自治体の図書館や資料館が所蔵する古い絵や写真などの画像を、インターネットで無料ダウンロードできる試みが広がり始めた。論文などのほか、申請不要で商用への利用も可能。関係者は「お土産品にプリントするなどアイデア次第で様々な使い方ができる。地元の魅力発信に役立てて」と期待する。
江戸末期の大阪の名所地図や明治の初めごろの風景画、大正時代に大阪市内で開かれた博覧会の白黒写真――。大阪市立中央図書館(大阪市西区)の3階特設コーナーには、昔の景色や庶民生活を伝える原画が展示されている。
名刺やトートバッグにこうした画像をプリントした活用例を紹介。司書の外丸須美乃さんは「画像をダウンロードすれば大阪のオリジナルグッズを誰でも手軽に作れる。お土産など商品として売り出してもらえば経済活性化にもつながる」と力を込める。
画像は保護期間50年の著作権が切れた江戸中期から昭和初期までの写真や地図、百人一首の関連本、錦絵など約7千点。これまでは論文や出版物などに二次利用する際に申請手続きが必要で、商用は禁止されていた。
同図書館が約20年前から外部の専門業者に依頼して原画をデジタル化して蓄積、2001年からアーカイブとしてネット上で公開した。利用希望者は徐々に増え、年に100件以上申し込みが来るように。協議を重ねた上で今年3月上旬、利便性を高めるため申請不要に踏み切った。行政が情報を広く提供する「オープンデータ」の一環という。
すでに個人のブログや出版物などに使われ始めている。今春発行のフリーペーパー「上町台地今昔タイムズ」には4枚の画像が使われた。編集した大阪ガスエネルギー・文化研究所の弘本由香里さん(55)は「使い勝手が良くなり、活用の幅が広がりそう」と話す。卒業論文で大阪・御堂筋の建築について調べている同志社大文学部4年、岩崎雄一さん(21)は「簡単に論文に利用できるのはとてもありがたい」と話す。
4月に全面開館した資料館「京都府立京都学・歴彩館」(京都市左京区)も、前身の府立総合資料館が14年からオープンデータとして史料画像を公開。古文書のほか戦前の京都市内の住宅地図や金閣寺の写真などがある。資料課の岡本隆明さんは「研究者だけでなく一般の人も楽しめる絵や写真がたくさんある。今と昔の京都を比べるなど活用してほしい」と話す。
同志社大の原田隆史教授(図書館システム)は「利用者のニーズが増えたことで、図書館のオープンデータは進みつつある」と話す。一方で「図書館は本を貸し出す場所とのイメージが根強く、一部の試験的な取り組みにとどまっている。職員が意識を変え、新しいサービスの仕組みづくりに力を入れてほしい」と期待する。