どういうわけか、日本人は「家を買わなければいけない」という強迫観念にとらわれているように見受けられる。そこに付け込んでいるのが住宅産業だ。
マンションデベロッパーやハウスメーカーといった業種だが、そもそも住む場所は自分のものでなければいけないのだろうか。自分のものでなくても、住む場所が確保されていれば、所有しているのも借りているのも状況としては同じである。
日本には借地借家法というのがあって、住宅の賃貸借の場合は借り手にかなり有利である。例えば、家賃を値上げしようとすると原則的に双方が合意しなければいけない。簡単に言えば、借りているマンションの家賃の値上げを大家さんから要求されたときに、「イヤだよ」と言えば元の家賃のまま住み続けることができる。
ただ、裁判の確定判決で値上げが認められれば話は別だが、大家さん側にとって多額の費用をかけて裁判を起こすメリットは少ない。
よく、「年を取ったら住宅が借りられなくなる」といった不安を訴える人がいる。それは何十年も前の話だ。
確かに、賃貸アパートやマンションを経営している側からすると、貸した住戸で孤独死でもされると事故物件になってしまう。だから、数年後に亡くなりそうな高齢者には住戸を貸したがらない傾向がある。
もっとも、これからの時代は孤独死なんて当たり前になるだろう。すでに孤独死を対象にする保険商品が普及し始めている。きれいに後片付けをしておはらいまで済ませた部屋なら、借り手も見つけやすいはずだ。
だいたい日本では住宅が余っている。地方では100万円も出せば普通に家が買える。大都市の郊外でも、数百万円で買える住宅がかなりある。さらに、ちょっと不便な場所の公営賃貸住宅には、すぐに入居できる空室がたくさんある。