2017年5月時点で予想される北朝鮮の核弾頭の威力
北朝鮮は2017年5月21日までに地下核実験の可能性のある人工地震を5回発生させている。韓国は過去5回の人工地震で最大規模の第5回目の人工地震を10キロトンの核実験と推定している。しかし、震源から離れているため人工地震の規模も正確には算出できない。さらに、第二回人工地震と第五回人工地震では放射性キセノンが検出されておらず、人工地震が核爆発によるものか通常火薬による偽装かも識別できない。しかも、爆発物の設置の仕方によって爆発エネルギーの地震エネルギーへの変換効率が大幅に異なる事から爆発物の正確な規模が算出困難である。
私は過去5回中で第三回目の人工地震が高濃縮ウランによる広島原爆と構造が簡単なガン・バレル型起爆装置による15キロトン程度の規模の核爆発の可能性が高いと考えている。また、過去最大規模の人工地震の第5回目は放射性キセノンが検出されていない。放射性キセノンが検出された第一回目の人工地震と比べ人工地震の第5回目は地震の規模が十倍程度で、もし核爆発が原因なら核反応を起こした核物質も十倍程度で発生したキセノンも十倍程度でガス圧も高く、地震の揺れが大きいため岩盤に亀裂が起き易く、外部に放射性キセノンが大量に漏れ易いはずなのに検出されていないのは不自然なので、私は第五回目の人工地震は地震波への変換効率を高めた通常火薬による爆発で地下核実験を偽装で引き起こされた可能性が高いと推察している。しかし、もし仮に第五回目の人工地震が核爆発によるものなら爆発規模は22キロトン程度と推察している。尚、第四回目の人工地震が核爆発によるものなら爆発規模は約10キロトンと推定している。
もし仮に、北朝鮮が在日米軍基地を核攻撃する場合、核弾頭として使用されるのは次の三通りの可能性が有力である。
(1) 弾頭重量が約1トンまでで爆発規模が10キロトン程度のプルトニウム原爆の核弾頭
(2) 弾頭重量が1トンを大幅に超えるガン・バレル起爆によるウラン原爆の核弾頭
(3) 弾頭重量が1トンを大幅に超える爆発規模が22キロトン程度の爆縮起爆によるプルトニウム原爆の核弾頭
上記の (2) は構造が簡単であり、また、北朝鮮にウラン鉱山が存在し、電力の民間への供給を制限してウラン235濃縮に必要な膨大な電力を確保していると推定され、北朝鮮が臨界量以上の濃縮ウランを保有している事がほぼ確実なため、北朝鮮が現時点で、ほぼ確実に製造可能であるが、搭載できる移動発射型ミサイルがあるか疑問である。北朝鮮は2017年5月14日に発射した「火星12」型ミサイルが「大型重量核弾頭を搭載できる」と解説しているが、公開されたミサイルの先端部分は細長くガン・バレル起爆型弾頭は鉛直にしか設置できず発射時の加速で暴発する危険があるためガン・バレル起爆型弾頭搭載には不向きである。しかし、工夫次第で暴発の危険性を大幅に減少させる事も可能であり、また、移動発射型の「火星12」型ミサイル以外に固定発射型のテポドン2の第一段目には搭載可能との専門家の指摘があるので、ガン・バレル起爆によるウラン原爆の核弾頭の可能性も相当程度あると考えられる。(この核弾頭はプルトニウムを含まないため、もし核爆発せず核弾頭として不発であった場合にプルトニウム汚染を引き起こさないので、もし核爆発せず核弾頭として不発であった場合に日本からプルトニウム汚染爆弾を使用したと猛批判される事が避けれるメリットが北朝鮮にある。)
北朝鮮が2017年5月14日に発射したミサイルについて「大型重量核弾頭を搭載できる」と解説している事は裏を返せば、スカッドERやノドンに搭載可能な1トン以下の核弾頭を保有していない事を暗に認めているようなものであり上記の (1) の可能性は低いとも考えられるが、北朝鮮の報道では重量1トン未満と思われる爆縮型プルトニウム原爆の模型と思われる画像があるので可能性を完全には排除できない。
アメリカは一時期、プルトニウム爆縮型原爆の技術を機密解除・公開した事があり、黒鉛炉からプルトニウム239含有比率の高い兵器級プルトニウムを臨界量以上得たと考えられる北朝鮮のような国にとっては長崎原爆「ファットマン」程度のプルトニウム爆縮型原爆は製造可能と考えられ、北朝鮮が重量3トン以上で爆発規模22キロトン程度のプルトニウム爆縮型原爆の製造技術は有する可能性が高い。
結局、可能性としては、ミサイルの運搬能力も考慮して、2017年前半の段階では、重量3トン以上の弾頭でも北朝鮮のミサイルの射程内にあると考えられる岩国基地や佐世保基地への核ミサイル攻撃の場合は、上記の (2) の爆発規模が約15キロトンの広島原爆「リトルボーイ」と同等構造のウラン原爆もしくは (3) の長崎原爆「ファットマン」と同程度の爆発規模が22キロトン程度のプルトニウム原爆の核弾頭の可能性が最も高いと思われるが、三沢基地・横田基地・横須賀基地・厚木基地への攻撃では上記の (1) の爆発規模が10キロトン程度のプルトニウム原爆の核弾頭の可能性が高いように私は推測している。尚、今月14日に発射された「火星12」型ミサイルの実質的な射程は、実際の核弾頭と同程度の重量の模擬弾頭が搭載されていたか否かや発射実験で2段式運用で実戦では1段式運用しかできない可能性を考えると、沖縄の嘉手納基地は現時点では「火星12」型ミサイルの実質的な射程に入っていない可能性がある ( 別記事・ [ 北朝鮮「火星12」型ミサイル実験でペイロードが100kg未満ならハッタリ ] 参照 ) が、もし仮に射程内なら10キロトン程度のプルトニウム原爆の核弾頭の可能性が高いように私は推測している。
2017年5月22日
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