「現場はかつてない厳しい状況」値上げするヤマト運輸が新聞全面広告を打った理由

値上げは27年ぶりだ。

「宅急便はいま、経済と社会の大きな環境変化に直面しています」。そう呼びかけるメッセージには、ヤマト運輸の切切たる願いが込められていた。

BuzzFeed

値上げの理由としてあげられたのは、こんな理由だ。

「配送業務の現場はかつてない厳しい状況にあり、日本全体の人手不足によって労働力の確保も困難です」

「事業税の増税や社会保険適用範囲の拡大など、社会制度にも大きな変更がありました」

こうした状況の変化をふまえながら、「宅急便のネットワークを維持、発展させていくため」「担い手である社員の健全な労働環境を守るため」に、27年ぶりの値上げに踏み切ったという。

ヤマト運輸広報によると、全面広告は全国紙や地方紙を含めた54紙、業界紙6紙の計60紙に掲載したという。部数にすると、4000万部だ。

時事通信

これほど大きな広告を打ったのは、「個人、法人のお客様にも影響があることなので、正しくご案内をすべき」という判断があったから。

あわせて、こんなメッセージも込められているそうだ。

「取り扱い個数が増えるなかで、ドライバーの業務やいま社員が置かれている働く環境をより良くしていくために、値上げに踏み切ったということをお伝えするためでもあります」

労働問題に注目が集まるなか、宅配ドライバーや配送業務に携わる人たちの過重労働も「やりがい搾取」であると問題視されていた。

背景にはネット通販の拡大がある。国土交通省によると、2015年度の宅配便の取り扱い個数は37億4493万個だ。

ここ20年間で約3倍に増え、シェアではAmazonを扱うヤマト運輸(46.7%)がトップ。次いで佐川急便(32.3%)、ゆうパック(13.8%)と、上位3業者が9割を占めている。

さらに、即時配達や再配達など、サービスの行き過ぎも指摘されてきた。

こうした状況を受けたヤマト運輸は、2017年3月、「お届け指定時間帯」の「12〜14時」を廃止し、「20〜21時」を「19〜21時」に変更すると発表した。6月19日から適用される。

全面広告でも「人員増強」「負担軽減のためのIT化」「自動化への投資」「宅配ロッカーの普及拡大」などに取り組む、としている。

基本運賃は、10月1日から値上げされる。

60〜80サイズで140円、100〜120サイズで160円、140〜160サイズで180円値上げする。

同時に、ネットでの申し込みや直営店での受け取りなど、業務効率化に協力することで割引される制度も始まるという。

詳細はヤマト運輸のサイトに掲載されている。

BuzzFeed Newsでは、宅配ドライバーの現場について【過重労働にのめり込む宅配ドライバー 若者たちの「やりがい」が搾取されている】にまとめています。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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