就学後どのような特別な教育的支援を受けられるか」という見通しを立てることも難しいかもしれません。
そのため、子どもが通常学級に適応する可能性があるのであれば通常学級への就学もひとつの方法です(できれば支援者や主治医に相談して決めましょう)。
そして、就学後の子どもの様子や受入校の状況・人的資源等をみて、どのような特別な教育的支援を受けさせることが適切か考えても遅くはないかもしれません。
私は、発達凸凹な娘たちを不得手なことを自然に笑い飛ばせるような環境に置いてあげたいと思う。
— にのの (@ninono0412) 2017年5月20日
不得手なことに真剣に向き合いすぎると、自尊心を削りかねないし、得意なこと、好きなことを向き合う機会を失う。
子どもの就学先を悩んでいる方々へ
約2年前、長女が発達障害であると診断されてから、数ヵ月しかたっていなかった時期。
長女の来年度の入学について、私は不安で頭がいっぱいでした。
一番不安だったのは、長女が支援級、通常学級のどちらが良いかわからなかったことです。
その原因は
- 私が長女の特性ばかりに囚われて、長女の長所や伸びしろを信じることができなかった
- どのような特別支援教育や配慮を受けられるかは、その時の担任、校長等長女に関わる人的資源に左右されることを理解してなかった
- 地域性や個別性が高いことについて、ネットの情報等に振り回されていた
といったところでしょうか。
けれども、最終的には、市の就学相談で通常学級で良いと判断され、半信半疑で通常学級に就学させましたが、入学しないとわからないことにあんなに悩んだのは取り越し苦労だったと思う今日この頃です。
何度も言うようですが、就学先については、地域性、各学校の人的資源等、個別的事情に大きく左右される内容なので、最初からこれが正しいと判断することは難しい。
けれども、通常学級に就学した後困ったことがあったとしても、それで失敗ということはなく、いろいろ対応策はあると思うので、あまり思い詰めて悩んだり、不安にならなくていいよ!
と言うのが今回のエントリで伝えたかったことです。
*とても長い内容となりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます!