長谷川豊アナウンサーに聞く『偏差値全国一位』の天才を育てた両親の教育法とは?

フリーアナウンサーとして週8本のレギュラーをこなし、メディアリテラシーに関する講演「伝わる技術」のティーチングを全国各地で行っている長谷川豊さん。「19日間で2400万PV・330万人来訪」という日本記録を樹立した個人ブログをはじめ、様々なメディアでの発言で注目を集める長谷川さんに、作文力を伸ばすためのトレーニング方法をお聞きした。

アナウンスコンテストや弁論大会に出場して多数の賞を獲得するなど、学生時代から文章を書くことは得意だったそうですが、特別な努力をしたのですか?

特別な勉強をしていたわけではなく、育った環境の影響が大きいと思います。私の両親が本当に「教えること」に長けている人たちだったのです。僕の姉は偏差値全国一位を獲得したことがありますので、両親は教育の天才だったのでしょうね。

今でも僕の子どもたちを両親のところに数週間預けることがあるのですが、戻ってくると彼らの学力が格段に上がっているのです。

03.jpgご両親はどんな教え方をしていらっしゃったのでしょうか?

僕の子どもたちと両親が一緒に過ごす様子を見て分かったのですが、両親は子どもたちにすごく上手に勉強をさせているのです。

例えば一緒に道を歩いていて看板を見つけると、「あの看板に何て書いてある?読める?」とすかさず聞くんです。「太陽は何で熱いのかわかる?」「時計は今何時を指しているのかな?」など、常に質問を子どもたちに投げかけているので、24時間勉強しているようなものですね。

そして回答できたときには、すごく褒める。たぶん1日200回くらい褒めているのではないでしょうか。だから子どもたちは楽しくてしょうがないんです。「知ること」=「楽しい」ということを、子どもたちに上手く体感させてくれるわけです。

知ることの楽しさを教える母、無尽蔵の知識を注ぎ込む父

Fotolia_104838263_S.jpg長谷川さんの目から見て、両親はどんな子育て法を実践していましたか?

父は出世よりも家族優先というタイプで、毎日17時には仕事を終えていました。当時では非常に珍しかったと思いますよ。僕は自分の父が“イクメンのパイオニア”だと思っていますから(笑)。

そして自宅ではずっと子どもと一緒にいてくれて、色々なことを話してくれる。父は英語もドイツ語もぺラぺラで、特許取得のような複雑なやり取りも英語でできてしまうほどでした。「父が知らないことはない」と言っても過言ではないくらい勉強家で博識な人でしたが、僕たちに「勉強しろ」とはいっさい言わなかったです。

母はただ子どもを褒めるだけでなく、ダメなことをきちんと教えてくれる人です。おだてているわけではないことが子どもにも分かるので、より褒められたときにうれしいんですよね。

「知ることが楽しい」ということを母が教えて、そこに父が無尽蔵の知識を注ぎ込んでくれる。最強のタッグだったと思います。

ご両親の子育てを見た上で、現代の親たちにアドバイスはありますか?

いわゆる「こうするといいよ」という“ベタな方法”ってあるじゃないですか。例えば「褒めてあげる」「本をたくさん読んであげる」「ダメなことはダメとちゃんと教える」「怒るんじゃなくて叱る」といったことです。そういう一般的なメソッドを僕の両親は大切にして、一つひとつ丁寧にこなしていたようです。

無理に人と違う方法を探さなくても良いんです。正解は世の中にあふれていますから、それをいかにハイランクに積み上げていくかが大切だと思います。

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作文もスポーツと同じで繰り返しトレーニングが必要

作文力を高めるためのトレーニング方法を教えてください。

「日本語が話せるから作文を書ける」と思わないでください。作文もスポーツと同じで、できるようになるまで繰り返しトレーニングすることが必要です。繰り返すことで自然と体が覚え、気が付くと書けるようになっているのです。

まずは子どもの真横について、子どもが自分自身で書けるところまで一緒に歩んであげてください。子どもが作文が苦手なら、作文が上手な子の作品を、毎日声に出して読みながらなぞって書かせてみましょう。最初は真似で良いんです。真似をしていると、いつか自分の足で立てるようになって、羽ばたく瞬間が来ますから。

あとは、スタジオジブリの映画を観ることもおすすめです。スタジオジブリの映画の最大の特徴は「言葉が美しいこと」です。主人公から悪者にいたるまで、抜群に美しい日本語を使っています。やわらかい表現の中にきちんと敬語が使われていて、かつ、へりくだりすぎていない。日本語のトレーニングの一環として、大いに活用できると思います。

長谷川さん自身も、作文力を鍛えるためにトレーニングをしたことはありますか?

競馬の実況中継のために、トレーニングをしたことがあります。先輩の実況内容を一言一句もらさず、書き起こしたんです。競馬実況はすごい速さで話すので、大変な作業でしたよ。そして競馬の映像を見ながら、ずっと同じことを言い続けるのです。これを毎週土日に4年半続けてデビューしました。そのときに、きちんとトレーニングをしないと「伝わる文章」は書けないということを実感しました。

言葉の意味を慎重に考えることも大切です。それができないと、わかっていそうでわかっていない、言葉を適当につむぐだけの大人になってしまいます。例えば一言で「日本」と言っても、それが指しているのは日本国なのか、日本国民なのか、日本国憲法なのか、日本経済なのか。日本という言葉をきちんと定義できていないのに議論をしても、本質的ではない、全くかみ合わない議論が続くだけです。

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作文力があれば、日本で生きるうえですべてのことができる

作文力は生きていく上で重要だと思いますか?

「作文力」=「日本語の文章がきちんと書ける」ということは、国語だけでなく、他の教科にも生きてくる力だと思います。日本語をしっかり理解していないと英語は絶対にできないし、算数の問題を理解することもできません。

作文力に長けているということは、文章の中にある様々な単語の中から重要な単語とそうでない単語の取捨選択ができるということ。3行の文章でも重要な単語を2~3つくらい理解すれば、瞬時に文章の内容が理解できるのです。文章の理解速度が5~6倍になるでしょう。

書く、読む、説得する、理解する、プレゼンする、説明不足の部分を補う…。

作文力があれば、日本で生きるうえですべてのことができると言っても良いでしょう。作文力はそのくらい大切な力だと思います。

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