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講義No.07678

進化の謎をひもとく ~進化生物学・ゲノム生物学~

遠いようで近い? ヒトとイカの眼

 軟体動物でも、イカやタコ、オウムガイなど頭足類は「海の霊長」とも呼ばれ、発達した脳を持っています。また、脊椎動物と似たカメラアイ、つまりレンズと網膜で立体視ができる眼を持っています。動物の系統樹では離れているヒトとイカの眼は、どうやって進化・発達してきたのでしょうか?

「予測」×「実験」で実証する

 生物がどのような歴史をたどってきたかを探るのが「進化生物学」です。進化を考える上で遺伝子は重要な役割を果たしますが、すべての遺伝情報であるゲノムを解析する技術の進歩で、さまざまな生物のゲノムを比較して遺伝子の変化の過程、ひいては生物の特徴に関わる遺伝子を予測できるようになりました。しかし、ゲノム情報は膨大なため、「バイオインフォマティクス」によりコンピュータで解析していきます。
 生物の特徴に関わる遺伝子が本当に機能しているかを確かめるために生物を実際に解剖して、対象となる部分を抽出し、さまざまな遺伝子が相互にどう影響し合っているのかを実験から分析し、実証していきます。このように、ゲノムから生物の進化過程や多様性、複雑な機能に迫る学問が「ゲノム生物学」です。

遺伝子の機能から新しい進化像が見えた

 比較研究の結果、「PAX6」と呼ばれる、眼の発生で一番重要なマスター制御遺伝子(遺伝子の発現に連鎖反応を起こし、特定の形質の形態形成を制御する遺伝子)が、複数のタンパク質を作る機能を使い分けるのは、脊椎動物とイカ・タコだけであることが判明しました。これは、PAX6の「使い分け機能」が眼や脳の進化に重要である可能性を示唆すると同時に、脊椎動物だけでなく、別系統のイカにも進化のパターンとして共有される複雑なシステムがあるということを示しています。遠い種をゲノムレベルで調べ、比較することで、新しい進化像が見えてきたのです。
 このように脳神経系の発達や進化の特性を見つけることで、眼や特定の器官の再生や発生をさせる場合の遺伝子の働きを特定する研究にも応用していけるでしょう。

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この学問が向いているかも ゲノム生物学、進化生物学

長浜バイオ大学
バイオサイエンス学部 コンピュータバイオサイエンス学科 准教授
小倉 淳 先生

メッセージ

 コンピュータや生命科学の進歩により、これから大きく時代が変わり、今までの仕事がなくなったり、変化したり、新しい仕事が生まれてきます。例えば人工知能の活用が進み、車が自動運転になる、患者の診察をコンピュータが行うということも可能になりますし、再生医学の進展により医療も大きく変わるでしょう。あなたも進路や仕事を考えるとき、自分がやりたいことやそれに関連する仕事が将来どうなっているかをよく考え、変化に機敏に対応してほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から学問に興味があり、知的好奇心も旺盛だったと思います。当時、NHKで連続放送されていた『地球大紀行』も毎回見て、最先端のことを解き明かすということに興味を抱きました。同じ頃、ノーベル生理学・医学賞を利根川進先生が受賞され、その記念講演に応募して聴きに行ったのですが、そこで「研究」という仕事の魅力を知り、非常に影響を受けました。こうした経験から「学問を志す・研究を仕事とする生き方」をめざすようになりました。

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小倉 淳 先生がいらっしゃる
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 長浜バイオ大学は日本でただ一つのバイオ系単科大学で、1学部3学科(バイオサイエンス・アニマルバイオサイエンス・コンピュータバイオサイエンス)の構成です。医学、薬学、農学、理学、工学など、さまざまな学問領域を融合したバイオサイエンスをトータルに学ぶことができます。1年次から専門性の高い実験を行い、卒業研究を除いた3年間で864時間という実験は、群を抜いた時間数です。バイオサイエンス学科内の「臨床検査学プログラム」では、臨床検査技師の国家資格取得をめざして、少人数指導を行います。

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