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民進党に屈したと見られたくない?与党が「テロ等準備罪」法案の採決を急ぐワケ

法案の賛成派と反対派が採決を急ぐ理由を読み解く

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May 20, 2017 by FLAG7 Reporter

3 Lines Summary

  • ・反対派:採決が遅れると都議選最優先の公明党が怒るから
  • ・賛成派:パレルモ条約を批准するため
  • ・三浦瑠麗:与党は民進党に屈したと見られたくない

衆議院法務委員会は5月19日、共謀罪の構成要件をあらためた「テロ等準備罪」を新設する法案(組織犯罪処罰法改正案)を与党と日本維新の会の賛成多数で可決した。与党は週明けの23日に衆議院を通過させ、24日の参議院審議入りを目指しているが、民進党、共産党は反発を強めている。

なぜ与党はこの法案の採決を急ぐのか?また、法案の何が問題なのか?三浦瑠麗が反対派、賛成派双方の専門家に話を聞いた。

「テロ等準備罪」とは…三浦瑠麗が解説

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いろんな犯罪があって、犯罪は刑法によって罪の重さが定められているんですけれど、その犯罪の準備段階、計画段階においても罰することができるということです。

「罪はまだ犯していないのに計画段階で罪に問われるというのはどうなんだ」という一般人の不安に応えて、政権がいろいろと答弁を繰り返していますが、その答弁があまりにも安定しないので集中砲火にさらされているというのが今の状況です。

反対派:採決が遅れると都議選最優先の公明党が怒るから

弁護士 弓仲忠昭さん

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「テロ等準備罪」を新設する法案は、審議すればするほど法案の不備な部分が出てくる。今国会で法案を成立させる「必要はない」が64%という結果が出た朝日新聞の世論調査もあります。

率直にいうと、与党の中で採決の強行が遅れれば遅れるほど都議選に近づいて、都議選最優先の公明党が嫌がる。公明党は元来は都議選後に先送りを望んでいたんですけど、安倍首相の強い意向を受けた自民党の国対委員長が性犯罪の刑法改正を後回しにして「テロ等準備罪」を先にやると。こうなったからには公明党としては、自民党に付いていくしかないというところで、都議選からできるだけ離れた早い時期での採決をというのは公明党の希望でもある。

そんなことで与党は今、採決を急いでいるんだと思います。

3回廃案になった「共謀罪」と基本的には変わらない

基本的には、「話し合ったら罪になる」というのが昔反対されて3回廃案になった「共謀罪」と変わらないと思っています。

政府は組織的犯罪集団といった新しい要件を加えたので「共謀罪」のような危険はないんだと説明していますが、それを法文上きっちり限定する規定もありませんし、テロリズムの定義もない。組織的犯罪集団かどうかの判断は、捜査機関である警察に任されている。疑われた時点で一般人ではなくなるという構造もあります。

政府の考えている行動に反対したりとか、企業の原発推進に反対したりとか、いろいろ計画をする、相談をする、それが全部、組織的犯罪集団がやったと、警察が判断すれば介入できるという可能性があるので、大変心配しています。

テロ対策のはずなのにテロ対策になっていない

「テロ等準備罪」はそもそも、東京オリンピック・パラリンピックのために必要だとかテロが心配という流れがあるんですが、組織犯罪について過去十数年の犯罪情勢は日本は大きく改善されており、日本はやっぱり依然として世界でも治安のいい国だと思っています。その中で「テロがあるから」と感情的な恐怖をあおって、一般市民の動きを封じるための法案を作るというのは大変問題だと思います。

テロ対策に必要だというのも、私は嘘だと思っています。法案自体はテロ対策の目的になっていません。元々テロ対策っていう文言が当初の政府案にはなかったので、それでおかしいとの指摘を受けて「テロリズム集団」をつけたのだけれど、テロ自体の定義はありません。

今の法案がテロ対策だと安倍首相らは言うけれど、実質的にはきっちりしたテロ対策にはなっていない。現行法ではテロは防げないというのも、私たちは嘘だと思っています。

賛成派:パレルモ条約を批准するため

公共政策調査会 研究センター長 板橋功さん

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これは国際組織犯罪防止条約(通称・パレルモ条約)と呼ばれていますが、これを批准するための国内担保法という目的があります。この条約は2000年の国連総会で採択されて、187カ国が批准しています。

国連加盟国で批准していないのは南スーダンとソマリア、コンゴ、イランなど、日本を含めて11カ国に過ぎない。こういった国々と一緒に並んでいる。日本はG7の一角を占め、GNP第3位の経済大国ですよね。そういった国が条約に批准できていないこと自体がいいのか、という意見があるんです。

政治的駆け引きの道具にされている

「共謀罪」は3回廃案になっていて、1回目は郵政選挙解散のとき、2回目は小泉政権のときです。このときは自民党案に対して民主党が対案を出して、その対案を自民党は丸のみしたんですよ。そうしたら採決のときに当時の民主党が採決を拒否して、廃案になったんです、対案も含めて。

3回目は第1次安倍内閣のときに出されていますが、結局はねじれによる解散によって廃案になっているんです。どちらかというと、その時の政争の道具にされてきたというか、政治的駆け引きの道具にされてきているんですよ。

三浦瑠麗のまとめ「与党は民進党に屈したと見られたくない」

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「テロ等準備罪」は、要はたなざらしになってきた法案なんです。

今回の名称が付いた法案は新しい法案に見えるんですけれども、「共謀罪」というかたちで何度か成立を阻まれてきたわけですね。

どういうことかというと、これは面倒くさい法案なんです。つまり、今の刑法を全く見直してしまうのと等しいわけじゃないですか。そうすると「テロ等準備罪」をつくるというのは、罪の重さの均衡はどうなるのかといった様々な些末な論点が実は重要になってくる。「キノコ狩りに行ったらどうなるんだろうか」という話になったり、「花見に双眼鏡を持っていったらどうなるんだろうか」といった話になったりするんです。だから、もう終わらせちゃいたい。パレルモ条約に加盟したいっていうのが、一番の彼らが持っているアジェンダ(政策課題)ですね。

もしかしたら安倍政権は傷を負うかもしれない。政治的にダメージを受けるかもしれないことをなぜ今やるのかといえば、国際的な見え方を大事にしている政権だというのと、あとは、まぁいけるだろうと思っている、その読みが甘かった部分があるんじゃないかなと、私は個人的に思っていて。

たとえば、法案を出してしまいますよね。これが廃案になると、政治的に廃案になったダメージがあるんですよ。民進党に勝ちを許したようなかたちになって。かつての民進党はこういった法案に賛成していた部分もあったのに、今は法案の不備を叩いている。その民進党に屈したと見られたくないという意地っ張りだと私は思いました。

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5月18日放送「ホウドウキョク×FLAG7」アーカイブはこちら
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0009/chapters/28372

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