原発事業の失敗で膨らみ続ける巨額の借金返済のために、虎の子の半導体メモリ事業を売却し、「解体」の道を突き進む東芝。だが、ジャーナリスト・大西康之氏は「この売却がスムーズにいくとはとても思えない」と懸念する。
電機業界を30年近くにわたって取材し、新刊『東芝解体 電機メーカーが消える日』を上梓した同氏の分析とは──。
東芝再生の1丁目1番地とされる半導体メモリ事業の売却に暗雲が垂れ込めている。
5月19日の二次入札で売却先が確定するはずだったが、「本命」とされる官製ファンド、産業革新機構と米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)連合の準備が整わず、結論は6月に持ち越された。
東芝の存続をかけたディールは、あまりに「変数」が多く、解が出ないまま「時間切れ」になる確率が高まってきた。
東芝はこの事業売却で2兆円を調達し、2018年3月期末までに債務超過を解消することを目指している。
失敗すれば二期連続の債務超過で、銀行に「破綻懸念先」とみなされ、融資を受けられなくなる。つまり「倒産」だ。
東芝の銀行借入は約1兆2000億円。半分をメインと準メインの4行、残りの半分を地銀、信金などから借りている。
東芝は2017年3月末時点で5400億円の債務超過に陥っている。普通なら既に「破綻懸念先」に区分され、銀行が融資を引き上げてもおかしくない。
銀行団が融資を続けているのは、「17年度中に半導体メモリ事業を2兆円で売り、債務超過を解消する」という東芝の計画を信じているからだ。
東芝は、融資をつなぎとめるために、何が何でもディールを成功させなくてはならない。