Photo of Alisha Bromfield via Facebook; Photo of Brian Cooper via Door Co Sheriff Dept

全米ホームセンターチェーン〈ホームデポ(Home Depot)〉で働いていたブライアン・クーパー(Brian Cooper)は、部下のアリーシャ・ブロムフィールド(Alisha Bromfield)に執拗なセクシャルハラスメントを繰り返した後、殺害し、遺体に性暴力を加えた。2017年3月末、同社は介入を怠ったとして、合衆国控訴裁判所に提訴された。

2014年、母親が企業相手に起こした訴訟によると、アリーシャ・ブロムフィールドは、ホームデポの生花コーナーで働いていた5年間に、上司のブライアン・クーパーから、繰り返しセクハラ被害を受けていた。彼女が受けた嫌がらせの例として、訴状には「物を投げながらの暴言、勤務時間内外の拘束や監視」が列記された。

クーパーは以前にも、高校を卒業したばかりのジェシカという部下に、セクハラ行為を繰り返していたという。クーパーはジェシカを「自分の彼女」だと主張し、何度も「自身の性器について話したり、彼女にこすりつけたりした」が、ホームデポ側は女性の訴えを受け入れず、彼女は退職した。その後、クーパーは、生花店グランド・フラワー(Grand Flower)から派遣されたブロムフィールドに固執し始めた。

訴状によると、「クーパーの行為は徐々にエスカレートし、ブロムフィールドの勤務外の時間にも口出しするようになった。彼女が男性と昼休憩に出かけようとしたら、休憩を禁止したこともあった。あるとき彼女が休日を申請したら、彼はブロムフィールドを『売春婦』と呼んだ」という。ブロムフィールドは、経営陣にセクハラについて相談したが、彼らはクーパーを早退させただけだった。また、ホームデポはクーパーにアンガーマネジメントを受診するよう要求したが、彼が治療を受けたか否かは確認しなかったという。彼は、その後もブロムフィールドの上司の座にとどまり続けた。

2012年8月、事件は起こった。クーパーは、妹の結婚式に同席するようブロムフィールドに強制し、断ればクビにする、と告げた。そして、旅行中に関係を迫り、拒絶されたクーパーは、当時妊娠していたブロムフィールドを殺害し、遺体に性暴力を加えた。彼女は21歳だった。

2014年、殺人と性暴力の罪で、クーパーには、仮釈放なし、終身刑2回、との判決が下された。

職場のセクハラ対策だけでなく、行為がエスカレートするのを防ぐ責任も、雇用主にはあるはずだ。アリーシャ・ブロムフィールドの母、シェリー・アニシッチ(Sherry Anicich)は、事件前にクーパーをセクハラ行為で処分しなかったとして、ホームデポの責任を追及していたが、2016年、シカゴ地方裁判所は訴えを取り下げた(ブロムフィールドはグランド・フラワーの従業員だったが、訴状によると、職場環境や社員の安全管理を請け負っていたのはホームデポだった)。

シカゴ地方裁判所は、「ホームデポは、ブロムフィールドの死に対する責任を問われない」と判断した。ホームデポ側の「『不適切な言葉遣いや性的違法行為』により、従業員を解雇または降格する義務はない」という主張に、判事は同意した。

クーパーがブロムフィールドを殺害したとき、被告側、すなわちホームデポの敷地内にふたりはおらず、凶器も企業財産ではなかった。しかし、クーパーは、ブロムフィールドに対して、被告側に任じられた〈上司〉としての職権を濫用していた。

2017年3月末、控訴裁判所の3人の判事は、当然ながらこの決定を激しく非難し、判決を覆した。シカゴ地方裁判所は、クーパーが脅迫行為に及んだとの訴えを却下し、「彼が明らかな脅迫行為や、身体的な暴行に及んだことはいち度もない」というホームデポの答弁を認めた、と控訴裁判所の判事らは論じた。

「クーパーが『園芸用品売り場や駐車場で物を投げたり、卑猥な言葉を叫んだりする』のを目撃した人は誰でも、彼を危険人物とみなしただろう。彼は自制心を失い、ブロムフィールドを怯えさせようとしていた」と判事のひとりは分析する。

犯行現場が同企業の敷地外だったため責任は問われない、とホームデポは主張したが、判事は次のように反論した。「クーパーがブロムフィールドを殺害したのは、確かに被告側の敷地内ではなく、凶器も企業財産ではなかった。しかしクーパーはブロムフィールドに対し、被告側に任じられた上司としての地位を濫用した。彼は、自分の妹の結婚式に出席しなければ、解雇するか労働時間を短縮する、と脅迫した。これは最高裁判所が規定する職権濫用であり、被告側がクーパーの任を解かなかったからこそ、彼はこのような行為に至った」

控訴裁判所は、シカゴ地方裁判所に、陪審員裁判への差し戻しを命じた。「修正された訴状によれば、クーパーの行為は明らかにエスカレートしていた。不適切な言動や接触に始まり、職場での報復行為、嫌がらせや監視、最終的には、公の場での暴言や暴力による脅迫に発展した」と判事たちは述べた。「これだけの証拠が揃っていれば、クーパーの行為が暴行にエスカレートする可能性に雇用主は気づいていたはずだ。陪審員もそれは容易に想像できるだろう」

全米女性法律センター(National Women’s Law Center)は、この判決を評価した。「合衆国控訴裁判所の判決は、雇用主がセクシャルハラスメント関連法に従ってセクハラに対処し、対策を講じる義務があると明らかにしました」と職場の男女平等推進担当、マヤ・ラグー(Maya Raghu)。「セクハラ関連の対策やプログラムが不十分、または、重役がこういった行為を強く咎めないために、企業が問題を放置している場合もあります。このような企業では、従業員が嫌がらせを訴えにくく、加害者が説明責任を逃れているのが現状です」